スキュラねー様ピンチ
特攻型Mとカウンター型Sのプッツンカップル誕生? ばふうっ!
「ハイアディは南の海に住んでいたんですか?」
「うん、そう。もうずっと昔のことだけど」
彼の家の地下室で、壺から上半身を出して彼と話す。壺の縁に肘をついて。夜にランプの明かりの中で、寝る前にこうしてお喋りするのが習慣のようになって。
彼は遠くを見るような目で呟く、そんな横顔も詩人のようで。
「海ですか、見てみたいですね。ウィラーイン領は海から遠いので見たことが無いんですよ」
「大きくて広くて、夕日が海に沈むときのオレンジ色に染まる海が綺麗、かな」
「ハイアディが自由に泳ぎ回れるのだから、とても広いのでしょうね」
「それはもう」
「ここの地下は狭く無いですか?」
「ううん? 過ごしやすい、よ?」
「……どれだけ改造したんですか?」
あう、下半身のスキュラ体が伸び伸びできるくらいです。でもでも、強化した石柱で補強して、崩れないようにして、ついでに地上の部分の耐震補強もしたから、簡単には崩れないよ。でも勝手に住み着いて好き勝手に改造してしまいました。
地下水脈とも繋げて、深く掘りすぎちゃったかな?
彼は私を見て優しく微笑む。
「まぁ、家が壊れなければいいですよ」
「あの、聞いていい?」
「何をですか?」
「どうして、この家に一人で住んでるの?」
一人で住むにはちょっと広い家かなって。彼は少し困ったような顔をして、あう、聞いちゃいけないことだった? 彼は片手で自分の髪をかきあげて。
「どうも私は家族と相性が悪いようです。ハイラスマート領の実家から家出するようにしてローグシーに来まして。この家はハンターをしてた頃、パーティメンバーと住んでいたんです。彼らが引退するときに、この家を譲ってもらったんですよ」
「想い出のおうちなの?」
「そうですね」
「引退って、その、もしかして」
「死んでませんよ。結婚してハンター向けの道具屋になったり、訓練場で教官になったり、熟練ハンターの居住を望む村に移ったり。ウィラーイン領では実績のあるハンターは優遇されますから」
「ハンター、だったの?」
魔獣と戦うのを生業にしてたの? 詩人というか、学者というか、線の細い感じなのに。彼が左手のひらを広げて上に向ける。なんとなくつられてその手に私の手をおく。キュッと握られる。あったかい。
「そうですよ。それで魔獣を見慣れてはいます。だからハイアディ、壺から出て来ませんか?」
「えぇ? えっと、その、私、狭いところが落ち着くから、その」
もともとがカラミティオクトパスで、狭いとこだと安心するの。岩壁の隙間とか。それに、彼にスキュラの身体をジーっと見られるの、なんだか恥ずかしいし。それに、
「……レーンの触り方が、その、やらしい……」
「やらしく無いですよ。まったく。私がハイアディを怖く無いという証明じゃないですか」
握られた手が引かれる。わ、顔が近づく。レーンの右手が私の頬に触れる。頬をふにふにした手がゆっくり動いて、ひ、耳の後ろから首筋をを! 指でツツーって! ひう、ゾクゾクするう!?
「やらしい触り方とは、こんな感じじゃ無いですか?」
いつもの、にやあ、と笑った、イジメっ子みたいな顔が近くて、はう、レーンの指がせ、背中にい! あ、や、はう、
「ハイアディ、顔が赤いですよ? やらしいことを考えてるのは、ハイアディの方なんじゃないですか?」
「や、違う、違うの、」
違うの、違うけど、でも、はう、ゾクっとして、胸がポッとあったかくなって。
「ハイアディは可愛いですね」
レーンの顔が近づいて来る。思わずギュッと目をつぶる。額にちゅ、と小さな音。はうう。
私のこと怖がらないどころか、私を怖がらせるなんて、
「ハイアディ、どうしました? ほら、目を開けて、」
薄く目を開けば、私を覗き込むレーンが、すぐ目の前に、ひゃう。
「どんな触りかたをすればやらしく無いのか、教えてくださいハイアディ。こんな感じですか? それとも、」
「やう、レーン、意地悪……」
彼は、レーンは、いったいどんな人なの? あぁ、でも、このまま、もう……
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
イラスト、別荘の主カセユキ様
m(_ _)m ありがとうございます。
( ̄▽ ̄;) 触手責めって、こうだっけ?