9
放課後になってもまだ雨は降っていた。
文芸部の部室で僕は小説を書いていた。部屋には僕しかいない。
なんだかこうして過ごしているのがとても居心地がよかった。僕は文芸部に所属しているのが、とても自分に合っている気がした。
しばらくして、早井先輩と小梨先輩が部屋に入ってきた。小梨先輩はこの高校の二年生の男子生徒で、とても読書家である。
「今日は佐々木しか来てないのか」
小梨先輩はそう言って机に座った。
「どう? 文芸部には馴染めた?」
早井先輩はペットボトルのジュースを飲みながら僕に言った。
「馴染めました。とても居心地がいいです」
「それはよかったな」
小梨先輩はそう言って笑った。
それからしばらく三人で小説を書いていた。吹奏楽部の演奏が響いている。今日は雨が降っているからグラウンドから声は聞こえない。
結局その日は玲奈は部室に来なかった。何か用事があったのだろうか。
外が暗くなる頃に僕は部室を後にした。
「じゃあ、また来週」
早井先輩は僕にそう言った。
僕は部室を出て、廊下を歩いた。窓の外の雨はもう止んでいた。
下駄箱に着いた時、玲奈の姿があった。そして隣にはバスケットボールの服を着ている一人の男子生徒の姿があった。僕より背が高くて、顔はかっこよかった。
「あ、圭介」
玲奈は僕に気づいた。