〜僕は不死鳥警備員2〜
隼人は光り輝いていた。
ガーゴイル達の身体を貫いた光棒は、手に戻ってきている。
「マリー、もう一回いける?」
優しい隼人の声に、少しだけ頬が赤らむ。
「わ・・・私の魔力を舐めないでもらいたいわ!」
マリーは、ふんっと前を向き、詠唱に入る。
「そっか、それは安心だな。」
肩紐をピンッと張り構え直していた。
肩紐は警備員が警笛を付けて使用するモールだ。
咄嗟の時に警笛を鳴らしたりする。
「フェニックス・バースト!!」
燃え輝く鳥の群れは、ガーゴイル達の身体に無数の風穴を開けていく。
ラングとセレスは、それをただポカンと見ているだけだ。
「岩と同じ位硬いと言われるガーゴイルをこんなにあっさり・・・ですか。」
メイガンも目の前の光景に、ただただ魅入っていた。
動かなくなったガーゴイル達の身体に刃を突き立てているのはラングとセレスだ。
魔物等は必ず晶石と言われる核がある。
魔物によっては、かなり高額で取り引きされる物だ。
柔らかい関節等から切り裂いて取り出す。
「これだけあれば、かなり潤うぞ。隼人のお手柄だな。」
ラングはホクホク顔だ。
「ちょっと!うちの活躍も忘れないでよね!」
マリーはいつもの仏頂面である。
「ま・・・まあ、アンタも良くやったとは思うわ。」
プイッと顔を背けながらもマリーの顔は赤い。
「隼人〜!!やっぱりアンタは凄いわ!!」
大声と共に背中に柔らかい大きな肉がぶつかってくる。
「セレス、抱きつくなよ。暑苦しいし・・・」
「暑苦しいし??何?」
《いちいちデカイんだよ。》
声にならない声だ。
「確かに隼人の力は本物だが、依頼達成の為にはもっと活躍してもらうぞ。」
「そうですね。この魔物大量発生の原因も分かっていませんから。」
ラングとメイガンは気を引き締めようと言った具合だ。
まだ隼人に抱きついているセレスを睨みながら
「行くわよ!!」
マリーはさっさと荷台に乗り込み、不機嫌そうに寝てしまった。
ラング達も続き、馬車は走り出した。
アンガラの村は、漁業や農業を中心としている。
街からはかなりの距離があるが、取り引きで集まる商人やそれらを守る冒険者等で賑わっている。
だが、最近の魔物襲撃で行き交う人々も激減していた。
「前に来た時よりかなり寂しくなってるわね。」
セレスは辺りをキョロキョロしている。
「村で冒険者は雇っちゃいるが、魔物となると追い払うので精一杯だろう。ギルドでも連日討伐依頼が出ているからな。」
ラングはため息混じりに言った。
「他の所でも魔物が活発化していると聞きます。何か悪い事が起きなければ良いのですが。」
メイガンも不安げに空を見つめた。
馬車は1軒の家の前で停まった。
「お疲れ様で御座いました。こちらが村長の家です。」
ラング達は馬車を降り村長の家をノックした。
「────────途中、そう言う事がありました。」
ラング達は長椅子の中央で、道中の出来事を話した。
「ガーゴイルの群れですか・・・」
一通りの挨拶を終え、村長のガラムに話を聞いている。
「村長、これだけの魔物が群れで押し寄せるとなると、何も原因が無いとは思えない。心当たりは無いですか?」
ラングは珍しく、神妙な面持ちだ。
「心当たりですか・・・。正直な所、色々話は聞いているのですが全く。」
机を見つめていた村長が、あっと言う表情で続けた。
「関係あるかは分かりませんが、数ヶ月前山の中で光る石を見たと言う話がありました。」
一同は村長を見た。
「何でも、光る石から次々に同じ物が生まれたと。」
「同じ物が!?」
ラング達は顔を見合わせた。
「石を生む石?聞いた事ありませんね。」
メイガンは空を見ながら言った。
「怪しさ大爆発じゃないの!!何でそれを探しに行かないのよ!?」
マリーは身を乗り出している。
「なんせその後すぐに魔物襲撃がありまして。それだけで手一杯なのです。冒険者の戯言と言う者も居ますし。」
村長は汗を拭き拭きしどろもどろになっていた。
「お察しします。いずれにせよ、手掛かりが無い以上行くしかないな。」
ラング達は立ち上がり扉へ向かう。
「いやいや!石があった場所の途中も魔物の群れが確認されております。数十人単位の冒険者が纏まらないと、帰って来れませんよ。」
村長は慌てていたが
「今日は作戦会議しますよ。いざとなれば秘密兵器を出します。」
ラングは軽くウインクして扉を開けた。
帰省で投稿出来なかった(T_T)