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また夢の中で  作者: 利根川渡
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自分の前世への反省

時々見る夢のストーリーは、

学園祭みたいなことが行われている場所に、

何かの悪意を持った団体のようなものがテロのようなものをしかけてきていて、

それはひっそりと、誰にも気づかれないように行われているのだが、

何かのきっかけで僕はそのことに気付いてしまい、

僕がその団体から命を狙われるというようなストーリーである。


場所や人物などの細かい設定は毎回微妙に違うのだが、

ほぼ同じようなあらすじの夢を30年以上前から時々見ていて、

見る度に改めて恐怖を感じる。


そして今朝早く、数年振りにこのパターンの夢を見たのだが、

今回の恐怖感が最強だったなと(実はこれは毎回思うことなのだが)

今朝も目が覚めたベッドの上でしみじみ思った。


ストーリーは毎回ほぼ同じで、

僕は特に危害を加えられるわけでもなく、

ただ、ジワジワと追い詰められていくだけなのだが、

追い詰められた先に待っているのは死であり、

それもただ殺されるのではなく、

酷い拷問を受けたりして、苦しみに苦しみ抜いてその挙句に惨殺されるのである。それは確実にそう決まっている。相手はそれほどの極悪非道な組織なのである。

 ネット上で、コロンビアの麻薬戦争で組織からの報復として、後ろ手に縛られて、顔の皮をペロッと一枚剥がされ、赤いマスクを被っているような顔で死んでいる男たちの写真を見たことがあるが、あれくらいのことでは済まされない。僕はそのことを知っている。

 なぜ「知って」いるのだろうか?このリアリティーは何なのか?いつも目覚めた時にはそれが本当にあったこととしか思えない。夢で本当に良かったと思う。そしていつかは夢ではなくなって、そちらの世界こそが本当の世界になってしまうのではないかとさえ思う。

 何年もこの夢に苦しんで、僕は、人間には、「前世」というものがあるのではないだろうかと思うようになった。前世の記憶が潜在意識の奥底に残っていて、その中の恐怖心が、こんな夢になって僕に何かを訴えかけているのではないかと思った。

 それは最初は仮説のひとつに過ぎなかったが、20年ほど前、人間には前世があると言う人に出会って実際に僕の前世を教えてもらい、僕はある宗教団体にいて、それもかなり上の方の幹部で、その団体の後継者争いの時に、対立する候補から暗殺されていると言われたのである。

 それを聞いて、なるほど、そう説明されれば納得できる。と僕は思った。そしてその説明以外では、僕の不安を解決することはできなかったのである。その後に見た夢の中で、僕は実際に殺された。相手側の放った刺客はよく訓練された猿で、学園祭の雑踏の中、人々の足元をスルスルと擦り抜けて僕の足元までたどりつき、僕の足の甲に毒針を刺した。僕は足の先からジワジワと痺れはじめ「救急車を呼んでくれ」と叫んだが、その学校は山の奥にあり、救急車では間に合わないと思った。「ヘリだ、ヘリを手配しろ」と部下に指示を出しながら僕の意識はだんだんと薄れていった。

 学校とは何の学校なのだろう?僕はその学園祭のようなものに来賓として招待されていた。それはいつの時代のことなのか?場所はどこなのか?とにかく僕は夢の中で殺されて、それからしばらくはその夢を見なくなった。しかし潜在意識の奥の「納得いかない心」はまだ解決していなかったようで、今でも数年に一度この夢を見る。

 ちなみに夢の中で殺された時、僕はあっさりと毒針で殺されたが、酷い拷問を受けるというのは、僕がされたことではなくてかつて僕がしていたことである。正確に言えば僕が指示を出して部下にやらせていたことである。

 昔の宗教団体は酷かったですよ。言う事をきかない奴は容赦なく徹底的に痛めつけていました。それが神の道を歩むことだと信じていたんです。その頃の考えの名残りが今でも起きている自爆テロです。人の命なんてなんとも思っちゃいないのです。

 自分がそうだったことを思い出した僕は断固として宗教を否定する側に回った。それは自分が殺されたという怨みより、大勢の人の命を奪ってしまったという悔恨からであった。今でも僕は何かの組織に参加することができない。組織というのは個人を裏切って、人の心をないがしろにし、最後には人の命を奪うものだと、どこかで思っているようなのである。

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