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季節は春から夏へ移り変わろうとしていた。教室の窓の外には雨が降っている。
休み時間になると、廊下の外に玲奈が待っていた。
「圭介。昼休み部室で待ってる」
玲奈はそう言って微笑んだ。
文芸部に入ってから僕らは親しくなった。初めの頃は少し冷たかったが、徐々に仲良くなってきた。
昼休みになると、僕は部室に行った。
玲奈は手作りのお弁当を食べている。僕は弁当屋で買った海苔弁当を手に持っていた。
「毎日同じ弁当で飽きないの?」
「飽きないよ。海苔弁当はおいしいんだ」
僕と玲奈はテーブルに向き合って座り、弁当を食べた。僕はなんだかこの日常に満足していた。
ふと中学生の頃のことを思い出した。あの頃はなんだか憂鬱だったなと思う。
窓の外では雷が鳴り始めた。雨粒が窓に打ち付ける。外は昼間なのに暗くなっていた。
「今日も雨だね」
玲奈はそう言って、ペットボトルのお茶を飲んだ。
「もうじき梅雨も終わると思うんだけどね」
「ねえ、文化祭で短編集を出すんだって」
「へえ」
「なんだか楽しみだな。私たち結構小説を書いてきたじゃない」
「今年は文学賞に送るの?」
「今、書いてるとこ。夏に一本送ろうと思ってね」
玲奈と話をしているうちにあっという間に昼休みは終わった。