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また夢の中で  作者: 利根川渡
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船井事務所の忘年会

 夢で船井幸雄さんに会った。一応解説しておくが、船井さんというのはすでにお亡くなりになっている著名な経営コンサルタントで、スピリチュアルな内容の著作もたくさんある方だ。当然僕はお会いしたことなどない。

 夢の中では12月29日くらいで、僕は船井さんの事務所の忘年会に参加させてもらっている。企業の社長さんのような方がたくさん出席しているが、なぜか僕は船井さんに気に入られていて、座敷で船井さんの隣りに座らせてもらっている。僕は船井さんと会うのは初めてで、船井さんは直々に不思議な話を色々してくださる。

 その中のひとつ、ビールのグラスを手にして船井さんが唇をつけ、グラスの縁を指でトントンとつつくと、グラスに満杯だったビールが一度8分目くらいまで減り、また元の高さまで戻ってグラスの底から泡が湧き上がってきた。周りで見ていた人からどよめきが起こり、船井さんは「こんなことできても何の役にも立たないんだけどね」と、さりげなく、しかし自慢気に言った。

 僕はおそらく20代くらいの若者で、船井さんとか周りの社長さんのような年配の方には、こんな時には大袈裟なくらい驚いた方が心象がいいだろうなと、計算高い気持ちから、オーバーリアクションで驚いてみせたが、確かにすごいことだと内心でも思っていた。

「実はこんなことができるのはこれのおかげなんだよね」と、船井さんは白髪交じりの頭髪をかき分けて、頭皮から生えている、幼児の指くらいの大きさの突起物を見せてくれた。

 まずこれがおかしい。船井さんは見事な禿げ頭でどこにも髪などないはずだ。ところが近くで見ると、小泉純一郎元総理のような、フサフサの白髪交じりの髪が生えているのである。僕はそれを見て、「船井さんってやっぱり鬼だったのか」と、妙に納得したような気持ちになった。

 船井さんが更に髪をかき分けると別の場所には、若い女性のような細くて長い指が三本生えていて、それらの指は根元から、赤いペンキのようなもので指も爪も塗られていた。

 その指は何か魔力のようなものを出すアンテナのように見えた。あるいは何かの電波を受信しているのかもしれない。「ああ赤鬼だったのか」と僕は思ったのだが、ちょっとグロテスクだなとも思い、恐怖のようなものを感じた。「やはり世の中で成功している人はこんなに普通の人とは違う人なんだな」と、納得したのだが少し怖くもなった。

 船井さんはある人に会いに行こうと言って席を立ったが、その人こそ船井さんの不思議な力の源になっている人に違いないと思い、僕もついていくことにした。二階の広いお座敷で行われている大宴会の隅を通り抜けて一階に降りる。

 僕は足元が少しフラついていて船井さんを見失ってしまう。でも料亭の出入り口で待っていれば、船井さんに会えるだろうと思っていた。そこには公衆電話があったので、実家の両親と息子のハルに、「今日は帰れそうにない」と連絡しておこうと思った。

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