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敵キャラで埋め尽くされた世界を攻略するぜ


 久しぶりにメタリボの地を踏んだプレイヤーを迎える予想外の仕打ちに呆然とした俺だったが、やがて気を取り直すと、死亡後でも開くことのできるイベントリをチェックし始めた。


 あー、そうだった、そうだった。こんなだった。


 実際に画面を見て初めて思い出すことも多い。


「だったなー。籠手(こて)だけ強化一段階低いままだったわ」


 少し覗いただけで、そんなことまで思い出せていた。

 そして気を取り直して自キャラを復活させるため再スタートする。


 画面が切り替わり別の場所。

 死亡後にリスタートする神殿が表示された。

 そして次の瞬間、ガッガッガッとHPのバーが赤く削れ始める。


 えっ、えっ、えっ!?


 慌てて操作しようとするも自キャラは全く動かせない。

 僅か三秒ほどで再びHPはゼロに。

 自キャラの死亡グラフィックが出た後で、画面に遅れて敵キャラが表示された。

 先ほどと同じ、画面全体を埋め尽くす大群だった。


 復活地点までかよ……。


 七年ぶりぐらいにログインする、ほとんど興味をなくしていたゲームだというのに、俺の中には、たった今失われた二回分のデスペナを惜しむ気持ちが芽生えていた。

 一体これで何十時間分の経験値が失われたのだろうか。

 GMコールをするか?

 一瞬その考えが頭を(よぎ)ったが、何となくそれが躊躇(ためら)われたのは、このゲームを夢中で遊んでいた当時の感情が、既に俺の頭の中に宿って(インストール)いたからだ。

 当時、大き過ぎるデスペナに耐えきれなかったプレイヤーは、死亡する度、仕様の不備を訴えてワールドの全体チャットでよく(わめ)いていた。

 日常的に飛び交うその悲鳴のようなログを見て俺は、そんなの自己責任だろ、恥ずかしい奴、とその行いを嫌悪していたものだ。


 これがゲームである以上、どんな理不尽に見えることも自力でなんとかすべき。

 それが俺の持論だった。


 とは言え、だ。

 今のこの状況は酷い。

 率直に言って詰んでいる。

 何故だか知らないが、今、復活ポイントにはモンスターの大群がいて、このままでは何度復活しても同じように死ぬだけであることが察せられた。

 俺がプレイしていた当時から、街中までモンスターが侵攻してくる事態は度々発生していたので、それ自体は珍しくない。

 問題はその数が尋常ならざるものであり、そして多分、このまま待っていてもその状況が改善する見込みはないということだった。


 考えた末に俺は一旦ゲームをログアウトした。

 そして、改めてログインし、ワールド選択画面に戻る。


 この世界はもう駄目だ。


 モンスターに侵略されてしまった破滅後の世界なのだと割り切った。

 多分、過疎過ぎて味方NPCの防衛網が突破、というか壊滅してしまったに違いない。

 適宜プレイヤーが防衛費を入金してやらないと、城や村の自衛NPC戦力は徐々に減衰していく仕様だったことを思い出す。

 俺たちがログインしなくなり、放置した結果、あの世界は滅んでしまったというわけだ。


 少し(しゃく)だが、そういうゲームなのだと気持ちを切り替える。

 勝てない勝負を何度挑んでも無駄だ。

 それより、まだ人がいるサーバーを探した方がいい。

 何せ、俺の目的は、メタリボを遊んでいるかも知れないアカネと会うことなんだから。


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