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メイドさんが家に来た その6

(* ̄∇ ̄)ノ メイドのフィスノ来訪、これにてラスト。

 

 細目でニコリと微笑むフィスノ。なんだか、深都の姉妹みたいに話やすい人。私のことを気遣ってくれてるんだろうけれど、なんだかそれが自然な感じ? 領主館の人達も、そうだった。

 クインも言ってたっけ。


『ここの奴らは、なんて言えばいいのかな。ゼラで見慣れたってのもあるんだろうけど、あたいらを普通の女の子扱いするんだ。いや、ちょっと変わったとこのある女の子扱い、か? 人と違うところを興味で触りたがるけれど、それ以外はまともというか』

『まとも、というか怖いもの知らずなのか。変なところで素直でそのくせ、ずけずけとこっちに来るのよ』


 アシェもそんなことを言ってた。うん、レーンも私のこと触りたがるけど、いやって言ったらやめてくれるし。う、『本当にイヤなんですか?』って言いながら、なかなかやめてくれないこともあるけど、でも、それは私もちょっと期待するところが、まるで無いとは言えないところも、そこはかとなくあるような。


「どうしたの? ハイアディ?」

「な、なんでも、なんでもないです」

「そお?」

「あの、ありがとうフィスノ。ぱんつも穿けてメイド服も着れた。これまで、何度も失敗してぱんつを破いてしまっていたのに」

「ちょっと参考までに、そのぱんつが破れた状況を教えてくれない?」

 

 ぱんつの破れた状況? えーと、


「レーンが私にぱんつを穿かせてくれるんだけど、その、私が恥ずかしくなってしまって、集中が途切れて、下半身がスキュラに戻ってしまって」

「恥ずかしい、と感じると人化の魔法が解除されるのね。具体的には?」

「ぐ、具体的? ええと、レーンの手が足首から上にツツツってくると背筋がゾクッとして、その、レーンの顔が近くで、レーンの吐息が太ももに当たると、そこから逃げ出したくなって」


 見られたくなくて恥ずかしいとこを手で隠すと、ぱんつを穿かせられないから、手をどけてくださいってレーンは言うの。だけど、レーンの視線がじーっと見詰めるとこから、手をどかすことがなかなかできなくて、はう、あのときのレーンの顔が、目はキラキラしてて口許はなんだか楽しむみたいにニヤリとしてて。もう、レーンのイジメっ子……。


「ストップ、ハイアディ、ストーップ。もういいわ」

「あ、はい」


 両手で自分の頬を押さえる。あぶないあぶない、また人化の魔法がとけて服が破れるところだった。


「服を着る特訓、と言いつつやっていたのは着衣プレイ? それじゃハイアディが人のふりをする練習にはならないじゃない……」


 ちゃくいプレイ? なにそれ?


「相手がレーン様じゃなくて、私ならハイアディはそんなに恥ずかしくはならない?」

「あ、はい。そうかも。フィスノだと、そんなに緊張しないみたい」

「そう。私の方が緊張しちゃってるかもね」

「そうなの?」

「素直に言うと、ハイアディが無防備にしてるとこ見ると、なんだかムズムズするというか、ウズウズしちゃうというか」

 

 そうなの? 深都でも、アイジスねえ様に他のお姉様に可愛がられることはあったけれど。あ、だからなのかな? フィスノに服を着せてもらってるときは、なんだか深都のお姉様みたいで、それで私はそんなに緊張しなかったのかな?

 

◇◇◇◇◇


 ローグシー街守備隊、副隊長のレーンは朝焼けの色に染まる街の中、我が家に向かっていそいそと歩く。

 夜勤の仕事中も、家にいるハイアディと新しく来たメイドのフィスノのことが気がかりで、落ち着かなかった。仕事を終えると早々に守備隊の詰め所を出る。


(あのフィスノもフクロウの隊員ですから、おかしなことにはならないと思うのですが)


 ハイアディとの二人きりの暮らし。それがこれから一人、邪魔者が来ることには不満のレーン。しかし、それがハイアディがレーンの家に住む為に必要なことだと、ウィラーイン伯爵家に言われると逆らうことはできない。

 やや早歩きになるレーンはその手に握る物に目を落とす。


(これがあれば)


 レーンがその手に大事に持つのは、ひとつの巻き尺。


(これまで私がハイアディに買った服は、目見当で選んだものでサイズが合いませんでした。ですが、この巻き尺があれば服のサイズの問題は解決します。これでハイアディの身体を細かく、しっかり、あちこちちゃんと測れば、ハイアディにぴったりの服を選ぶことができます)


 レーンは想像する。白い頬を恥ずかしげに赤らめて、触手まで赤くしてウネウネモジモジするハイアディを。やん、とか言いながら目に涙を浮かべて、それでも何かを期待するようにレーンをチラチラと見るハイアディの仕草。そのハイアディを、服を選ぶのに必要だからと巻き尺で測る。あの柔らかな肌を、きゅっと絞めるように巻き尺で巻くと、ハイアディはどんな顔を見せてくれるのだろう?

 知らずレーンの口許に笑みが浮かぶ。


(フフフ、実にこう、胸にクルものがある。あちこちしっかりと測らせてもらいますよハイアディ。ハイアディに服を着せるのは私の役目です。誰にも譲る気はありませんよ)


 怪しい想像をしながらレーンは我が家に帰りつく。家の扉を開くと、そこには待ち構えていた二人のメイドが並んでいる。


「は?」

「「お帰りなさいませ、レーン様」」


 声を揃えて頭を下げ、主人を迎える二人のメイド。その一人は昨日、家に来たばかりのフィスノ。

 もう一人、青く淡く輝く髪を後頭部に纏め、両手を腹の前で重ねて組み、丁寧に礼をするもう一人のメイドは、


「ハイアディ?」

「はい」


 レーンは硬直する。ハイアディがメイドに。メイドとは主人に(かしず)き仕え、主人の命に忠実な使用人。


(ハイアディが、私のメイドに……)


 この瞬間、レーンの頭の中では主人の命令に逆らえないまま、モジモジウネウネしながらもレーンの無茶な命令に従い、涙目になるメイドのハイアディが何パターンも浮かぶ。

 ハンター時代には罠師レーンと呼ばれた男。あらゆる状況を想定し魔獣を捕らえることに長けた男。それは獲物の行動を読みどのように動くかを想定できる、深い想像力が成した技。

 清楚な佇まいで従属のメイド服を着るハイアディを見て、レーンの妄想は止まらない。


 呆然とするレーンを見て、キョトンと首を傾げるハイアディ。


「レーン? あの、どう? メイドさんの格好をしてみたのだけど」


 黒いスカートを指でつまみ、広げて小首を傾げるハイアディ。それを見て、なぜか鼻を抑えるレーン。


「素敵ですハイアディ。よく似合っています」

「えへ」


 嬉しげに微笑みを浮かべるハイアディは、隣に並ぶもう一人のメイド、フィスノを見る。


「ありがとうフィスノ。素敵って」

「良かったわね、ハイアディ」


 友人のように仲良く話す二人のメイド。それを見て、レーンはついフィスノを睨んでしまう。


(ハイアディに服を着せるのは、私の役目なのに)


 対するフィスノはその視線に気がつかないふりをして、しれっと言う。


「レーン様、お仕事、お疲れさまでした。お休みの前にシチューはいかがですか? ハイアディの特製シチューがありますよ」


◇◇◇◇◇


 後日、メイドのフィスノは領主館に。

 ウィラーイン伯爵夫人ルミリアと諜報部隊フクロウの長クチバの二人にレーン家のことを報告する。


「ハイアディはレーンの家からは出ないようにしているので、今のところ周囲からは怪しまれてはいないようです」


 フィスノの報告を補うようにクチバが言う。


「ローグシー街守備隊では、レーン副隊長の行動が変わったことを部下が奇妙に感じているようです。これもフィスノがレーン家に住み込みのメイドとして来たことで、レーン副隊長に女が? という噂に受け止められたようですね」


 フィスノとクチバの報告を受けたルミリアは、少し考えながら愛用の扇子を閉じて顎に当てる。


「今のところ問題は、レーン副隊長のハイアディへの独占欲、かしら?」

「はい、態度に出さないようにしていますが、私がハイアディに触れるとレーン様は不機嫌な顔になります」


 説明しながらフィスノは思う。


(純心なハイアディに変なプレイが人の常識だと思われる前に、私があの家に入れたのはギリギリだったのかも)


「レーン様もハイアディも互いに好きあってはいますが、互いに遠慮があるのか探りあっているのか、なかなか進展しないようです」

「そこは人と人ならざる者だから、想いだけでは難しいところもあるのかしら?」

「ゼラ様とカダール様は?」


 想いの力で結婚へと辿り着いた、一組の夫婦がこの領主館にいる。フィスノの言葉を聞いたクチバがくすりと笑う。


「そーですね。ゼラ様とカダール様は、やはりカダール様がウィラーイン家であったことが大きいのでしょう」

「カダール様の器の大きさは果てしないですから。親友であれば自分の妻の胸を触ってもいい、という男はなかなかいませんね。レーン様にもカダール様のような度量があればいいんですが」

「男女の仲とは、なかなか面倒ですね」

「やはり、ウィラーイン家でなければ深都の住人を受け入れるのは難しいのでは?」


 ルミリアが扇子を開いてクルリと回す。


「カダールもハラードもそういうところがあるわね。だけどあれは、単に男の子の自慢みたいなものよ」

「自慢、ですか?」

「そう、自慢。自分の持ってるお宝を、スゴイだろうって自慢したいのよ。それで友達が『ちょっと触らせてよー』と言ってきたら『じゃ、ちょっとだけだぞ』と、自分の手にした素敵な宝物を自慢したいの」

「そうなんですか?」

「昔はハラードのそういうところにカチンと来たこともあるけれど。カダールにも独占欲はあるけれど、レーンの場合はそれが強すぎて独り占めにしたいのね。だけどそれは、それだけハイアディを大事にしているということでもあるから、任せて大丈夫でしょう。フィスノはレーンとハイアディと上手くやれそう?」

「そこは問題無いかと」


 フィスノは心の奥で思ったことは口にせずに隠す。


(私がハイアディの魅了にやられそうになるのは、これから私が気をつければいいことだから)


 ルミリアはひとつ頷きフィスノを見る。


「これからハイアディをお願いね」

「はい、ルミリア様。ですが今日はレーン家には戻らず、明日、戻ります」

「あら、どうして?」

「私がこうしてあの家を出ている間、レーン様とハイアディは地下湖でイチャイチャしているでしょうから。二人きりの時間を作ってあげませんと」

「監視されてる中でイチャイチャはできないかしら?」

「それができるのはカダール様とゼラ様ぐらいですから」


 フィスノはウィラーイン諜報部隊フクロウの一人。これまでカダールとゼラを近くで見ていたこともある。


(レーン様が第二の黒蜘蛛の騎士となろうとするなら、カダール様のような覚悟と意地を見せてもらわなければ)


 設定としてハイアディの姉の役割となる予定のメイドのフィスノ。


(私の妹を任せるには、もっとちゃんとしてもらわないと)


 彼女は彼女でハイアディのことを気に入りつつあり、若干レーンのことをライバル視しはじめていた。だが、本人がそのことに気がつくのはかなり後になってからのこと。


 そんなことになってるとは知らないレーンとハイアディは、フィスノがいないこのとき、地下湖で。


「あ、あの、レーン?」

「動かないでくださいハイアディ。ちゃんと測れないじゃないですか」

「だ、だけど、あの、あん」


 巻き尺でハイアディの身体のサイズを測っていた。


「ハイアディ、どうしました?」

「あう、レーンのいじめっ子……」

「これもハイアディの服の為に、仕方無いことなんです」

「ほんとに?」

「ほんとですよ」

「はう、その、レーンがどうしてもしたいっていうのなら……」


 ローグシーの街の地下深く、そこには触手の先を赤く染めたスキュラが、今日もモジモジウネウネとしている。

 困った顔に少しだけ幸せそうな目をして。



設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様


m(_ _)m ありがとうございます



(ノД`)・゜・。

「よ、よかったー! やっと、『パンツは自分で穿くものだ』とハイアディに教える人が現れて!」


(* ̄∇ ̄)ノ 代わりにフィスノさんVSレーン副隊長、カウントダウンスタート。パンツは脱がせるよりも無理矢理穿かせる方が、変態的らしい。


( ̄▽ ̄;) 触手責めは終わらない?


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