閑話 ハチカ
「嬢ちゃんありがとうよ、また来るぜ」
「はい、お待ちしていますっ」
……ふぅ、これで最後のお客さんが帰ったから終了だね。
お食事処での接客も最近は緊張しなくなってきた。
お母さんの言ってたことは本当だった……鎮魂祭で舞を披露したら、自信がついて緊張しなくなるって。
まだ少し緊張しちゃうけど、ちゃんとお客さんの目を見て普通に受け答えも出来るのが楽しい。
食器を片付けてお父さんを手伝おう。
厨房へ行ってお皿洗っちゃおう……
「今日も忙しかったね」
「そうだなぁ、忙しかったな……はぁ……」
「お父さん、大丈夫?」
「ああ、いやハチカが学園に行ったら、もっと大変になるなって考えたんだよ」
「大丈夫だよ、お手伝いさんも来るし……夕方までには帰って来るから」
「違うぞ〜、父さんがハチカに会えなくなるから淋しくなるんだっ」
「ちょっと、お父さんっくすぐったいよっ、アハハッ!」
「……まったく、何やってるんだい」
「お、お母さんっ!お父さんを止めてっひぁあっ!アハハッやめて〜っ」
「ハチカに嫌われるよ……」
「それは嫌だっ!」
やっとお父さんのくすぐりが終わった……たまにしてくるから大変だ。
「お母さん、宿の方は大丈夫?」
「ああ、こっちも終わりだ、さあ夕食にしようかね」
家族で夕食を食べながら今日あったことを話す。
これは毎日ずっと前からやっている我が家のしきたりだ。
今日は宿のお客さんが5人来たみたい。
ほとんどが近くの街から来る業者さんらしい。
リンドブルグ家に納品に来たついでにこの街で仕入れて帰っていく。
そんな人が多い……そのお陰で街の経済も回っているらしい。
私は経済とかよくわかんないけど……
「で?今日もリカンケーキは好評だったかい?」
「ああ、作った分はなくなったよ」
「他にもハンバーグが多く注文されたよっ」
「ハンバーグも美味しいからね、シィナ様には頭が上がらないよ」
「ジュリエッタさんからしっかり教わったからね……リカンケーキもハンバーグも……シィナ様は凄すぎる」
一緒に遊ぶ時は普通の女の子なんだけど、どうやったらあんな料理が思いつくんだろ?
私の唯一自慢出来ることはシィナ様のお友達ということだ。
同い年で良かったと心から思う。
でも……もうすぐシィナ様は王都に行ってしまう。
シュアレ様もダリル様も居なくなっちゃうので正直寂しい。
お貴族様は必ず王都の学院に通う必要がある為だ。
私は平民だから街の学園に通わなければならないのと一緒だ。
でも最近はあの3人組とよく顔を合わせるので、学園で一人ぼっちにはならなそうで良かった……学園に通う前に鎮魂祭でお友達なれて助かったよ。
…………でもシィナ様は違う。
シュアレ様とダリル様が一緒に行くけど、友達はいない……シィナ様なら大丈夫だと思うけど、やっぱり少し心配。
それに…………私のこと忘れちゃったらどうしよう。
シィナ様とはずっと友達でいたい……私を忘れないようにするにはどうしたらいいかな。
何か……贈り物でも…………ん〜何を贈ればいいかなぁ……
「難しい顔をしてどうしたんだい?具合が悪いのかい?」
「え?ハチカ大丈夫かい?」
「え?ち、違うよ、大丈夫…………シィナ様が……王都に行っちゃうから……」
「ああ、そうだね……ハチカ寂しいかい?」
「うん……でもそれより……私のことを忘れちゃったらどうしようって……」
「…………大丈夫、絶対大丈夫」
「……お母さん、どうして分かるの?」
「だって、シィナ様は記憶がなくなってもまたハチカと友達になったでしょ?忘れた?」
「あ……そうだった……」
そういえばそうだ……記憶がなかったんだ……でもゾーイ様が連れてきてくれて…………また友達になったんだ。
なんだ……私とシィナ様は絶対大丈夫なんだ。
もし、もしもまたシィナ様が記憶をなくしても、私が絶対に友達になればいいんだ……そうか……それでいいんだ。
だから何か友達の証を贈りたい。
何か考えよう……シィナ様との友達の証……証拠……
シィナ様が王都に行くまでに渡すんだ……そしてお願いしよう。
そうと決まれば何か探しに色々と探そう……お小遣いは結構貯まっているし。
もう今日は寝ようっ!早起きして朝から探すんだ……
翌日……私は予定通り、朝から贈り物探しに街をうろつく。
できればお昼前までには見つけなくちゃ。
手伝いもあるからね。
お店……何か贈り物……食べ物のお店は多いけど……服を扱ってる所は生地ばっかりだし……
何処かに何かないかな?
街には色々と入ったことのないお店も多いから、突撃するしかないね。
少し怖い……一人だし……でも頑張るって決めたんだ。
今日は必ず見つけて見せる。
これまで行った事のない区画を歩いていく、結構この街は大きい。
普段行かない場所なのでやはり少し緊張しちゃう。
何かお店がないかとキョロキョロしていると、突然声が掛けられた。
「ハチカちゃ〜ん」
「えっ?」
後ろから声を掛けられドキっとする。
振り向くとパッセちゃんがこっちに小走りで向って来ていた。
「ハチカちゃん、こんにちわっ」
「パッセちゃん、こんにちわ……驚いたよ」
「ふふっこっちも驚いたよ、どうしたの?こっちまで来るなんて珍しいね」
「…………パッセちゃん、この辺り詳しい?」
「まあ、普通に……家も近いし」
「贈り物とか売ってるお店……ない?」
「贈り物…………工芸品を売ってるお店なら知ってるよ?」
「そこっ!そこ教えてくださいっ」
「いいけど……少しだけ待ってくれる?これからリンちゃんが来るから」
「リンちゃん……あれ?何か予定あった?」
「ううん、お家のお手伝いもなかったからリンちゃんを誘って暇つぶし……かな?だから気にしなくていいよ」
「ありがとう……助かったよ〜」
パッセちゃんは以前より少し明るくなった。
私みたいに気が弱い子だったから、私とは気が合ったので今ではすっかり仲良しだ。
「リンちゃんだけ?セルカちゃんは?」
「セルカちゃんは親と一緒にお出掛けだって」
「そう……あ、リンちゃんだ」
「アレっ!?ハチカちゃんが居る……なんで?驚いたよ」
「私も偶然見つけたんだよ、えっとリンちゃんこれから工芸品のお店に行ってもいい?」
「いいよ〜暇だしっ……っていうかなんで工芸品?」
「ハチカちゃんが贈り物を探してるんだって」
「贈り物……はっは〜ん、誰に?男の子?男の子?」
「ち、違うよっ!男の子じゃないよリンちゃんっ」
「え〜違うの〜?」
「違いますっ!大事な友達へ贈る物を探しているのっ」
「はいはい、そういう事にしておきましょう……じゃ、いこっ」
「リンちゃんは相変わらずだね……」
「それがリンちゃんだからね……」
リンちゃんはあまり変わっていない……これが通常通りだ。
私たちはリンちゃんを先頭にその工芸品のお店に向って歩く。
「そういえばさ、ハチカちゃんのところで……なんて言ったけ?ハンブーグ?とか言うお肉の料理あるでしょ?」
「ああ、ハンバーグ……だよ」
「そうそう、ハンバーグね、それって美味しいの?家の近くの子が凄く美味かったって自慢してきたんだよ」
「絶品よ」
「うっ……絶品?そ、そんなに美味しいの?」
「私も聞いたことあるよ、凄く美味しいんでしょ?」
「…………普通のお肉じゃなくてね、お肉を細かく刻むの……刻んだお肉を塊にして焼くんだけど……食感も柔らかくてね……食べると肉汁がね溢れてくるの」
「なにその……美味しそうな説明……食べたくなってくるわね」
「う、うん……凄ごそう」
まだハンバーグはそこまで広まっていないから……リカンケーキの方が有名だし。
「今度親を説得してみせるわ……」
「わ、私も頑張る……」
「ふふっ、ご来店お待ちしています」
「ううっ……リカンケーキといいハンバーグといい……ハチカちゃんズルい!」
「確かにズルいよね〜。…………あ、ここだよ、工芸品のお店」
看板にも工芸品って書いてある。
なんか素敵なお店だ、ここなら……
リンちゃんが扉を開けて中に入っていくので私も続いて入る。
……店内はもっと素敵だった。
色んな物が……沢山あった。
金属のキラキラした物や何かの鉱石が埋め込まれた髪飾りだったり……
安そうな物から高そうな物まで様々だ。
「いらっしゃい、ゆっくり見ていってね」
「は、はいっ」
キレイで優しそうなお姉さんが店番をしていた。
ここなら何かある気がする。
だけど……このお姉さんどこかで見たことが……
「あら?リンちゃんとパッセちゃんじゃない……いらっしゃい、そっちの子は見かけない子ね?」
「この子はハチカちゃんっていうの、友達だよアキさん」
「ハチカちゃんね、宜しく、アキといいます」
「は、はい、こちらこそ宜しくお願いします」
「アキさんは私の家の近くに住んでいるんだよ」
「…………ハチカちゃん、どこかで合ったことある?見覚えが……」
「アレ?常連さんのお姉さんだ……リカンケーキの……」
「ああっそうだ、あそこの子だ」
このお姉さんは夜にリカンケーキを持ち帰るお姉さんだ。
「いつも夜に見るから気付きませんでした」
「私もよ、いつもリカンケーキを取っておいてくれてありがとうね」
以前何度もリカンケーキを夜に買いに来ては売り切れて、ずっと買えずにガッカリしていたので、私が1つだけ取っておいて渡したことがあった。
それ以来、決まった日に買いにくる常連さんのお姉さんだ。
「なんだ、知り合いだったんだね……リカンケーキは美味しいからね」
「私の生きる理由よっ!リカンケーキは」
「大袈裟ですよ……」
「大袈裟じゃないわ、ハチカちゃんっリカンケーキは女神の食べる甘味よ……あんな美味しい甘味他にないわっ」
「あ、ありがとうございます」
リカンケーキの虜になっているみたい……さすがシィナ様の甘味だよ。
「また……リカンケーキ食べたくなってきちゃった」
「そうね、アレは女の子なら全員好きだよね」
リンちゃんもパッセちゃんもリカンケーキは大好きだからね。
私も大好きだから気持ちは分かるよ……
「ああ、えっと今日は何かお探しかな?」
「ハチカちゃんが男の子に贈り物を……」
「だから違いますっ、女の子の友達へ贈る物を探しに来たんですっ」
「本当に女の子なの〜」
「本当ですっ」
「…………誕生日?」
「あ、いえ、少し離ればなれになるので……友達の証……みたいな感じの物を探してます」
私がそう言ったら、アキさんは少し真剣な顔になって私を見つめていた。
どうしたんだろ?
「ハチカちゃん、これなんてどう?」
「え?」
アキさんが後ろの棚から何か取り出して見せてくれた。
なんだろう?丸くて平べったい……
「これなんですか?」
「最近他の国で流行っている物で、この小さい穴に組紐を通して、首から下げる物よ……コレとコレが組み合わさると、一つになるの。」
「へぇ……変わった物ですね」
「これはね、恋人同士や友達同士が離れていても、また会えるように願いを込めた首飾りよ、どう?ピッタリじゃない?」
「素敵……」
「うん……」
確かにピッタリの贈り物だけど……真ん中や外側にキラキラした鉱石が付いていて……
「で、でもコレ高そうですけど……」
「…………今日の予算は?」
「えっと、1000シュタくらいです」
「ハチカちゃんお金持ち〜1000シュタも持ってきたんだ」
「お小遣いを貯めていて……でもその首飾りってもっとしますよね?」
「……1000シュタでいいわよ」
「えっ?でも……」
「これはお礼……これまでリカンケーキを取っておいてくれたお礼、言ったでしょ?リカンケーキは私の生き甲斐なのよ」
「本当にいいんですか?」
「ふふっ、ハチカちゃん、こういう時は素直にお姉さんの提案を受けてくれればいいのよ」
1000シュタどころか……たぶん5000シュタでも買えないくらいじゃないのかな?
いいのかな……
「あとね、これはまだお店に並んでいない仕入れたばかりの物で値段も決めていないの、もしかしたらこの国じゃまったく売れないかもしれないでしょ?下手をすると500シュタくらいで投げ売りするかもしれないわ」
「500なら私は即買いする……」
「私も……」
「だから遠慮しないで…………逆にその首飾りを宣伝してほしいくらいよ」
「わ、わかりました……1000シュタで買いますっ」
このお姉さんの好意を素直に受け取ろう……それに……シィナによく似合うと思うし……
私はお財布を出して1000シュタを支払った。
「はい、毎度あり、ついでに組紐もつけちゃうから待っていて……」
「あわわ……そこまでしてもらわなくてもっ」
「いいから待っていて、包んじゃうから」
アキさんはそう言って奥に行ってしまった。
「よかったね、いい物が安く買えて」
「ハチカちゃんの親切がアキさん嬉しかったんだね」
「うん……」
お父さんが言っていた……誰かに親切にすると、自分に帰って来るって……こういうことかな?
「はい、お待たせしました」
「ありがとうございます」
…………あれ?包みをくれない?
「一つ教えて、コレを渡す相手は本当に女の子?」
「ほ、本当ですよっ!?」
「どこの子?この子は引っ越すの?」
うっ……シィナ様の事はなるべく秘密にしていたいけど……
「あっ!わかったっ!鎮魂祭の時の……えっと……黒髪の何だっけ名前?」
「リンちゃん覚えてないの?シィナちゃんでしょ?」
「あ、そうそう、シィナちゃんだ……私あれから会ってないんだよ」
「シィナちゃん?どこかで聞いた名前ね…………あれ?……なんだっけ?」
このままではバレちゃう…………そうだっ!
「お、お礼に、お父さんにリカンケーキを作って貰いますからっ」
「本当?やったっ!」
よし、包みを受け取ったよ。
これで安心してシィナ様に渡せるね……まだ時間もあるしね。
「失礼するよ……おや、ハチカ嬢じゃないか」
「えっ?」
後ろから入ってきたのは……ヒルク様だ。
「「「ヒルク様っ!?」」」
「ヒルク様、いらっしゃいませ注文の品ですよね?少々お待ち下さい」
なんでここにヒルク様が来るのっ!?
「ちょ、ちょっとハチカちゃんっ!今ヒルク様がハチカ嬢って言ったわっ」
「ハチカ嬢の友達か?……ああ、鎮魂祭で一緒に舞っていた子たちだね?覚えているよ」
「は、はは、はいっ!」
「ヒルク様が私を知っているなんてっ光栄ですっ!」
……あ、リンちゃんはヒルク様派だって言っていた気が……
「今日はどうされたのですか?買い物ですか?」
「ああ、私の婚約者に贈り物をしようと思ってな、なんでも他の国の珍しい首飾りがあるとかで……今は遠くの領地にいるから贈り物を……どうした?」
「……え?珍しい首飾り?」
「……え?婚約者?」
「はわわわっ!」
「ヒルク様、こちらがその首飾りです以前説明した通りの一品です」
私と同じ作りの物だっ!!これ……お貴族様が買うような物なのっ!?
「ああ、わざわざ取り寄せてくれて感謝します……ではハチカ嬢、またな」
ヒルク様は首飾りを受け取ると颯爽と店を出て行った。
隣では……リンちゃんが白くなっていた……
「え?婚約者…………嘘でしょ?……え?」
「リンちゃん、しっかりしてっ」
「はぁ……ヒルク様は恰好いいけど……もう婚約者さまがいて、近い内にこの街に来るみたいよ?聞いてる?リンちゃん」
「嘘よ……嘘…………え?だって……」
「はぁ……乙女の初恋は実らないっていうのが通説だからね……強く生きましょうリンちゃん」
「うっうううっぅううっ……」
「ああ……泣いちゃった……」
「リンちゃん……アキさんの言う通り強く生きよう……ねっ?学園にも恰好いい人はいるよ」
しばらく立ち直れないかもしれない……リンちゃん……
「これは重症ね……ほら、店の奥で休んでいていいよ……2人ともリンちゃんを運んできて……」
リンちゃんをパッセちゃんと一緒になんとか運び出す……お店の奥は普通の家みたいになっていた。
椅子に座らせて、アキさんが淹れてくれたお茶を飲んで……多少は持ち直してくれたみたい……良かった……
「……あ〜…………リカンケーキ食べたい……」
「そ,そうだね……今度一緒に行こうね……」
「お待ちしています……」
「私も若い時にそういう経験をしたからよく分かるわよ……年上は……勝手に結婚してしまうのよ……」
「…………あ〜……もういいや……」
「が、学園……学園で誰かいるから……」
「うん……もうすぐ入学するからね……」
「そういえばハチカちゃんってなんでお貴族様と知り合いなの?」
「ええと……あ、リカンケーキを教えてくれたのがリンドブルグ家の料理長さんなんですよ……」
「へぇ、リンドブルグ家の……だから知り合いだったのね」
「ええ、そうですね…………あっ!この首飾りって本当にいいのですか?お貴族様が買うような物なのに……」
「だから、大丈夫よ、ハチカちゃんなら大体わかるでしょ?仕入れ値とか」
「ああ……まあそれは分かりますが……」
「そう、だから大丈夫……ちゃんと相手に渡してね……えっとシィナちゃんに」
「はい、ありがとうございます……」
「なんか引っかかるけど………………まぁいいか……」
お茶を飲んで少しまったりした。
まだ時間は大丈夫だけど、そろそろ帰ろうかな……
「リンちゃん人生これからだから、大丈夫よ学園入学前ならまだ11歳でしょ?」
「私はもう12になりました……はぁ……」
「リンちゃん早生まれなんだね、パッセちゃんは?」
「私は夏の生まれです、ハチカちゃんは?」
「私は冬の生まれです」
「そういえば知ってる?入学といえばシュアレ様の妹が王都の学院に入学するのよ?」
「あ、知ってます、お母さんが話してました。」
「…………シュアレ様はキレイだし、妹もさぞ可愛いのでしょうね……いいなぁ……」
この話題はいけない……もう帰ろう。
「あ、そろそろ私はお店の手伝いがあるので……」
「なんでも黒髪らしい……ん?ハチカちゃんそろそろお店の時間?」
「「黒髪??」」
「は、はい、ではありがとうご……」
「シィナちゃんって黒髪だったよねっ!?」
「うんキレイな黒髪だったから覚えてるよっ!?」
「「……えっ!?」」
「ああ、思い出したっ!そうだよ、シュアレ様の妹の名前は……」
「失礼しますっ!!」
私は大急ぎでアキさんのお店を飛び出した。
後方からは、2人の大声が響いていた。
もしかしたら包みを抱えて走っている私は不審者に見えたかもしれない。
あ〜あ……バレちゃった……
なるべく秘密にと言われていたけど……
でも、いい首飾りを買えた……アキさんには沢山リカンケーキをごちそうしてあげよう。
後は時期を見て、シィナ様に渡すんだ……喜んでくれるといいな。
でも、この時の私は知りませんでした。
この首飾りが原因でシィナ様があんなことになるなんて……
ですがそのお話はまだまだ先の出来事ですので……お忘れを……




