〜僕は妖精警備員〜
暗く静まり返った洞窟内であった。
辺りはひんやりして、物音一つしない。
──────いや
足音が幾つか響いている。
「誰も近付いては居ないだろうな?」
一際暗い影が言う。
「はい、あれが居ますので近付きたくても無理でしょうが。」
クククッと笑いながら言うのは、ローブ姿の男である。
松明はチラチラと足元だけを照らすが、普通の人間ならとても思う様には歩けない暗さだ。
「あの石が移動出来れば、こんな場所に来る事も無かったのだが。」
最初の男だ。良く見れば顔に大きな傷がある。
口調から、周りよりも偉いのが分かる。
ギロリと一瞥されたローブ男が身をすくませながら
「申し訳ございません。何か古代の秘術が施してある様でございまして。」
「まあ良い。それよりもまだ着かないのか?」
苛々とした態度が、ローブ男を一層緊張させる。
「あの奥を曲がればすぐでございます。」
松明に照らされた洞窟は、見る限り闇だ。
顔に大きな傷のある男は、事も無げに歩いている。
奥まで来ると、道は左右に別れていた。
「右にはあれが居るのか?」
大きな傷の男が聞く。
「左様で。」
ふんっと鼻を鳴らし、傷の男が右奥を凝視している。
左を見ると、洞窟に似つかわしく無い光が見えていた。
「ここか。」
男は暗闇の中を歩いていった。
「しかし、それは便利だなあ。どう言う仕組みなんだ?」
カグマーズ洞窟迄の獣道。
村長が止めるのも聞かず、光る石の場所だけを聞いて来たのだ。
ラングは、隼人の腰に下げている警棒をしげしげと見ながら言った。
「仕組みは俺にも分からん。これまでの事を考えると、危機的状況になると光って教えてくれるみたいだ。」
「隼人の国では、皆使ってるのか?」
「こんな物がたくさんあったら兵士の居る意味が無いだろ?」
確かにと、ラングは警棒を見つめていた。
『聞こえる?』
──────────!!!
頭の中に女の声がする。
《何だ何だ??今、声がしたよな?》
周りを見ても、それらしい声の女性は居ない。
何より聞いた覚えがない声だ。
『ここだよ。』
腰の辺りが微かに光る。
《えっ!?まさか警棒の妖精か?》
隼人は警棒を不思議そうにみていたが
『妖精でも良いや。兎に角、これから宜しくね。』
明らかに若い女性の声は、間の抜けた言い方をしている。
《女神か?はたまた妖怪か??》
『妖怪とは何よ!最初に話しかけてた、仮に女神?の支配が緩くなったのよ。』
ああ、そうですかと納得できる話では無いが、ここは異世界だ。
《なるほど。》つい、納得してしまった。
『きちんと説明すると、私は前の持ち主って事になるかな。』
警棒は光りながら信じられない事を言っていた。
『仮に女神が説明不足だから、私が親切に出てきてあげたのよ。私、優しい!』
何かウキウキしながらの説明に
《あ、そっすか。そりゃ良うござんした・・・》
隼人はまた下を向いていた。
『あ〜!何よ〜!わざわざ出てきてあげたのに!』
見えてはいないが、顔が膨れていそうだ。
《だったら最初から出てこいよ。》
隼人の方が膨れている。
《今頃になって出てきやがって。如何にも後付の言い訳みたいな登場じゃねえか。》
『だ〜か〜ら〜!仮に女神の支配が強かったって言ってるでしょ?あ、そうだ!』
慌てた様に警棒が言う
『貴方はこれから、凄い物と戦うわ。その時にレクチャーしてあげる。この武器の戦い方を。』
そう言うと警棒の光は消えた
もし宜しければ、評価コメント等いただけたら励みになります。
厳しいコメント等もこれからの糧にしたいと思ってます。
宜しくお願いします。