アシェンドネイルの子守唄
(* ̄∇ ̄)ノ アシェンドネイルの乳母姿
ラミアのアシェンドネイルは母神の瞳で、眠る三人の幼子を映す。今ごろは赤い宝石を通じて、深都の住人もこの三人の子供達の様子を見ているだろう。
(……昨夜はあんなに大泣きして私たちを起こしてくれたのに、のんきなものね)
起こさないように心の中で呟くアシェンドネイル。三人の子を見る顔は優しく微笑んでいる。
大きなゆりかごの中、くっつくように眠るカラァとジプソフィとフォーティス。三人ともお互いにしがみつくようにして眠っている。カラァとジプソフィの靴下を履いた蜘蛛の脚が、ひしっとフォーティスの足に絡んでいる。
(人と魔獣、その違いはあっても、同じ大地の上に生きる生命、ということなのかしら? 私達のしてきたことが、人に恨まれることだと知ってはいても……、おかしいわね。昔の私なら、もっと冷たくあしらえたものなのに)
眠る三人の赤子を見つめ、アシェの口から小さな歌声が溢れる。
真ん中のフォーティスが薄く目を開ける。
「ふや?」
「あら? 起きちゃった? フォーティス、まだ寝てていいのよ?」
アシェンドネイルは小声で語るが、フォーティスは赤い石の光が気になるのか、小さな手を伸ばす。
「これは上げられないわ」
何か代わりになるものはないか、とアシェンドネイルは見渡すが、音の出るようなおもちゃだとカラァとジプソフィも起きてしまう。
ふと思いついてアシェンドネイルは尻尾を伸ばす。アシェンドネイルは深都の住人。その姿は下半身は黒い大蛇のラミア。長い黒い尻尾の先をフォーティスの前に伸ばす。
右に左にゆらゆらと振ると、フォーティスの目も尻尾を追いかけて右に左に。
「ふふ」
フォーティスを尻尾で静かにあやすアシェンドネイル。慈母の微笑みを見せて人の赤子をあやす姿を見れば、深都の住人は驚くだろう。あのアシェンドネイルが、と。
(……私が、こんな穏やかな気持ちで赤子のめんどうをみるなんて、ね……)
感慨にふけるアシェンドネイル。フォーティスは目の前に揺れるアシェンドネイルの尻尾に手を伸ばす。小さな手できゅ、と掴む。
「あら、捕まっちゃった。それで、どうするの? フォーティス? 私を捉えて赤槍の騎士の息子はどうするのかしら?」
フォーティスはアシェンドネイルの言葉に返すように、握るアシェンドネイルの黒い尻尾の先を、あむっと口に入れる。
「え?」
驚くアシェンドネイル。フォーティスは口に入れた黒い蛇の尻尾をはむはむと唇でくわえて、ちうと吸う。
呆然としているアシェンドネイルの傍らにクインが近づく。
「なにやってんだよ、アシェ?」
「……人の赤子って、何をするか読めないわ」
されるがままにヨダレまみれにされる自分の黒い尻尾を見つめるアシェンドネイル。
◇◇◇◇◇
おまけ
フォーティスが幼少期に口にしたものとは?
ゼラ
「あーん」
フォーティス
「はむはむ」
ゼラ
「フォーティス、美味しい? ゼラのチーズはどう?」
フォーティス
「んー、あー」
ゼラ
「ン、気に入った? ハイ、もうひとつあーん」
ルブセィラ女史
「フォーティス? 何をもぐもぐしてます? ……これは、カラァとジプソフィの蜘蛛の体毛の抜け毛?」
フォーティス
「むぐむぐ」
アシェ
「あ、ちょっとハイアディ? 気をつけて」
ハイアディ
「え? アシェ、何に気をつけ、ひゃあああ!?」
ハイアディの触手の先を掴むフォーティス
「あむあむ」
ハイアディ
「ふぉ、フォーティス君? 私の触手、食べちゃダメえ!」
アシェ
「食べないわよ。歯が生えるのにはぐきが痒いのか、あむあむするだけよ」
フォーティス
「あむあむ」
ハイアディ
「そうなの? あん、なんだか、くすぐったあい」
辺りをキョロキョロと見るクイン
(誰も見てない、よな?)
フォーティスの顔に顔を近づけるクイン
「ちゅ、ちゅー」
フォーティス
「うちゅ?」
カッセル&ユッキル
「「料理長、こんな果実を持ってきてみたのだが?」」
料理長エモクス
「こ、これは……、伝承の弾丸カボチャ! さっそく調理実験を」
ララティ
「一の子分のお前に、特別に分けてやるぴょん」
フォーティス
「ラーらぁ?」
ララティ
「直撃したら神さえ消し飛ぶとゆー究極の巨大魔樹『ゴッデスジャベリン』これはそんなウルトラパワフルな実につまったエッセンス中のエッセンス『種の胚乳』だぴょん。ただ、強力過ぎるからこの指先のひとカケだけ……」
フォーティス
【ひょい、ぺろん】
ララティ
「ぴょあ!? そっち全部?」
その後も、鋼魔樹の霊実プリン、エクスガーネットベリーといった魔獣深森奥地の果実など、フォーティスは人が口にできぬようなものを、数々口にして育ってきた。
フェディエア
「おおきな病気もせずに元気に育ってるのだけど」
エクアド
「その代わり、カラァとジプソフィと一緒に遊んで生傷が多いか。あの子達も力の加減が苦手なのはゼラ似なのかもな」
フェディエア
「治癒の魔法の得意なゼラちゃんがいてくれて安心だけど。でも、何もしなくてもフォーティスはケガの治りが凄い早いみたいね」
カダール
「それはいい。ケガの治りが速ければ、深都の住人達とも気軽に付き合えるだろう。俺も骨が丈夫であれば、ゼラに心配させることも無かっただろうし」
エクアド
「カダール、気を遣うところがズレているぞ。ケガをしないように気をつけるのが先だ」
ウィラーイン伯爵家、ハラード伯爵の孫のフォーティスは、とっても丈夫に育った。
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
m(_ _)m ありがとうございます
(* ̄∇ ̄)ノ アシェンドネイルの子守唄、イメージは、おおたか静流のアルバム、ノスタルジーより、こもりうた、で。おすすめの一曲。
_ φ( ̄▽ ̄ ; K 蜘蛛意吐ネクスト、王都の騎士訓練校の野外実習にて、フライングバジリスクが来襲! フォーティス君は同級生に「みんな逃げて! ここは僕に任せて! あいたー!?」と、フライングバジリスクに噛まれたフォーティス君! しかし、めっちゃ身体の丈夫なフォーティス君は、フライングバジリスクの猛毒さえもヤブ蚊に噛まれた程度のもので……
( ̄▽ ̄;) 無自覚無双?




