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6・ヴァイルの症状

 招待状が届いた翌日やって来たヴァイルは、とても機嫌がよかった。

 わたくしは希望をこめて、

「不参加でお返事をしたいの」

 と相談してみたけれど、ダメと一蹴されてしまった。


「でもわたくしは場違いです。招待されるのは美しい令嬢だけなのでしょう?」

「そう。俺にとっては地獄だ。チェリーナがそばにいてくれなければ卒倒するだろう」

「そばに!? わたくしが?」

「ああ」


 当然のようにヴァイルはわたくしの手を取り、ふんわりと握る。


「チェリーナがいれば耐えられる」

「殿下の婚約者を決める会なのに、わたくしにそばにいろと?」


 ヴァイルが突然上着を脱いで袖をまくった。それからサラを手招きして、その手を握る。

「見てくれ」

 と、こわばった声に促されて彼の腕を見ると、鳥肌が立っていた。


 彼はサラを離し、

「これだけ頻繁に顔を合わせていて、なんの害もない女性とわかっていても、嫌悪と恐怖を感じてしまう」

 と、困り顔をわたくしに向ける。


 確かに、これはひどいわ。

 そういえば前回の誕生会のヴァイルは、無表情で女王陛下のとなりに立っているだけで、令嬢たちと交流はしていなかった。わたくしは付き合いにくそうなひとだと思ったのだわ。


「頼む、チェリーナ」上着を着直したヴァイルがわたくしの手をふたたび握った。「助けてほしい。無理に装わなくていい。いつもどおりの君でいいから」


 わたくしの外見についてヴァイルには、ぼさぼさ三つ編みは髪を他人に触られるのが苦手で自分で結っているから、長い前髪はおでこの水疱瘡あとを隠すため、眼鏡がないとなにも見えないほどの近眼と説明してある。


「それに」とヴァイルはわたくしの手に口づけた。「チェリーナはどこもかしこも愛らしいから、気後れすることはないぞ」

「――ではひとつだけお約束をしてくれたら、おそばにいましょう」

「なんだい」

「わたくしを妃にするなんて軽口は二度と言わないでくださいませ」

 ヴァイルがじっとわたくしを見つめる。視線が痛くて落ち着かない。


 だけど、

「……わかった」との返事があった。

 胸を撫でおろす。

「それでしたら、殿下の『サポート係り』としておそばに控えましょう」

「サポートな。了解した」

 笑顔のヴァイル。

 なぜだか胸騒ぎがした。

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