メンヘラの姫との出会い
僕はノーマル王国の第2王子、ナチュラル王子という。第2王子といっても第1王子である兄はイケメンで、勉強、剣術、政治力、人望などなど、どれをとっても僕よりも優れている。僕にはどうやっても勝ち目はないので、ほぼ間違いなく兄が王の座に就く。
兄はどこの国の姫にもモテモテで結婚相手に困ることもない。一方、僕に近づいてくる姫はお金目当てか、兄とお近づきになりたいという、やましい気持ちを持っていた。
そこで僕は、結婚相手は自分で探すことを決意し、旅に出ることにした。
メンヘラ王国のドリーミン姫がとてもかわいいという噂を耳にし、その国に入国した。
一応僕は王子なのでドリーミン姫に会うのは簡単だった。お城に通されて、姫にお目通りした。姫はぬいぐるみが大好きという情報を入手し、僕は特大サイズのうさぎのぬいぐるみを用意した。どうやら姫はぬいぐるみも僕も気に入ったようで、お付き合いをすることになった。
ドリーミン姫はまるで人形のようにかわいい顔をしていた。肌は透き通るように白く、小柄で華奢だった。僕も最初は夢中になった。いろいろな所に行ったし、欲しいものは買ってあげた。連絡もまめにとり、片時も離れたくなかった。
ある時、カップルに人気の公園でデートをしていた。僕は特に悪気なく
「ドリーミン姫、ちょっと太った?」
と聞いた。
姫はそれを聞いた途端、顔が険しくなっていった。そして挙句の果てに泣き出した。
「私、太りましたか。もう魅力がなくなったから別れたいとおっしゃるのですか。」
「いや、そんなつもりは・・・」
「そうなんですね。もう私、あなた無しでは生きていけない。いっそのこと死んでやるー。」
と言って、公園の噴水に飛び込もうとした。
「そんなことないよ。愛してるよ。」
僕は必死に止めた。
「死んでやるー死んでやるー」
と大きい声で叫ぶので、大勢のやじ馬が集まってきていた。
「愛してるよー愛してるよー」
と恥ずかしさを隠してひたすら叫び、何とか姫を落ち着かせた。
それから度々こんな事件が起こった。
僕は少し怖くなっていたが、なんとか付き合っていた。
ある時、姫が僕にポエムを作ったので聞いてほしいと言った。僕は内心ポエムとか怖いと思ったが、姫のメンタルを傷つけてはいけないと思い、喜んでいるふりをした。
「愛しの君へ
その目で他の女を見ないために君の面玉をえぐってペンダントにしたい。
その耳で他の女の誘いを聞かないように耳を引きちぎってイヤリングにしたい。
その口で他の女と口づけをしないように唇を取り除いて髪飾りにしたい。
君がどこかへ行ってしまわないように君の血を一滴残らず飲み干したい。」
怖い、怖い、怖い、怖い、怖すぎる
殺される、殺される、殺される、殺される、殺されるーーー
耳をイヤリングにするってどういう状況?耳4つ?
別れ話をしても刺されるし、結婚してもいずれ刺される。
僕は恐ろしくなって、夜逃げのようにこの国を後にした。