第十話.最強の帰還 ーー出発前日ーー
夜月達は、少し遠出した場所にある車センターに来ていた。
ここでは、七人以上乗ることのできるミニバン型乗用車と母親達に送る少しいい車、夜月と優凛の個人用の車、大型バイク、魔法実験用車二台の計八台を買うことになっている。
「いらっしゃいませ」
お店に入ると、店員さんから挨拶をされる。
そして、夜月達は、店員さんに席に案内される。
「本日は、どの様なご用件でご来店されたのでしょうか」
「あぁ、今日は車を七台、大型バイクを一台買おうと思っている」
「それは……誠にありがとうございます。それで、どの様な車種をお望みでしょうか?」
店員さんは、夜月の言葉に驚いていた。それはそうだろう。一気に、車、バイクを八台も買う人はいないのだから。だが、商人魂故か、直ぐに持ち直し、夜月が買いたい車の種類を詳しく聞こうとしている。
「あぁ、七人以上乗れるミニバン型乗用車と機能のいい車四台に普通車を二台、そして、大型バイクが一台欲しい」
「七人か八人乗りのミニバン型乗用車、機能のいい車四台、普通車を二台、大型バイクが一台ですね。かしこまりました。少々お待ち下さい。車とバイクの一覧を持って来ますので」
店員さんは、車とバイクの一覧表を取りに店の奥に入って行き、数十秒で戻って来た。
「お待たせしました。こちらが車の一覧で、こちらがバイクの一覧でございます」
店員さんが、車とバイクの一覧を持って来た。
夜月と優凛は、家で買う車は全て隅から隅まで調べているので、直ぐに決まった。試乗はミニバン型乗用車だけと決めている。時間が勿体無いし、不都合があれば魔法でちょちょいと直せばいいのだ。
ミニバン型乗用車だけ試乗するのは、家族全員で乗る為、安全の万全を期す為だ。
「では、こちらにミニバン型乗用車をご用意しておりますので」
「みんな、行くぞ」
「「「「おう(あぁ)(えぇ)」」」」
夜月の運転で、ミニバン型乗用車の試乗をする。
車内では、みんなで話しながら運転していたので、店員さんは滅茶苦茶居心地悪そうにしていた。
そして、数十分試乗した後、車センターに帰って来た。
「これは、いい車だな」
「ん、よかったな」
「ありがとうございます」
夜月は、ミニバン型乗用車の白色と機能性のある車の白色とクリーム色、普通車のクリーム色と黒色、白色二台、大型バイクの黒色の購入を決めた。
「この八台で頼む」
「かしこまりました。では、代金が二千三百二十六万五千七百円となります」
「あぁ、分かった」
夜月は、肩に掛けていた鞄から、三千万円を取り出した。店員さんは、ギョッとしている。普通、そんな大金を持ち歩くことはしない。というか、こんな若い子達がこんな大金を持っていることにも驚いているし、実に軽〜い感じでポンと出しているのにも驚いている。
「……ご確認致します。…………ご確認致しました。三千万円、確かにお預かり致しました。それでは、車の保証書等をご用意して来ますので少々お待ち下さい」
店員さんは、少し茫然自失状態になっているが、長年の経験のせいか、その状態でもちゃんとした対応をしていた。
数分して、車の保証書と領収書を持って、戻って来た。
「……お待たせしました。こちらが車七台とバイク一台の保証書と領収書でございます。車は、どう致しますか?」
「あぁ、今日持って帰らせて貰う。大丈夫だろう?」
「えぇ、大丈夫でございます」
エルティカイン達三人の免許証は偽造して作っており、それを信じる魔法も掛けてあるのだ。なので、車七台を即日持って帰ることも可能なのだ。バイクは、『ヴェライ』に入れて持って帰るが。
夜月達は、店員に案内されながら、買った車の場所まで案内される。
「では、こちらがご購入された車でございます。そして、こちらが車とバイクの鍵になります」
「あぁ」
店員さんに鍵を渡された夜月は、一つづつみんなに配る。
「本日は、本店をご来店頂きありがとうございました」
店員さんに、挨拶をされながら、夜月達は車に乗って、車センターを出て行った。
そして、人通りの少ない場所に移動すると、ミニバン型乗用車以外の車を夜月の異空間に収納した。こんなに多くの車を置く車庫も無いし、駐車場を借りるのもお金が相応にかかるからだ。
夜月達は、夕飯直前に家に帰って来た。
「あ、お帰り。今日は、グラタンよ〜」
「あぁ、ただいま、蒼花さん」
「ただいま、お母さん」
「「「ただいま」」」
五人は、洗面所で手を洗い、それぞれの部屋に戻って、外行きの服から着替える。
十数分後、みんなはリビングで食を囲っていた。今日の夕飯は、マカロニグラタンの様だ。夜月の大好物だ。夜月は、どこかの美食家の様に味わいながら食べている。
「うん、やっぱり母さんのグラタンは一番うまいな。他の料理もうまいが、グラタンが一番だ」
「ふふ、ありがとね」
朱里は、のほほんとした大人の笑みを浮かべた。
「これは……美味しいですね」
「このグラタンという料理は美味しいわね」
「美味しいです」
マカロニグラタンは、異世界勢にも好評の様だ。
「それで、車はどうなったの?」
「あぁ、車は計七台、バイクを一台買った。母さん達にも買ったからな」
「あら、ありがとう。大切に使わせてもらうね」
「ありがと、夜君。私も大切に使わせてもらうわね」
二人共、息子からの大きな贈り物に嬉しそうにしている。
そして、話は明日からの熱海温泉旅行の話になっていく。
「明日から、温泉旅行だけど、みんな準備できた?」
蒼花が、明日からの旅行に行く為の準備が終わっているのかを聞く。ちなみに、旅行の予約は魔法でちょちょいのちょいだ。
「あぁ、俺は終わってるぞ」
「私も準備万端だ!」
「俺も大丈夫だよ」
「私も」
「私もです」
みんな大丈夫だようだ。
明日は、朝七時に家を出て、熱海温泉に向かう予定だ。
「明日は楽しみね〜」
「そうね、みんなで遠出するのなんていつぶりかな」
「ま、母さん達も久しぶりにゆっくりしてくれよ」
「ん、お母さん達はゆっくりしてほしい」
朱里と蒼花は、息子と娘の気遣いにとても嬉しそうな表情を浮かべた。二人は、子供が親思いな子達に育ってくれてとても嬉しい思いをしている。
「異世界での旅行は楽しみだね」
「そうですね。楽しみたいです」
「富士麓テーマパークっていうところ楽しみね!」
エルティカイン達異世界勢も、楽しみな様だ。異世界で初の旅行だ。エルティカイン達からすれば、日本は未知の世界と同等だ。興奮しても仕方がない。
「日本には旅館っていう宿泊施設もあるからね。温泉と同じ様に風情もあるのよ」
「へぇ、そうなんですか。楽しみですね」
「それは、ぜひ早く見てみたいですね」
そうして、各々、明日への興奮を滲ませながら、夜は更けていった。
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