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「なかなか上手い」
玲奈がそう言ったので、僕は安心した。
窓の外は夕暮れになっている。オレンジ色の太陽の光が世界を照らしていた。
僕らは部室を後にした。早井先輩は「絶対、文芸部に入ってね」と別れ際に言った。
僕と玲奈は二人で人のいない廊下を歩いていた。
「圭介君はいつから小説を書いていたの?」
「小学校の四年生の時。図書館で小説を探している時にふと書いてみようと思ったんだ」
「私は中学校一年生の時。読書感想文が褒められたのがきっかけ」
コツコツと廊下に僕らの足音が響いた。僕らは並んで階段を下りて、下駄箱で靴を履き替えた。
「文学賞の一次選考に通過したことがあるんだって?」
「純文学の新人賞に中学校三年生の夏に応募したの」
「それはすごいな」
グランドの横のアスファルトの道を歩いて行った。ちょうど野球部が片付けをしているところだった。一宮高校は進学校だったが、特に強い部活があるわけではなかった。
僕と玲奈は校門を通り過ぎて、駅へ向かって歩いているところだった。住宅街の道はどこか懐かしい感じがした。
「文芸部に入るの?」と玲奈は聞いた。
「雰囲気も悪くない感じだし、他に入りたい部活もないし、入るつもりだよ」
「そう。私も入るつもりよ」
僕と玲奈は駅で別れた。第一印象は怖かったけれど、今はそうでもない気がした。