ある女性との出会い
僕は婚活がこんなに難しいと思っていなかった。僕は自分の国に戻ってもう少し情報を集めてから婚活を再開しようと考え、自分の国に帰ることにした。。
僕は久しぶりに故郷に帰ってきて安心した。暫くゆっくり過ごそう。
ある日、僕はお城の周りをブラブラと歩いていた。すると、同じくらいの歳の女性が城の周りをウロウロして、たまにお城を覗いていた。これは怪しい、どこかの国のスパイかもしれない。
僕はその女性に声を掛けた。
「この辺りに薬を売っているところを知りませんか。」
その女性は驚いていたが、親切に答えてくれた。
「薬局ですか、この道をまっすぐ行って右に曲がったらありますよ。私の泊まっている宿の近くなので案内しますよ。」
「ありがとうございます。助かります。」
そして僕はこの女性がスパイかどうかを探るために極力自然なかたちで会話を続けた。
特に怪しい感じではなく普通の女性だった。自分が泊まっている宿まで僕に知られて、なんて無防備なんだろう。どうやらスパイではなさそうだ。観光に来た旅行者だろうか。
その日は薬局の前で女性と別れた。
次の日、昨日の女性が何者かつきとめるために宿の前をウロウロしていた。お昼過ぎに昨日の女性と思しき女性が宿から出てきた。ノーメイクで目にクマを作り、髪もボサボサで、パジャマで出てきた。きっと昨日の女性だと思う。
僕は後をつけることにした。
その女性はマーケットに向かった。ちょっと前かがみでお腹を押さえている。そんなにお腹が空いているのだろうか。
彼女の視界に入る距離まで近づき、声を掛けた。そうすると、彼女はバツが悪そうに軽く会釈して立ち去ろうとした。ちょっと怪しいな。こんなボロボロになって何をしているんだ。
僕は更に調査が必要だと思い、彼女を食事に誘うことにした。
「一緒にご飯でも食べに行きませんか。」
彼女はちょっと躊躇していたが、お腹が空いていたのか、渋々同意した。
僕たちはレストランに行ってご飯を食べながら色々話をした。名前はマリアで、家が貧乏だから王子様と結婚するために旅に出たことなど、隠さずに話してくれた。僕のスパイ容疑はすっかり晴れて、マリアの旅の話を聞いてとても楽しかった。
マリアは王子と結婚したいのか。僕が王子であることは隠しておこう。もしマリアがそのことを知って、媚びた態度になったら、僕はいい気がしないだろう。もう媚びた態度の女性はこりごりだ。
そして僕は度々マリアを誘って遊びに行くようになった。彼女はいつも自然体だった。少し気を抜きすぎているときもあったが、一緒にいて心地よかった。
一緒にピクニックに出かけたとき、獣魔に遭遇した。僕が戦おうとしたときに、マリアは先に獣魔と素手で戦っていた。そして、あっさりと倒してしまった。
そしてどや顔で自慢してきた。
「やっつけたよーすごいでしょ?」
「マリアって強いんだね。」
マリアは僕に褒められて、本当にうれしそうに笑った。
僕はその無邪気な笑顔がかわいくて仕方なかった。
何度も会ううちに僕はマリアに惹かれていった。いつも僕たちは笑っていた。こんなに楽しく、気を遣わずに一緒にいられる関係が心地いいとは思っていなかった。
僕はマリアに結婚を前提に交際を申し込もうと考えていた。父と母には良くマリアの話をしていて、紹介しろと言われていた。