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第十三話.魔王の所以 ーー熱海温泉旅館ーー




「中々、趣きのある旅館だな!」


 まさに、日本の正当な旅館を前にして、優凛の目は輝き、テンションは爆上がりだ。優凛は、昔からザ・日本! といったものが大好きだった。家には、ちゃんとした着物も何着かある。その趣味につられて、夜月もザ・日本といった物は好きだ。


 旅館『富士の里』は、明治から続く、老舗旅館であり、日本では結構有名な旅館だ。一泊三万はする。


 夜月達は、チェックインする為に、荷物を持ち、旅館の中に入っていく。

 旅館内の休憩スペースを見ると、この旅館に泊まっている宿泊客が結構いた。中には、外国人もいるようだ。

 夜月は、受付に行き、チェックインを済ませる。こういう時の対応は大体夜月がする。家族の中で、唯一の男性だからだ。


「今日、予約していた神谷なんだが」


「神谷様ですね。ようこそおいで下さいました、旅館『富士の里』へ」


 旅館なので、中居さんが、お出迎えしてくれた。チェックインを済ませ、中居さんの案内で、部屋に案内される。今回は、二人部屋を二つに三人部屋を一つ予約している。部屋割りとしては、朱里と蒼花、エルティカインとセレナ、夜月と優凛とエレナだ。全員がカップル同士である。


「こちらの三部屋が予約されたお部屋になります。お茶などは、机の上に置いてありますので、ご自由にお飲み下さい。また、何かあれば、一階の受付の者に伝えて下さい。では、ごゆっくりしていってください」


 夜月達は、まず、その手に持った荷物を置く為に、それぞれの部屋に入る。


「風情のあるいい部屋だな」


「だな。流石、有名な老舗旅館というだけはある」


 八畳の畳の部屋。真ん中には、高級そうな木の机が設置されており、座椅子も用意されている。また、窓際には、小さな机と椅子が置かれており、そこで休憩したり、外の風景を楽しめるようになっている。


「私には、そういうのは分からないけど……この部屋にいると何だか落ち着くわね」


 エレナも旅館の部屋が気に入ったようだ。畳から仄かに香る優しい草の香り、そして、暖かく彩られた部屋の内装に机などの配置。


 エレナが、かつて異世界で祀られていた宗教の神殿などは、機能美や煌びやかさをこれでもかと追求した、ゴテゴテとした気持ち悪い空間だったのだ。それに比べ、夜月達の家やこの旅館の部屋は暖かみがあり心が落ち着くのも普通だろう。日本人でさえ、この旅館の和室は心安らぐのだから。


「よし、荷物も置き終わったし、みんなと合流して、昼飯食いに行くか」


「ん、屋台巡り楽しみ!」


 熱海の温泉街には、軽食を取れるような屋台が所狭しと並んでいるのだ。今日の昼食は、そこで食べるようだ。



 数分後、全員集まった夜月達は、観光兼昼食目的で温泉街に繰り出した。温泉街には、様々な源泉が流れており、白い湯気がそこら中に立ち昇っている。観光客の中には、旅館備え付けかレンタルした浴衣を着て、温泉街を散策している人達もいる。夜月達も浴衣を着ようと思っていたが、初日は軽く見て回るだけなので、それは後日に回したようだ。


「温泉卵もあるのね」


「温泉卵は美味しいわよね~」


 朱里と蒼花は、昔、高校の卒業旅行で熱海の温泉に旅行に来ていたのだ。二人も、和が大好きであり、昔から温泉巡りなどが好きだったのだ。優凛や夜月が、和を好きなのも朱里達の影響である。


 二人は、その時に、この温泉街の名物の温泉卵を食べたのだ。今になっても、忘れられないくらい、美味しかったらしい。


 みんな、それぞれ一つずつ購入し、温泉卵を食べる。


「これ、美味しいな!」


「あぁ、美味いな」


 他にも、色々な屋台を巡り、串焼きやたこ焼きなど、屋台の定番メニューを食べ歩いた。エルティカイン達異世界勢は、たこ焼きやお好み焼きなど、目にしたことの無い、目新しい食べ物に興味を引かれ、お腹が満パンになるほど食べていた。


 夜月達も、久しぶりの温泉旅行ということだが、初めての温泉街でその光景を楽しみながら、屋台特有の食べ物を食べながら観光していた。


 そして、それぞれが、軽く温泉街の観光を満喫したところで、宿泊する旅館に戻った。



「夕飯を食べる前に大浴場に入ろうか」


 夜月達は、朱里の言葉に頷き、着替えを取る為に、それぞれの部屋に入っていく。


「ねぇ」


「どうした?」


「ん?」


「私が同じ部屋で本当に良かったの?」


 エレナが、夜月と優凛と同じ部屋なのは、前日から知っていた。その時は、夜月と同じ部屋ということで浮かれていたが、今になって、不安になってきたらしい。


「あぁ、優凛もなんつーか……ハーレム思考だし、俺もエレナのことは好きだからな。それはもう、示してるだろ」


「ん」


 優凛は、ハーレムを心から推奨しているが、別に夜月を好きになった人でも、誰でもいいという訳では無い。明確な理由があり、心の芯をを持って、夜月のことが好きだと言う人だけだ。優凛が、夜月のハーレムにいれる女性は。それは、優凛と夜月が判断する。だが、夜月の判断はいいのでそこで終わると思うが。


 エレナは、明確な理由もある。それに、明言はしていないが、彼女の言葉の端々、行動から、夜月に助けてもらった。だから、私は、ヨヅキの支え、助けになりたいという思いが見えた。このことから、優凛は、エレナのことを夜月のハーレムとして認めているのだ。


「そう、ありがとう。優凛さん、私のことは、これからエレナでいいわよ」


「ん、なら私のことも優凛でいいぞ」


「なら、三人の恋仲としての仲を深める為に、夜は三人で温泉入るか」


「……エッ!?!?!?」


 エレナが素っ頓狂な叫び声を上げる。


 大浴場の他に、部屋に備え付けられている、風情のある露天風呂に入ることができるようになっている。


 夜月は、そんな爆弾発言を残しながら。優凛は当然と言った顔をしながら。エレナは真っ赤になった顔を少し俯かせながら。他のみんなと、大浴場に行く為に合流した。







お読み頂きありがとうございます。

また、誤字や文がおかしいということなどがあれば報告してもらえるとありがたいです。

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