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あの世行きの片道切符をあげるのはまだ早いだろう

作者: 莉夜

   この世界に飽きた



   現実にくたびれた



   現実が嫌になった



   生きる意味なんて何もない



   だから早く死のう



   それが私の死ぬ動機だった


   

   私はマンションの屋上から飛び降りて



   重力の指示に従って落ちていった



   そして意識は消えていった



   15年間の短い人生だった。







   目が覚めた



   ここは天国か何かだろうか



   起き上がるとそこは……



   いつもの……町……?



   いや、それはない



   

   私は地上100Mくらいの高さにいた



   床? がガラスか何かでできていて



   下の町の様子が見えた



   10秒くらい、足がくすんだ



   そして気づいた



   このガラスの床がどこまでも



   広がっていることに。





   「お前、今日自殺した者だな」



   誰だ?振り返るとそこには



   天使……なのか……?



   全身真っ白い、女の子っぽい者が立っていた。



   「私は死後の世界、

   人がいう天国からやってきた天使だ。

   お前をこちらの世界に連れてくかどうか、

   判断するためにここにきた」



   「判断? どういうことですか?」



   「通常、生物というのは寿命を持っている。

   そしてその寿命分生きれば、

   我々の住んでる世界、天国にいけるわけだ。

   しかし、死因が自殺の場合、

   本来設定されているはずの寿命を

   全部生きていないことになる。

   だから我々はその自殺者にいうのだよ。

   本当に天へ連れて行ってもいいのか?と。

   そしてその人が

   こちら側に来るにふさわしいか、判断するんだ」



   「どうやってするんですか?」



   「簡単だ。今までのお前の人生を聞いていく。

   もし、こちら側に来るにふさわしければ、

   死後の世界、つまり天国行きの切符をあげる。

   ふさわしくなければ、

   お前が死ぬ1週間前の現世に戻す。

   それだけだ。」



   天使っていうより、これは悪魔の役割だな



   「では、早速聞いていこう。

   お前の死んだ動機はなんだ?」



   ……………。



   「おい、どうしたんだ。答えてみろ」



   「この世界が、嫌い……それだけ」



   「ほう。ならば一体、

   どこら辺が嫌いなんだ?」



   「人が嫌いなんだ。人でいることが嫌なんだ。

   この社会の理不尽さや、

   人生の残酷さに気づいてしまったんだ。



   社会って酷いと思いません?

   


   例えば学校ならばいじめ、

   

   いじめた方はいじめた事を忘れ、

   社会に出て悠々と暮らす。


   いじめられた方はその事に心から傷つき、

   一生忘れることができずに死んでいく。


   酷くないですか?


   可能性のある未来を消されるんですよ?



   他にも、

   人は戦いが好きな生き物です。



   意見や考え方の違い、

   あるいは見た目の違いで

   お互いを傷つけ合う。


   そして何万人と犠牲者がでる。

   その犠牲者一人一人にそれぞれの人生が

   あったと考えると、

   心がすごい痛みます。 


   なんで同じ人間なのにこんなにも、

   傷つけ合うのでしょうか


   他の動物はケンカすることはあっても、

   殺し合いはほとんどしないでしょ



   

   人生が存在する意味だって分からないの



   この世界に落とされ、


   人として育てられて、


   人として生きて、


   寿命がつきたら死ぬ。


   そして生きていた記憶も体全部が消える。


   どう頑張ろうが、


   どう怠けようが、


   結末は全員一緒。

   全部リセットされる。



   だったら、人生ってなんのために

   存在してるのだろうか


   人生、悔いのないように生きろ、て

   大人が言う。



   だったら何事にも縛られずに、

   自由に生きていきたい。



   それなのに社会では、

   決まった人間にしか

   生かしてくれない。


   

   

   法律



   憲法



   制度



   義務



   責任



   権利



   税金



   国民

   



   何もかもから逃れたい。



   


   人種とか

   

   学歴とか


   仕事とかで


   自分という存在を認識してほしくない



   一人の人間として認識して

   欲しかったのに……





   これが……私の死んだ動機です」





   なるほどな、お前の言ってる事、

   分からんでもない。

   むしろよく分かる。



   たしかに人はお前の言う通り、

   残酷な生き物なのかもしれない。



   戦争だってするし、

   他の生物の侵害もする。



   そんな人間が嫌になって死んだんだよな?」




「…はい」



   「だから、

   この世から逃げたくなったわけだ。



   


   だが少女よ、本当にそれでよかったのか?」



   「!?」



「いいかい、これから言うことは、

   天使としてじゃなく、

   一つの生き物として聞いてもらいたい



   人は残虐だ。見にくいかもしれない



   でも、全員がそうとは限らない。



   空をみてみろ



   透き通った群青色をしているだろう。



   山や海もそう。


   

   自然界はいつも美しいもので、

   溢れ返っている。



   人に負けじと彼らは彼らなりに

   生き抜いているわけだ。



   その美しい自然を

   感じられなくなってしまうのは、

   残念じゃないか?



   そしてお前と同じ考え方をする人間が、

   この世界には少なからず

   いるかもしれない。



   だから私は……



   お前に天国行きの切符をあげるのは、

   まだ早いだろうと判断した。





   きっとまだ、

   お前がこの世界にいる価値はある





   だから、

   せっかくそんな風に考えられる頭が

   あるんだ。



      生きていてくれ





      天使からの言葉だ   」





      「はい」



   つぶやくように私は返事をした



   すると天使は目の前から消えていった



   間もなく、私もそこに倒れていった。






   目が覚めた。



   そこは、1週間前の世界だった。





   社会には

   沢山の理不尽や醜さがある。



      それでも私は生きていく






      この美しい自然のもとで



      




   



   



   


 




  

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