表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

15・解決

 第一護衛は結果的に王太子に剣を向けてしまったため、拘束された。幼馴染のことで冷静さをかいてしまったのだとしても、許されることではないもの。

 ヴァイルは複雑な面持ちをしていた。まさか信頼していた彼が理性を失い暴走するとは、思っていなかったのだろう。


 ヴァイルはケガを負っていた。最初の一撃がかすったようで、左手の甲が横一文字に切れていたのだ。幸い深い傷ではないようだけど、応急処置をした護衛が『あとが残るかもしれない』と言っていた。


 きっと第一護衛は罪に問われる。

 ヴァイルと第二護衛はふたりだけで、難しい顔で話し合っていた。

 第一護衛は前回わたくしを殺した張本人だけど、ショックを受けているらしいヴァイルを思うと、ざまあみなさいとは感じられなかった。それに幼馴染が殺害されたのは、可哀想だもの。


 とにかくもわたくしとサラの無実を早く女王陛下に伝えなければと、その場を近衛兵に任せて、ヴァイルと共に急いで大広間に向かった。

 この様子だとサラがひどい扱いを受けているかもしれない。

 わたくしは女王陛下と(いさか)うことも辞さないわ!




 ――そんな決意で臨んだのだけど、陛下の御前で事件のあらましを聞いている間に、事態は予想外の結末を迎えた。

 令嬢は亡くなっておらず、一時的に昏睡状態だったものの意識を取り戻したという。そして近衛兵の尋問に、サラとは会っていないしボタンのことはまったく知らない、第一護衛に突き飛ばされて後頭部を打ったとはっきり答えたという。


 その報告が終わるか終わらないかという頃合いで、第一護衛が噛み切った舌を呑み込んで自害したとの知らせが入った。


 それから様々な証言で、事件のあらましがわかった。どうやら第一護衛は幼馴染を好きで、彼女がヴァイルに近づく協力をしていたものの、不満に思っていたみたい。優勝を狙っていたのは彼女の関心を得るため。


 令嬢はヴァイルの決勝進出が決まったときに第一護衛を呼び出して、優勝したら祝いたいからふたりきりにしてほしいと頼んだのだとか。すると第一護衛は突然、『いつまで夢を見ているんだ!』と怒りだして彼女を突き飛ばしたのだそうだ。


 令嬢が握りしめていたのは確かにサラのものだったけれど、それは試合の観覧席で取れてしまったものだった。スペースが狭かったために、別の護衛とすれ違ったときにひっかけてしまったそう。中途半端に服にくっついていて取れず、帰宅したら外そうと思っていたのが、いつの間にかなくなってしまったのだという。


 第一護衛が計画的だったのかは、もうわからない。けれどわたくしに罪をなすりつけるために、サラのボタンを使ったのは明白だった。切りつけてきたのはきっと、わたくしが容疑者として死亡すれば、自分が疑われることはないと判断したからなのだ。


 そうすると前回わたくしに冤罪を着せたのも第一護衛で、ヴァイルに下剤を盛ったのも彼、目的は自分の優勝と、幼馴染が王太子に幻滅するためと考えられる。どんなに探しても、ヴァイルやわたくしに悪意を持つ人間がみつからないはずだわ。彼の目的は令嬢の関心で、事件は手段のようなものだったのだから。


 こうして事件はあっさりと解決をした。サラは一時的に拘束されていたけど、酷い目にあったりはしていないよう。本当に良かった。伯爵令嬢は幸い命に別状はないそうで、死亡したのは犯人の第一護衛だけ。


 わたくしもヴァイルも無事に生き延びた!

 一年に渡る不安は杞憂に終わったのよ!

 きっと、わたくしを生き戻らせた神様が守ってくれたのだわ。あまりに前回がみじめだったから。


 わたくしは前回出席できなかった式典に参列し、最前列で婚約者が勲章を授与されるのを見守った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ