第21話
今日は制服を着て普通に授業を受けに行く。
朝食はフォルナちゃんと食べて、談話室でお茶を楽しむ。
昨日の授業内容を軽く聞いたけど、初日と同じ感じだったらしい。
午前中は基礎教育……午後は修練場で魔法の勉強。
昨日は上級生も修練場を使っていたので、杖を使った魔法が凄かったらしい。
そういえば杖の材料を取りに森に行くんだった……完全に忘れていた。
まだ先だからいいけど、忘れないようにしよう。
教室に向かうと、廊下に第三王子と第二王子が令嬢たちに囲まれていた。
少し困ったような表情をしていたけど、まぁどうでもいい。
「お、おいっ、シィナ嬢っ、我の……」
「おはようございますテオドルド殿下ドノヴァン殿下先に教室に入っていますね」
「おはようございます、テオドルド殿下、ドノヴァン殿下」
「おはよう、シィナ嬢……フォルナ嬢…………行ってしまった」
「くっ……」
教室に入っていつもの席に座る。
「シィナちゃんはブレないね……」
「ん?なんの事?」
「ううん、なんでもない」
なんだろう?よく分からないけど……まぁいいや。
今日は何をするのかな?また居眠りするような復習は嫌だけど……
しばらくするとエレアーレ先生とジッド先生が教室に入ってきて、ジッド先生がこちらにやってきた。
魔法の勉強でもするのかな?
「シィナさん、私と別の教室に行きましょうか、少しやって欲しいことがあるのです」
「はぁ……いいですけど……」
私だけジッド先生と教室を出ていく。
「皆様、おはようございます、今日も学んでいきますよ。では…………」
エレアーレ先生の声が遠くになっていく。
どこに行くんだろう?階段を降りていくけど……
私とジッド先生は一階の教室へ入っていく……ここは入学試験を受けた時の教室だね。
誰か中に居た……ん?……あれ?この人……
「おはようございます、シィナ・リンドブルグさん」
「おはようございます……えっと……学院長先生」
「自己紹介をしましょうか、私はオリビア・ジットルマンと申します。宜しくお願いしますね」
「はい、オリビア学院長、シィナ・リンドブルグと申します……私の名前はご存知でしたね、すいません」
「ふふっ、いいのですよ。……今日はシィナさんの現況を聞いたので、少し確認させてください」
「はぁ」
「ここに2年生から6年生の試験を用意しました、疑ってはいませんが確認の為にも学力を見せて貰えますか?」
「はい、構いません」
私はオリビア学院長とジッド先生が見守る中、次々と問題を解いていく。
こんなの楽勝っ、6年生の問題は少し怪しいところがあったけど、スイスイ解いていった。
「できましたっ……6年生の問題はあまり自信がありませんが……」
「……いえ……ほぼ満点に近いですね」
「はい、やはりシィナさんは天才かと……」
この人か……私を天才とか呼んでいるのは……止めて欲しい。
「では魔法を……光魔法は使えますか?」
「はい、できます」
魔力制御は普通に……灯りを点けるイメージで……
教室は私の光魔法で照らされていく。
「……はい、もう十分です」
「杖もなしでよくここまで光らせられますねっ」
「無属性魔法に興味があると聞きましたが、まさか使えるのですか?」
「いえ、無属性魔法は勉強中です、昨日司書のゲルド先生から研究資料を少し見せて貰いました」
「なりほど…………では、シィナさんには選択する権利を与えましょう」
「……選択ですか?」
オリビア学院長は真剣な表情になって私を見つめている。
少し背筋を伸ばす……
「一つは、飛び級して好きな学年で勉強することも可能…………ですがこれはおすすめしません」
「……というと?」
「学院では基礎勉強だけでなく、貴族の礼儀作法や夜会の踊りの練習なども学びます。……それから将来の旦那様を探すことも可能ですが、そういった貴族の勉強は年齢を重ね、体が大きくならないと出来ないことも多いでしょう。姉のシュアレさんと同級生にはなれても、淑女としては振る舞えないでしょう?」
「はい、そうですね。私はまだ12歳ですので……」
シュアレ姉様と同級生にはなりたくはない……たぶん色々と破綻する。
「もう一つは、学年は普通に1年生として……基礎勉強や魔法の授業を免除することも可能です。例えば杖作りや礼儀作法、夜会の踊りの練習の時は授業に参加する……それ以外は好きな事をしても構いません、無属性魔法に興味があるなら一人で研究をしても構いません」
おっ、それは魅力的……というかそれがいい。
「更にもう一つの提案です。……賢者様の弟子になる……ことも可能です」
「賢者様って、この間の講堂でお話を聞いた賢者様ですか?」
「ええ、賢者エトワルド様に弟子入りする事も出来ます……ですがまだエトワルド様本人に確認はしていませんので、正確には推薦することは可能ということですがね……」
「賢者様には特に魅力を感じませんが……」
「ふふっ正直ね。ただ、彼の魔法はリュデル王国一の実力があります。無属性魔法も使える賢者様ですよ……」
うっ……それは魅力的に聞こえる。
どうしよう……
「……まぁ、賢者様の弟子になる事はまだ考えておいても構いません。先程も言いましたが、シィナさんは貴族の勉強をしないといけませんから、学院を卒業してから弟子入りをしても遅くはありませんよ」
「……そうですね…………となると自然と二つ目の選択肢が適切でしょうか?」
「ええ、普通の授業に出たくなったら出てもいいですし、無属性魔法を研究しても構いません。……そうしますか?」
「はい、わざわざ提案して頂き感謝しますっ」
「シィナさん、魔法の練習もいつでも歓迎しますので、是非修練場にも顔を出してください」
「はい、ジッド先生……あと天才は止めて下さい……」
「……善処します」
「ですが、毎朝必ず担任のエレアーレ先生へ報告はして下さい。あくまでも学院生なのですから、きちんと健康的に過ごさないといけませんからね……それと…………」
色々と条件は出されたけど、問題ない内容だったのでそれくらいは大丈夫だ。
うん、私的には願ったり叶ったりな状況だね。
職員室も教えて貰ったので、毎朝教室に行かなくてもいい。
あの馬鹿な王子様はなんか嫌だし……丁度いい。
開放された私は早速図書室へ足を運んだ。
昨日の続きを読み漁ろう…………研究してもいいとは言われたけど……
研究ってどうやるんだろう?
こまめにメモでも取りながらやればいいのかな……
……まぁ、そこは後で考えよう。
図書室にはゲルド先生が昨日の案内図を制作していた。
……と言ってもまだ仮の段階だったけど。
少しアドバイスもしておいたよ、あまり細か過ぎずると逆に分かりづらくなるので、簡素に書くのがいいと。
……スーパーとかの案内図もそんな感じだしね。
無属性魔法の研究資料を読みながら案内図の制作を助言したりする……なかなか楽しい時を過ごしていった。
今日の研究資料はそもそも無属性とは何か……というテーマで、なぐり書きのような物だった。
読むのを止めようかと思ったけど、確かに少し考えてもいいテーマだ。
普通は火や風などの属性がある魔法が一般的なのに、何も属性が無い魔法を無属性といっているけど……何も無い所から生み出す感じなのだろうか……
いや、魔力という燃料があるから発動する訳だし……無から生み出すという感じでは無い……のかなぁ……
……体を強化する魔法はなんとなく分かる。
でもたまに取り留めのないような無属性魔法も資料に載っていた。
物体を魔力で操ったりするのは超能力っぽいイメージだし……
花を開花させる魔法もあったり……汚い泥水を綺麗な水にするなんてのも書いてあった。
……違うカテゴリーじゃないの?それって……
よくわかっていない魔法を無属性ってことにしてるだけなような……
あ〜〜っ……分かんなくなってきた。
……あっちの世界の男の子とかならゲームとかで知識あるのかな……
たぶんそっち系な気もする。
私の見ていた魔法少女にはそんな属性なかったし……
よし、一旦休憩しようっ!甘い物がないとこれ以上考えられません。
まだお昼ではないので、飴を舐めて小休止をする。
……なかなか無属性魔法は手強い……私の頭脳はハチミツ味で癒やされる。
とりあえずこの研究資料はもういい……最後ページにも答えは書かれていなかったし。
本棚に戻して、別の研究資料を机に置く。
さてさて……貴方はどんな内容ですか〜?
……もうすぐ昼食なので、資料を片付けて寮の食堂へ向かう。
手書きの字が汚すぎて解読するだけで疲れてしまった。
午後からは気分転換に普通に修練場で魔法でも勉強しようかな……
いつもの窓際の席でフォルナちゃんと一緒に昼食を食べて、授業免除の事などを伝えておいた。
少し寂しそうな反応だったけど、修練場にはたまに顔を出すと言ったら喜んでくれた。
それに、午後からは早速修練場に行くからね。
他にも友達になってくれそうな人……あんまり居ないんだよね……
居ないというか、授業の休憩中とかずっと王子様たちの周りが騒がしいのだ。
王子様に気に入られたい女の子がや男の子が多い……そのせいでこっちの友達作りも難航している状況でもある。
やっぱり邪魔な存在だね……
今日は早めに修練場へ行って、フォルナちゃんの魔力制御を見せて貰う。
フォルナちゃんはちゃんと魔力制御自体は出来ているので、高速の魔力循環のやり方を教えてあげた。
と言っても、私なりのコツを教えただけなので、自分のモノにできるかはわからないけどね……
「……難しいです。高速の魔力制御ってこんなに難しいんですね」
「さっきの魔力制御より少し早くなってるから、あとは慣れだよ。空いてる時間に少しずつやってもいいし、歩きながら魔力制御をしたりね〜」
「シィナちゃんは本当に凄いと思いますっ……私も頑張って高速の魔力制御を覚えますっ」
「もっと気楽に、遊び感覚でやるといいよ。魔法を使う時はだめだけど、魔力制御だけなら誰にも迷惑は掛けないしね」
「なるほど……」
「…………私はあっちで少し離れて魔法を練習してるからね。なにかあったら呼んでね〜」
「うん、ありがとうシィナちゃんっ」
王子様たちが修練場に来たから離れていよう……
今日は1年生の二つの教室の合同らしい。
上級生も居るようだけど、何年生かはわからない。
3年生くらいかな?背の高さで予測するしかない……あ、杖を持ってるね。
一年生は入口の近くを使い、上級生は奥の方で魔法の練習をするみたい。
私はその中間で一人で練習してよう……先生方には私の免除も伝わっているようなので、大丈夫だそう。
この黒髪ならいい目印になるしね……
ジッド先生はずっとこっちを見ているけど……仕事してください……
とりあえず魔力制御を高速から徐々に速度を上げていく。
これくらいなら歩いてでもできるね……
あまり周囲に邪魔にならない魔法……ん〜、闇魔法なら迷惑にならないか……
的に向って闇魔法を放つと、的に黒いモヤモヤが掛かって的が見えなくなる。
今度は光魔法で光の玉を作って黒のモヤモヤに放つと、光で闇魔法が霧散した。
いいね〜魔法を使ってる感じでカッコいい。
私は少し調子に乗ったので、火の玉を前方に何十個も出現させる。
水の玉を出す要領で火魔法を使ってみたけど……熱い……
的に向って連続で火の玉を放っていく。
一つ一つは小さいけど何十個も一斉に放ったので、的は完全に焼け落ちた。
魔物相手なら有効そう。
少し喉が乾いたので水の玉を出して一口飲んだ……冷たくて美味しい。
ふぅ……少し休憩………………ん?周りが静かだけど…………ああ……
一年生も上級生もこっちを見て驚いていた……もう帰ろうかな……
うっ……また馬鹿王子と第二王子がこっちに来ちゃった……
「おい、やはりお前は我の元に来い、我が国はお前のように有能で……う、美し…………」
「……邪魔」
「えっ?……うっ!?」
「ドノヴァン殿?」
あ……つい威嚇してしまった……怯んでいる…………帰ろう。
「テオドルド殿下、失礼しますね」
「え?あ、はい……」
「な、何だ今の……殺気か?」
殺気じゃなくて威嚇だよ……馬鹿王子……
私はフォルナちゃんに軽く謝ってから修練場を出ていく。
あ〜……もっと集中して魔法使いたい……マジで邪魔だな、アイツ……
そのまま図書室へ行って、午前中の続きの解読作業をした……
……それから数日が経ち、学院が始まってから初めての休日になった。
5日通い、3日休日がある制度らしい。
授業免除な私は休日の感覚は薄いけど、学院の外に行けるだけで楽しい。
また食材を買ったり、喫茶店にレシピを渡したり、王都見学をフォルナちゃんとしたりして過ごした。
そしてマヨネーズが話題となり、喫茶店は更に有名になっていった……
2号店は建設中らしいけど、学院から見てお城の向こうにできるらしいので、私が行く事はあまりないだろう。
……今日は杖を作る為に、森へ行くイベントがある。
1年生全員と引率する各教室の担任の先生が5名、お弁当を積んだ荷馬車が二台……護衛騎士も何人もついてくるらしいので、凄い数になるイベントだね。
ただ姉様からは注意するように言われた。
どうやら精霊樹の名前の通りに、精霊さんが多くいるらしい。
なるべく精霊さんと会話をするところは見られないように……と。
……無理な気がすると言っておいたけど……杖の材料はここでしか採れないらしいので、1年生は強制参加……どうしようもない。
バレたらどうなるか分からないけど、精霊さんが来たら最悪闇魔法で自分を包むしかない、もしくは光魔法で目眩ましかな……
それくらいしか対応策は思い付かなかったので、あとは運次第。
無事に何事もありませんように……祈るしかない。
一年生は朝食を食べた終わったら馬車に乗り込む……学院の敷地は馬車で溢れている。
しかも今年は王子様もいるので、更に護衛騎士の人数が多いようだ。
まぁ、外に行くなら当然だよね。
私もフォルナちゃんや教室の女の子たちと馬車に乗り込む。
……おっ、もしかしたら友達を作るチャンスかもしれない。
一応少しだけクッキーを焼いておいたのだ。
道中暇だろうから、もう少ししたら皆で食べよう。
「あ、あのシィナさん、基礎勉強が免除になったのは本当ですか?」
「はい、学院長の目の前で2年生から6年生までの試験を受けました」
「ええっ!?6年生まで?解けたのでしょうか?」
「はい……えっと昔間違えて兄様の教科書で6年生までの勉強をしてしまいまして……」
「そ、それは凄い間違い方をしましたね……」
「シィナちゃんはちゃんと理解できたのが凄いよ」
「いえいえ、本気になって勉強すれば誰でも覚えられますよ」
馬車に一緒に乗った同じ教室の女の子たちから質問攻めにされる。
別に私の事はいいじゃない……
「シィナさんって……その……テオドルド殿下とドノヴァン殿下にはご興味はないのでしょうか?」
「興味?私はお父様やお祖父様、兄様たちから言われました……近寄ってくる男に注意しなさいと……男は敵と教育されましたので、興味はありません」
「…………変わったご家族ですね……」
「……あ、でも私もお父様には男を簡単に信じるなと言われたことがあります」
「私もあります……」
「それは皆が可愛いから、心配する親心というものでしょう」
「「「あ〜」」」
……お嬢様の相手は疲れるね。
でも話し相手にはなれたので、今後に期待しよう。
馬車は快調に進んでいく……予定ではお昼前には着く予定らしい。
途中でクッキーを皆で分けたらとても美味しいと喜んでくれた。
フォルナちゃんは小声で餌とつぶやいて笑っていた。
……特に何事もなく学院一同の馬車は森の手前まで進み、森に入る手前で小休止をするようです。
馬車のお馬さんには私が水を与えておいた。
どうも私はお馬さんが好きらしい。
御者兼護衛の騎士さんからもお馬さんが喜んでいると言っていたの。
私の出す水はそこそこ好評だった。
そしてまた学院一行は森へ入っていくのだけど、精霊樹と呼ばれる木は王家が管理しているらしい。
道もある程度整備されて、常駐する騎士もいるようだ。
それくらい精霊樹という木は王家にとって重要らしい。
お貴族様が使う杖の素材なら、確かに重要なんだろうね。
年に一回は新入生がこうやって採りにくるから、管理するのは必要なんだろう。
どれくらい時間が経ったか分からないけど、森が開けた場所に来たようです。
そこには一軒の家もあって、騎士が何人か待機していた。
一行の馬車はその家の前で止まって、私たちも馬車を出る。
それからは遠足に来た学生のように各教室毎に集まり、担任の先生が指示を出してまとまっていく。
そしてエレアーレ先生が全学生に向って声を張った。
「皆様、これより各教室毎に精霊樹へ歩いて向かいますっ、最初は1−1から進みます。1−1が戻ってきたら次の教室が精霊樹へ向かいますので、その間に昼食を摂っていてくださいっ……1−1の皆様は私と騎士からは離れないようについて来てください、いいですか?」
「「「はいっ」」」
「では参りますので、周囲には警戒して進みますよっ」
「「「はいっ」」」
騎士は王族の警護もあるので、15人くらいはついてくるみたい。
森だし魔物とか出るのかな……少し不安。
1−1の一行は更に森の深い所へ進んでいく……
森の中だけど街道のように石畳が敷かれているので、とても歩きやすい。
柵もあったりするので、道に迷うような事はないだろう。
それに……何か……澄んだ空気になっていく気がした。
森の濃い香りとは少し違って、何故か安心してしまうような感覚がある。
臆病な私が警戒心を解くくらいは心地良い……
たぶんこの少し先が目的地ね。
すると、予想通りに少し開かれた場所に出る。
「……綺麗」
前方には青く光っている一本の大木が鎮座するようにそこにあった。
そこまで高い木ではないけど、太く生き生きとした感じで、なんていうか……生命とか息吹とかよく分からないけど…………たぶん命を感じた。
そしてたくさん精霊さんが飛んでいる…………あ、まずい。
……精霊さん、お願いしますっ……今は話掛けないでくださいっ。
(………………)
……シィナちゃん……精霊さんと話せるの?
(………………)
うん、お願い、頼んでみて……
すると精霊さんが私の体に寄ってきて、うなずいたように感じた……
「シィナちゃんに精霊さんが……」
「大丈夫だよ、精霊さんは……こんにちはだって」
「ふふっ、そうなんだ……こんなに精霊さんを見たの初めてだよ……」
生徒の皆も……王子たちも精霊さんを見て感動していた……
うん、たぶん大丈夫な気がする。
シィナちゃんに助けられたよ、ありがとうっ!
「皆様、さあ、そこに無数に生えている枝のような物が見えますか?」
「……枝?」
よく見ると、そこら中の地面から枝?が生えているように見える。
なんだろうこれ?
「それを魔力制御をしながら抜いてください、抜いたあとは魔力制御は止めても大丈夫です。自分でどの枝がいいか感じてください……これは精霊樹からの贈り物です。優しく抜いてくださいね」
「「「はいっ」」」
私もこのよく分からない枝の中から自分の枝を探す。
「私の枝はコレがいいっ」
「俺はこの枝がいい気がする……」
「僕は……この枝にしよう……」
皆は自分の枝を見つけて抜いていた。
地面から生えた不思議な枝…………私のはどれだろう?
少し奥へ歩く……他の枝を踏まないように注意して……
すると精霊さんが寄ってきて、無言で教えてくれた気がした。
うん、その枝がいい。
二つの光……が一本の枝を指指してくれた気がしたので、魔力制御をしてから優しく抜いてみた。
特に抵抗もなく枝は地面から抜かれたので、魔力制御はそこで止めた。
不思議な体験をしている……目の前には青く光った大木……
精霊さんもいつもより優しい気がする。
でもこの精霊樹には触れてはいけない気がしたので、ゆっくりと皆の所へ戻って行った。
「……全員枝を抜きましたか?抜いていない方は居ませんか?」
全員の生徒は胸に抜いた枝を持っていた。
「では精霊樹に感謝をして戻りましょう、騎士の皆様、また宜しくお願いします」
「「「はっ!」」」
魔物の出る気配は全くない……
馬鹿王子も子供のように嬉しそうにしていた。
凄いファンタジーを体験したので、まだ少し興奮しているよ。
あれが精霊樹……姉様や兄様たちも教えてくれない訳だ……
これはネタバレしないでくれたことに感謝だね。
でも……この枝?って杖より細いし短いよ?これが杖になるの?
感動と疑問でいっぱいだったので、いつの間にか馬車のところまで帰って来ることができたけど……とりあえず昼食だね。
入れ替わりで別の教室の一行が騎士を引き連れて精霊樹に向かっていった。
枝は絶対に無くさないようにと言われたので、懐にしまっておく。
他の教室の女の子は馬車の中でお弁当を食べたりしていたので、こちらも馬車でお弁当をまったりと食べた。
5つの教室の全員が無事に枝を取ってこれたようなので、馬車で王都へ帰る。
ちゃんと懐には枝があるので大丈夫。
エレアーレ先生に軽く質問したら、この枝を使った授業をするので明日は教室に来るようにと言われた。
疑問しかないけど、明日の楽しみにしておこう。
馬車の帰りは暇だったので、フォルナちゃんの魔力制御をみてあげる。
すると、他の子たちも教えて欲しいと言ってきたので、私の乗った馬車では急遽始まった魔力制御の個人レッスンが盛り上がってしまった。
こういう暇な時は魔力制御の練習が持って来いだからね。
何事もなく王都について、学院へ帰ってこれた。
平和が一番だね……魔物が出なくてよかったよ。
この日は馬車の女の子たちと仲良くなったので、夕食は皆で食堂で食べた。
シュアレ姉様にも精霊さん問題は大丈夫だったと報告した。
自室の机の上に枝を置いて、その日はぐっすりと眠れたの。
……翌日、枝を持ってフォルナちゃんと教室へ向かう。
さあ、この枝で何をするのですか?
ワクワクしながら授業開始を待つ。
昨日の子たちともすっかり打ち解けたので、私がいない時もフォルナちゃんが寂しくならないで済みそう。
今度の休日は皆で遊びに行ってもいいかな〜。
「皆様おはようございます。昨日はお疲れ様でした、枝を忘れた方は居ませんか?」
エレアーレ先生の授業が始まり、早速この枝を使うようだ。
「この精霊樹の枝は、精霊樹の魔力がたっぷり含まれています。今から魔力制御をして、魔法を使う時のように手のひらに集めた魔力をこの枝に注いでみてください」
言われた通りに魔力を制御していき、枝に魔力を注いでみる。
……お?この枝に魔力が吸われていく感じ……注ぐというより吸われる感覚かな?でも嫌な感じはしない。
「皆様、枝に魔力が吸収されていく感覚がありますか?自分の限界まで魔力を吸わせてください。大丈夫、魔力枯渇にはなりませんから、落ち着いて魔力制御をしてください」
どういう事かはよく分からないけど、エレアーレ先生の言うように魔力制御を続けていく……
「はぁはぁ……もう限界……」
隣のフォルナちゃんは魔力がもう限界みたい。
というか教室中の生徒がもう無理って感じだね。
でも具合が悪くなってはいないようだ。
魔力枯渇っていうのになるとぐったりするらしいからね。
「…………シィナさんは……さすがですね。まだ余裕そうですか?」
「はい、もっと吸わせても大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です…………皆様っ!シィナさんの枝を見ていてください、いい見本になりますから」
見本扱いされたけど……うっ……本当に皆が私の枝に集中している……
……もっと高速で吸わせてもいいよね……早く終わらせたい。
「エレアーレ先生、高速で吸わせてもいいですか?」
「ええ、問題ありません。魔力枯渇にはなりませんから」
私は高速で魔力を循環させる……もっと早く……もっともっと早く……どんどん枝に魔力が吸われていく。
大丈夫だよね……枝がはち切れないよね?
ん?……なんか太くなってきた。
「……まさかここまでとは……シィナさんいいですよ。そのまま続けましょうっ、皆様、こうやって大量の魔力を吸わせると枝は太く長くなって、この杖の大きさくらいまで成長します」
エレアーレ先生は自分の杖を出して皆に見せる。
なるほど、成長する枝なんだね。
私は高速の更に上の上……自分のできる最高速の魔力制御で枝に、吸わせてみる。
凄いよ、こんなに魔力を使ったことなんてない、私自身が魔力で吹っ飛びそうになるくらいっ。
枝はどんどん大きくなっていく。
ストローよりも細かった枝は、もう親指くらいの太さになっていく。
そして吸われる感覚はなくなった……ん?もういいの?
もう魔力は要らない?
枝に話しかけるけど、当然答えは返ってこない。
「先生、吸われる感覚がなくなりましたけど……」
「凄いわシィナさん、もう魔力制御を止めてもいいわよ。皆様もこのくらい枝が太くなるまで毎日魔力を注ぎましょう、個人差はありますが、秋から冬までにはこのくらいに枝は成長します」
全員が驚いて声を上げていたけど、もう見ないで欲しい……
秋から冬って……まだ春だよ。
「杖作りは一朝一夕ではできませ…………シィナさんは例外として、普通はできません、魔力制御をもっと学べば、より強い魔法を使う事も可能です。なので枝へ魔力注ぐ事は魔力制御の練習にもなるでしょう」
「先生、私はこれからどうすればいいでしょう?」
「杖に加工する必要がありますので、後でジッド先生が対応してくれます」
加工するんだね……まだ見た目は少し太い枝だからね。
また私は別行動か……皆はこれから普通に基礎勉強をするらしい。
ジッド先生は私を天才扱いするから少し面倒……
悪い人ではないと思うけど、ルルエラ先輩に少し似ている。
さらわれたりしないよね……




