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目が覚めると、鳥の鳴き声が聞こえた。季節は春で、今日から新学期が始まる。
僕は制服に腕を通した。まだ新しい服の匂いがする。
今日から高校一年生。今年の冬に受験した一宮高校に通うことになった。
一宮高校は都立の進学校だった。東京の郊外にひっそりと建っている。
中学生の頃は、それなり勉強ができた。でも僕は途中で野球部を辞めてしまった。
野球部を辞めてから、僕は多くの時間を本を読んで過ごした。
友達とは少し距離ができてしまったし、もともと内気な性格もあった。
制服のボタンを全て閉めた僕は、鞄の中を確認した。
入学式は先週の金曜日だった。今日は月曜日だ。初めての授業が始まる。
鞄の中身を確認した僕は、部屋から出て、階段を下りていく。
「おはよう」と僕は母親に挨拶した。
「時間は大丈夫?」
「うん。全然余裕」
僕は食卓に並んだ、焼き鮭やごはんや味噌汁や目玉焼きを食べた。
頭の中に音楽が鳴り響く。それは僕が中学生の時に聞いていた曲だった。
辛い時にその曲を聴いた。
中学生の時、僕は少しだけ孤独だった。だから本も読んだし、音楽も聴いた。
朝食を食べ終えると、僕は玄関で靴を履いた。
母親が僕に笑顔で「いってらっしゃい」と言った。
僕は玄関の扉を開けた。