第十五話.魔王の所以 ーー露天風呂ーー
本作のタイトルを『魔王の頁 ーーページーー ~~魔王の終わり無き旅路~~』に変更いたしました。
また、それに合わせて、あらすじも少し修正を入れております。
夜月達は、温泉から上がり、夕飯も食べて、それぞれの部屋に戻った。
「夕飯、美味しかったな!」
「えぇ、ユウリ達の家で食べるご飯とは、また違った美味しさがあったわね」
家庭料理とは違い、旅館で出る料理は割烹料理だ。エレナにとっては、どれもこれもが、見たことの無い、食べたことの無い料理だった。見た目も綺麗で、見るだけでも楽しめ、味も美味しく、ついつい食べ過ぎてしまった。
「さて、夕飯も食ったし、備え付けの露天風呂入るか」
「ん! 大浴場の露天風呂とはまた違うから楽しみ!」
「そうね。そうしましょうか」
夜月と優凛は、当たり前のように言う。エレナは、少しだけ頬を赤く染め、頷いた。
みんな、先程、温泉に入った時に、部屋備え付けの浴衣を着ているので、備え付けの露天風呂にはそのまま行く。
脱衣所で浴衣を脱いだ三人は、いよいよ露天風呂に入る。もちろん温泉なので、タオルは巻いていないが、夜月と優凛は慣れているので堂々としているが、エレナは恥ずかしすぎて、手で隠そうとしている。
「こ、これ、恥ずかしすぎるわ……」
「そうか?」
「ん、エレナ。今恥ずかしがっても、どうせ後で体を重ねるんだから」
「っ!?」
その言葉は予想できていなかった。優凛のその言葉にエレナの顔がボッと赤くなる。このまま温泉につかれば、のぼせそうな勢いで顔が赤くなっている。もう何回か体を重ねているが、エレナは根本的にそういう話に耐性がないのだ。
そんなエレナを置いて、夜月と優凛は先に温泉につかった。
備え付けの露天風呂には、大浴場のように植えられた木などの風景は無く、上空の満点の星空のみだ。この星空は、大浴場のように、光があまり無い為、こちらの方が綺麗に見える。
「大浴場より、こっちの方がいいな。趣がある」
「だな。星空が綺麗だぞ!」
大浴場の露天風呂とは、また違った趣がある。
と、そこになんとか平常心を取り戻したエレナが入って来た。もう、覚悟が決まったのか、先程のように体を隠したりせず、生まれたままの姿で堂々と温泉につかった。こういう時のエレナの切り替えの速さは素早い。
「そうね」
エレナが入って来たところで、夜月がニヤッと笑う。
「んじゃ、酒盛りでもするか」
先程、大浴場の露天風呂ではできなかった酒盛り。でも、ここは部屋備え付けの露天風呂だ。酒盛りをしても誰にも咎められることはない。なので、夜月は湯の上に、お酒とお猪口と、それらを置く桶を出した。お酒は、先日購入した日本酒だ。
「それはいいな!」
「いいわね。こっちのお酒は初めてだから、楽しみだわ」
夜月が、優凛とエレナが持ったお猪口に日本酒を注いでいく。そして、自分のお猪口にも注ぐと、乾杯する。
「日本酒、やっぱ美味いな」
「ん、飲むのは二回目だけど美味しいな」
夜月と優凛が日本酒を初めて飲んだのは先日だ。強いて言うなら、優凛はその時初めてお酒を飲んだ。日本酒は、美味しかったらしい。今も、美味しそうに飲んでいる。みんなお酒を飲んでいるから、顔を赤らめている。そして、お酒も回って来たところで、だんだんと口が開いてくる。
「この旅行が終わったら、次は何をするんだ?」
優凛達は、学校を辞めている。この温泉旅行は十泊であり、それが終わった後、何をするのかが気になるようだ。
「そうだな、まずは伊勢神宮に行く。確かめたいことがあるからな」
「確かめたいこと?」
「あぁ。この地球にも、どうやら魔力が存在するようだ。神宮に行って、神の魔力の残滓を確認しないとな」
「えぇ。それに、どうやら魔力以外にも、日本という場所には、不思議な力がありそうね」
そう、夜月達は地球に帰って来て早々、地球にも魔力の存在があるということを確認していた。神の存在を調べると言ったのも、そういう背景があるからだ。
エレナが言った不思議な力。日本古来からの歴史やその背景から考えても、霊気、妖気と呼ばれる力だろう。まだ、憶測の段階だが、そう間違ってはいないはずだ。夜月達が調べようと思ったら、この数日で調べることもできた。だが、この世界は、魔法などは空想上の存在だ。それを調べて暴走や世間に知られることになると大事だ。そんな事態になれば、日本政府、果てには世界各国がその力を欲しがるだろう。夜月にとってそれは望ましくなかったのだ。
「まぁ、ここは露天風呂だ。そんな話じゃ無くて、穏やかなものを話そうか」
「だな。ん~っ……ここではのんびりごろごろしたいからな」
「そうね」
少し真面目な話になりかけた空気を夜月が穏やかな流れに戻す。優凛やエレナもそれに乗っかる。せっかくの温泉だ。ここでは、誰もが静かに過ごしたいのだ。
「そうだ! 今度、三人で日本酒の飲み比べをしないか?」
「あら、いいわね。それは」
優凛はどうやら、今日飲んだ日本酒がお気に召したらしい。初めてお酒を飲んだ時は、慣れていなかったのか、直ぐに酔ったが、元々は強いらしい。エレナも同様、ほんのりとした微笑を浮かべながら、美味しそうに飲んでいる。
「日本酒は向こうの酒とは違うな。こっちのが美味い」
「そうなのか? 前に飲んだお酒は美味しかったんだが」
「あぁ、あれは超がつく程の高級品だからな。こっちの酒は安くても美味いんだ」
「そうなのか。まぁ、私もこっちの方が味的にも好きだな」
夜月と優凛がそんな話をしている中、エレナはずっと黙っていた。優凛が気になって見ると、エレナは微笑みを浮かべて、ずっとニコニコしている。どうやらエレナは、微笑み上戸らしい。夜月は知っていたが。エレナは、お酒に弱いのだ。まぁ、お酒に酔っても、お酒をちょびちょび飲みながら、ずっと微笑んでいるだけだ。
「なんか、少し幼く見えてかわいいな」
そんなことを言われると、エレナは、酔っているだけで、周りの言葉には反応するので、普段よりかわいく照れた。それが、優凛のツボにはまったらしい。エレナにくっつき、もっとかわいい反応を引き出そうとしている。夜月も、別に不都合はないし、好きになった女だ。エレナのかわいい反応も見たい。
優凛が、エレナの脇腹やお腹を突っつく。
「…………ひぁん!」
エレナがかわいらしい声を漏らす。この天性のかわいらしさに興奮した優凛は、もっともっとと、どんどん突っついていく。夜月は、そう言う反応は、優凛で見慣れているのであまり興奮はしなかったが、お酒を飲みながらのほほんと鑑賞していた。
そんなこんなで、お酒を飲み始めて数十分、夜月がそろそろ上がるかと言う。そろそろ、温泉の熱で、体にお酒が回ってくる頃だ。のぼせたら危ないのでここらへんで上がることにする。
「そろそろ上がるか。お酒が入ったままのぼせたら危ないからな」
「ん、そうだな。エレナは、夜月が運んでくれ」
「あぁ」
露天風呂から上がり、夜月は抱っこしているエレナを優しく椅子に座らせる。そして、優凛と布団を敷く。
優凛は、エレナの酔いを少しでも覚ます為に、机に置いてあるポットから冷たい水をコップに注ぎ、エレナに渡す。
「はい、エレナ。これ飲んで」
エレナは、優凛から渡された水を素直に飲み干す。それで、少しは酔いが覚めたのか、まともに話すようになった。
「ありがとう、ユウリ」
「ん、当然のこと」
エレナは、何かから視線を逸らすようにしながら優凛と話している。だが、視線をチラチラと向けている為、気になっていることは丸分かりだ。優凛も、生暖かい目でエレナを見ている。
エレナのその視線にあるもの。そう、我らが魔王様、夜月だ。まぁ、夜月は何をするでも無く、敷き終わった布団の上で寝転がっているだけだが。
エレナは、夜月に裸を見られたという羞恥心がぶり返してきていた。お酒で、羞恥心が麻痺していたのと、優凛のいたずらもあり、夜月に大胆に見られたことが、酔いが少し覚め、恥ずかしくなったのだ。
「早く、こっち来いよ」
夜月が、自分の隣をポンポンと叩きながら言う。その意味が分からない程、エレナも鈍くはない。
だが、分かるからといって、恥ずかしさが消える訳ではない。エレナの顔は、恥ずかしさで、より一層赤くなった。
「ん、行こ?」
「…………えぇ」
エレナは、おずおずとしながらも、夜月の隣に移動した。勿論、優凛も付いていく。
そうして、三人は体を重ね合わせていった。
勿論、次の日は寝不足になった。
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次話、急展開!!




