ローグシーでひな祭り?
(* ̄∇ ̄)ノ K様にカダールとゼラでバルーンアートを作っていただきました。ウィラーイン家でひな祭り。
「ひな人形?」
カダールが怪訝な声で訊ねると青髪商会長パリアクスはニコニコと説明する。
「はい、東方では、ひな人形と呼ばれています。うちの商会に出入りする商人の中で、東方の風習でそういうのがあると聞きまして。春を迎える子供たちの為に、ひな祭り、という祭事があると。それで試しに作ってみたのです」
ローグシーの領主館、シウタグラ商会の長、パリアクスが持ってきた人形をテーブルの上に乗せる。
「なんでも、王と王妃でワンセットとなり、加えてその家臣と揃えて飾るということで」
テーブルの上に飾られる人形は、赤毛の王子と蜘蛛の姫をモデルにした人形。鮮やかな色合いの豪華な作りの人形だ。
「カダール様とゼラ様で造らせていただきました。いかがでしょう?」
「「かわいい!」」
声を揃えてテーブルにかぶりつきで見るのは、ゼラと三人の子供達、カラァ、ジプソフィ、フォーティス。
「これパパ? ママ?」
「そうですよ、良いできでしょう?」
青髪商会長パリアクスは、いつもの商売用の笑顔がいつもよりも一段と浮かれている様子。どうやら子供達の反応を見て、これはいけると確信したらしい。
「絵本作家、ウィルマ=ティラーの絵本の登場人物を羊毛フェルトで作ったマスコットは、なかなか評判が良いのです。今回の物はより豪華な作りで、一段高級なものとなります。何より、東方ではひな人形を飾りつけて、自慢するというではないですか」
「そうなのか? クチバ?」
カダールは側で見ているフクロウのクチバに訪ねる。諜報部隊フクロウの長、灰色の髪のクチバは東方出身の特殊戦術兵シノービの出身だ。クチバは少し懐かしむように、テーブルの上の赤い髪と黒い髪の人形を見る。
「そーですね。ひな人形は子供の玩具がもとですが、春先の祭りに子供の厄よけとして、厄を移したひな人形を川に流すのがひな祭りです」
「これを川に流すのか? 何やらもったいないような」
「いえ、高価なものは川に流しませんよ。厄よけのひな人形はそれ用のものを。こちらは飾り雛ですね。飾りつけて見て楽しむものです」
クチバから聞く東方のひな祭りを、頷きながら聞く青髪商会長パリアクス。
「その飾り雛ですが、ひな祭りでは家臣の方も揃えて並べるというじゃありませんか。なのでウィラーイン家の方々をモデルにシリーズ化すると、セットで揃えようというコレクターが出てくるのではないかと、期待しています」
「あぁ、なるほど。パリアクス商会長はウィラーイン家で三人官女や五人囃子を作って売りたいのですね。その許可が欲しいと」
フクロウのクチバの言ったことに、カダールはうーむと唸る。
「そういう話は母上としてもらいたいが、これは子供向けなのだろう? 子供が買えるものになるのか?」
「フェルトマスコットとは違う高級品として作ってみたので、こちらは裕福な家庭向けとなりますか。これだけで無く、三人官女はカラァ様、ジプソフィ様、フォーティス様で、五人囃子は、サレンさん、グラフトさん、アステさん、アシェさん、クインさん、という感じで作っていこうかな、と。男雛、女雛は、ハラード伯爵様とルミリア様、エクアド様とフェディエア様というパターンもありまして」
「全部揃えるには相当金がかかりそうだが」
「コレクターには堪らないでしょうね。全て揃えた猛者には、ゼラ様が加護を与えた特別限定スペシャル飾り雛人形を」
「過度に煽るようなら認められんぞ」
「はい、そこを調整していくために相談させて頂きたいのです。出来映えの方は良さそうですね?」
商会長パリアクスの声も聞こえないようで、ゼラはうっとりとカダールの人形を眺め、カラァとジプソフィとフォーティスは、ゼラの人形をそっと触っている。かわいい、きれい、と子供達に好評だ。
「フェルトマスコットが量産品ならば、こちらはオーダーメイドの注文品となりますか。子供の玩具というよりは美術品となってしまいますか」
「値を高くし過ぎると、買おうという者がいなくなりそうだが」
「先ず、エルアーリュ王子は買ってくださるでしょうね」
「エルアーリュ王子にも売るつもりなのか?」
「はい、試作品を差し上げるのはモデルになったウィラーイン家の方々にだけです。絵本の蜘蛛の姫の恩返しも人気は根強く、西の聖獣ゼラ様にあやかろうという者は多いので、きっと売れるでしょう」
「その為に東方の風習を取り入れてまで?」
「スピルードル王国は受け入れる懐が広いですから。それに調べてみてもひな祭りとは、子供の無病息災を願うもので、宗教的な祭事というわけでは無く、これなら光の神々教会も煩くは無いかと」
カダールがクチバに、そうなのか? と尋ねると、
「そーですね。東方ではなんと言えばいいのか、南方ジャスパルの精霊信仰に近いところはありますから。祭事の由来も曖昧な物がいくつかあって、ひな祭りもそのひとつです」
青髪商会長パリアクスは、ローグシーの街でひな祭りを流行らせて、ウィラーイン家モデルのひな人形を売るつもりらしい。
青髪商会長パリアクスは試作品を領主館に置いて、ハラード伯爵とルミリア夫人に許可をもらいに相談を。その際、ルミリアからは煽り過ぎないようにと注意されるが、ウィラーイン家認定の人形を扱う許しは得た。
パリアクスはニコニコと。
「フフフ、これは売れる商品になりますよ」
その夜、領主館にてゼラとカダールのひな人形を手に遊ぶカラァとジプソフィとフォーティス。穏やかに見守るカダールとゼラ。
それを見るアシェとクインは、ほほえましく見ながらも微妙な顔をする。
「アシェ、あたいらがあの人形になるらしいぞ?」
「私とクインが、蜘蛛の御子のお世話係り、ではあるのだけど」
「人に化けたあたいとアシェのことが、ローグシーの街でそんなに知れ渡っちまったのか?」
フクロウのクチバが、何を今更、という顔で。
「お二人とも美人の上に、カラァ様とジプソフィ様と手を繋いで街を歩くところを、ローグシーの住人が見てますからね」
「だけど、あたいらはウィラーイン家に仕えてる使用人、というところだろ?」
「サレンもアステもグラフトも、ウィラーイン家の使用人はローグシーの街では有名ですから。子供にハンターも、黒の聖獣警護隊に入りたいのか、警護隊隊員も街で名前を知られていたりします」
「あ、じゃあその中の一人か。だったらそんなに目立っているわけじゃないのか」
「……ローグシーの街の住人はカンは鋭いのですよねえ」
子供達がひな人形でままごと遊びをするのを見ていたカダールが、クチバに聞いてみる。
「クチバ、俺は東方の風習は知らないのだが、ひな人形とはどう扱えばいいんだ? 川に流すというのは聞いたが」
「そーですね。しまい忘れると婚期を逃す、と言われたりもしますが」
カラァがゼラ人形を抱っこして、ジプソフィがカダール人形を持って、ゼラに話しかけている。フォーティスが人形サイズの茶器を並べたりなど。
目を細めて見るカダールが言う。
「ひな祭り、というのがよくわからないが、こうして雛人形があるから、うちでもちょっとやってみるか。クチバ、ひな祭りはどうすればいい?」
「そーですね。私もシノビとして育ったもので、ひな祭りをちゃんとした覚えはありませんが。雛人形を一式揃えているのは、裕福な一族か商人の家庭ぐらいですよ」
「そうなのか?」
「ひな祭りは子供の成長と安全を願うものですので。厄よけになるもの、縁起が良いとされるものを皆で食べたりなどします。ローグシーでもなんとかなりそうなものと言うと、甘酒、菱餅、豆、といったところでしょうか?」
「アマザケにヒシモチか。料理長エモクスと相談して作ってみてくれないか? 東方の名物ならば、カッセルとユッキルも喜ぶんじゃないか? それに豆、と」
豆、と聞いたゼラが顔をしかめる。
「エー? 豆は、美味しくなーい」
「「まめは、おいしくなーい」」
真似をしてカラァとジプソフィも顔をしかめて言う。豆や野菜は不味くて美味しくないと言うゼラ。ゼラの子もその味覚を受け継いだのか、カラァもジプソフィも野菜は嫌いだ。
クチバはそんな親子を微笑みながら見て。
「豆は厄を払うということで、東方では縁起物のひとつなんですよ。春先に歳の数だけ豆を食べると、一年病気にならない、とも伝わります」
「ムー、歳の数、豆を食べるの?」
「まめ、きらーい」
カダールがゼラの頭を撫でながら、
「それならゼラの分は俺が代わりに食べるとしよう。もちろんカラァとジプソフィの分も」
「パパ、フォーティスもカラァとジプソフィの分食べるよ」
「では、フォーティスにも頼もう。これで我が家は安泰か? しかし、歳の数だけ豆を食べるとは、」
言ってカダールはアシェとクインを見る。
「アシェとクインはいくつ豆を食べないといけないのか?」
クインは半目でカダールを見返す。
「百歳越えたら、自分の歳なんて憶えてねえよ」
「赤毛の英雄、女に歳なんて聞くものではなくてよ」
「あたいは豆ならいくらでも食えそうだけどな」
「私は嫌よ。新種の拷問かしら?」
東方出身のクチバから話を聞いて、ウィラーイン家でちょっとしたひな祭りをしてみようか、となる。ルミリアはおもしろそうに言う。
「それならその日は、東方らしく一日キモーノを着て過ごしてみようかしら?」
「あれはナイトガウンかと思っていたが」
ハラードもその手に東方の衣装を手にして。
「昔、贈り物として貰ったものだが、これを東方ではナイトガウンでは無く日常で着ているというのか。ふむ」
ウィラーイン家で、なんちゃってひな祭りが行われることになる。東方出身のクチバと配下のシノービ集団により、ウィラーイン家は一日だけ、ちょっぴり東方気分を味わった。
青髪商会長パリアクスの雛人形販売計画はというと。
『西の聖獣の御一家をチャチに造れるものか』という気合いの入った職人の為に数を作ることはできず。数少ない好事家の為の注文生産品となり、流行を起こすほどに広めることはできなかった。
「「♪きょうは、たのしいひな祭りー」」
フクロウのクチバに教えてもらったひな祭りの歌を、子供たちは楽しげに歌う。それを雛人形の赤毛の王子と蜘蛛の姫が見守っている。
バルーンアート作成
K John・Smith様。
m(_ _)m ありがとうございます。
_ φ( ̄▽ ̄ ; K 予定されていたフェスティバルが、市の判断で突如、中止に……、コロナめ。二週連続のバルーンなイベント参加。その第二弾の大物イベント。
ホールに、桜のバルーン大樹をつくるはずだったのに! 開催前日、丸一日、作業する気だったのに! なんやかや買い込んでたのに! コロナウィルス!
( ̄▽ ̄;) 広まってますね、皆さんもお気をつけて。
(T▽T) 三月三日に間に合いませんでした。ふぬぐぅ。




