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この世界の人々には、生まれた時に神様から贈り物を贈られる。
それが魔力だった。
不公平なく平等に与えられる魔力は己の努力と才能で強くなり、大きくなる。
それを開花させれば立派な魔法使いになれるが、この子供は違った。生まれた時からおぞましい程の魔力が与えられていた。
父親になるはずだった男は、子供を見る前に事故で死んだ。一人でも立派に育てる事を涙ながらに誓った女は、生まれた我が子の恐ろしさに絶望した。我が子を抱く腕が震えて止まらないのだ。
女の家族も子供を受け入れることはできなかった。子供を捨てるよう言ったが、女にはどうしてもそうすることができなかった。結局、女は家族に勘当され、追われるようにこの町に来た。
自分でお店を持ち、人生をやり直そうとしていた女にとって、子供は邪魔でしかなかった。いなくなればいいと思うのに、そうはできない自分に女は少しずつ壊れていった。
店の地下には魔封石が敷き詰められた倉庫があった。ここに入れば登録された魔力以外の魔法は一切使えない状態になる。店に強盗が入った時に逃げ込む用の部屋だ。どんなに魔力が強い相手でもここに入れば手出しは出来ない。
女は自分の魔力を登録し、子供を閉じ込めた。
時々、堪え難い罪悪感に押しつぶされそうになり、食べ物や着るものを与えてはいたが、憂さ晴らしに殴りに行く回数の方が圧倒的に多かった。女にとって子供は愛せる対象ではなかった。
「なんで、私がこんなことに……全部あんたのせいよ!気持ち悪いバケモノがっ!」
ショーンが別れたいといったのも!
女はそう叫びながら重い拳を子供へと落とした。
「ショーンはね私のことが好きなのよ!それをあの阿婆擦れ女のエイミーが子供ができたなんて嘘をついて…!エイミーなんて死んでしまえばいいのよっ」
「良かったな。エイミーもショーンも、もうこの世にはいない」
「誰!?」
突然、後ろから聞こえた声に女は振り返る。
黒い髪に黒い瞳、着ている服も意識してなのか全身黒ずくめの男が立っていた。
「なによ、あんた!勝手に人の家に」
女の喚き声はそこで途切れた。
ドサリと女は床に倒れ、地面にはじわりと血が這った。あまりにも呆気ない最期。その最期ですら男の記憶にとどまることはないだろう。
黒い男は女を斬った刀を一振りし血を払うと、音もなく子供に近づいた。子供は恐怖の前でも正直だ。泣きわめくかとも思ったが、じっと静かに子供は動かなかった。




