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また夢の中で  作者: 利根川渡
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壮大なメッセージ

 住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ


 これは百人一首の中の藤原敏行の歌ですが、大意は、あの住之江の岸に寄せる波の「寄る」ではないけれど、人目が気になる昼間ではなく、現実世界の「夜」でもないのに、夢の中のことだというのに、どうして人目を気にして、私に逢いに来ていただけないのでしょうか。というような感じの解釈になるだろうか?

 この歌にも詠われているように、平安時代の貴族は、自分が相手からどのくらい想われているかは、相手が夢に出てきてくれるかどうかで判断していたのです。フロイト以降、夢は潜在意識の表れという解釈が一般化しつつありますが、少なくとも平安時代の日本では、相手の気持ちが「飛んできて」夢に現れる、と考えられていました。

 実は二週間ほど前にある夢を見ました。それはこんな夢です。僕は同窓会の二次会の受付をやっています。多分高校の同窓会だと思うんですが、出席者は約30年ぶりに会う人ばかりなので、顔も名前もわからず、僕はとにかく、出席者のお名前を聞いて、それをカタカナで書き留め、会費をいただくという係をやっています。

 その出席者の中の一人の女性がすごく怖い顔をして僕を睨みつけ、僕に、「今後あなたとのおつきあいは一切お断りさせていただきます。」と言うのです。僕はその女性の顔に見覚えはなく、名前を聞いても思い出せないのですが、その女性は僕のことをよく知っているようです。

 僕がその人のことを覚えていないことで怒っているのだろうか、それとも、会費が高過ぎるからか、とにかくどうしてこんなに怒っているのだろうと思っていると、その人が、「あなたくらいの能力を持っている人なら、今頃は世界的に活躍していてもおかしくないのに、何をやっているのですか、がっかりです。」と言うのです。

 ちなみに、蛇足ですが、それは、同窓会の受付をしていることに対して言われたのではないですよ、仕事とか、何かそういうようなことで、いまだに世界的に認められていないなんて、どういうことですか、という意味です。

 夢はここまでですが、この夢を、潜在意識の表れ、抑圧された願望が形を変えて表現されたもの、と解釈すると、「俺は実はすごい人間だ」と勝手に妄想しているだけという、実に滑稽な、哀れな内容の夢だということになります。しかし平安時代の日本人のように夢を外部からもたらされたメッセージとしてとらえると、「お前にはまだまだ可能性があるんだぞ」というような、希望に満ちたメッセージともとれるのです。

 フロイトの弟子にして、後に決裂し、師を遙かに超えた独自の理論をうちたてたユングの夢解釈には、「グレートマザー」とか「老賢者」とか名付けられている、ロールプレイングゲームのキャラクターのような「元型」という概念があって、「元型」は人類の無意識下に共通して存在すると言われています。

 ユングの説に賛成というわけではないのですが、僕の夢に出て来た女性とそのメッセージは、歪んだ自意識の表れなのか、宗教で言うところの「神様」的な存在からのメッセージなのか、あるいは「ご先祖様」的な存在からのメッセージなのか、「守護霊」的な存在からのメッセージなのか、それとも現実に生きている誰かからのメッセージなのか、もし現実に生きている人の「生霊」なのだとしたら、その人の顔に見覚えがないのは何故か、などといくつかの解釈ができ、解釈によって意味も違ってくるのです。

 とにかくこういう夢を見たことだけは事実なんですが、その夢の意味は、プラスにとらえようと思えば、際限なくプラスの意味に取れますし、自虐的なマイナスな捉え方をすれば、それこそ際限なく落ち込むことができます。できればプラスに受けとめられるような楽天家でいたいと思っています。

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