メイドさんが家に来た その4
(* ̄∇ ̄)ノ メイドのフィスノさん。魔法のシチューを完食。
フィスノと二人、晩御飯を食べ終えて、お皿を洗ってお片付け。
「フィスノは、私の見張り、というよりは私の教育がかり? なの?」
「ルミリア様からはそのように、と。ハイアディもレーン様に聞きにくいことがあれば、同性の私の方が聞きやすいこともあるんじゃない?」
「たとえば?」
フィスノが片手で口許を隠すようにして、むふふ、と笑って、
「たとえば、レーン様とどうやってムニャムニャするか、とか?」
「ひえ?」
「これ、けっこうマジメな話なのだけど」
「え?」
いきなり笑みを消すフィスノ。細い目から薄く覗く赤い瞳も笑ってない。真剣な声で言う。
「ゼラ様が我を忘れてカダール様に抱きついたとき、カダール様の肋骨が折れたことがあるの」
「そんなことがあったの?」
「ええ、アシェとクインに聞いてみたところ、そういうこともあり得ると。ゼラ様の場合、まだ進化したアルケニーの身体に慣れてなかったこともあるけど、力の調整を忘れてしまうようなことがあると、ハイアディも同じことが起きるかもしれないって」
あう、それはあるのかも。私も下半身が触手に戻ったときにレーンを突き飛ばしちゃったことがあるから。あのときレーンは咄嗟に受け身をとったけれど、後頭部にたんこぶができちゃったし。本気を出して身体強化したら、腕力とか軽く人を越えちゃうものね。力の加減とかわかってるつもりだけど、それは私達の基準であって人とは違うところもあるし。
でも、ゼラはあのカダールとイチャイチャしてるのよね? それも子供ができちゃうくらいのムニャムニャをして。私はフィスノに聞いてみる。
「あの、ゼラはその、どうやってそれを克服したの?」
「なんでも、無意識で身体強化ができなくなるくらいに魔力枯渇状態になってから、カダール様とムニャムニャすると無事にできるのですって」
「うわぁ……」
「?どうしたの、ハイアディ?」
「無意識で身体強化もできないって、それって魔法も使えない完全無抵抗状態になって、私をどうぞって、相手に差し出す、ということでしょ?」
「そういうことになるのかしら?」
「ゼラは、カダールもあの館の住人も、皆、信頼しているのね」
誰ひとり自分を傷つけないって、信じてるからこそできること。私達が魔力枯渇状態になるって、完全武装解除して丸裸でいるようなものだもの。それも自分から逃げることもできないようにして。
ゼラがカダールに抱きしめられているところを思い出す。あの幸せそうな顔は、信頼するカダールに身も心も全て預けて安心していたから? おっぱいいっぱい男に身を委ねることを信じられるから?
同じ業の者で無くても、自分の弱いところも醜いところも、全てさらけ出して。
あの二人が特別なのかなあ。
私だったら、どうなるの? 私が魔力枯渇状態になって、何もかも全てレーンに預けて、私の身体をレーンが好きにしたら、どうなるの?
レーンが私のことを思うままに、
『心を鬼にしてハイアディの胸を揉みます――』
『まったく、いやらしくなんてしてないですよ。いやらしいというのは――』
『ハイアディの口の中を私の舌で蹂躙するような濃厚なキスを――』
『ハイアディが恥ずかしがって見せてくれないところをじっくりと――』
『直接、舐めてみてもいいですか?――』
「ひゃいいいい?」
「ど、どうしたの? ハイアディ?」
「なな、なんでも、なんでも無いです」
だ、ダメ、それはダメ。うん、私とレーンにはまだ早いと思うの。そんなのされたら、私、破裂しちゃう。ま、まだ心の準備が、で、でもレーンが、どうしてもしたいっていうなら、その、あ、やう。恥ずかしいって言ってるのに、レーンてば、はう、でもちょっとぐらいなら、あ、やん。
「……なんでもないなら、どうして顔を隠してモジモジしてるの? 触手も赤くなってウネウネしてるし……」
「ちょっと、その、刺激が強すぎて」
「ハイアディを見てると、なんだかイジメたくなっちゃうわね」
「なんで?」
「どうしてかしら? えっと、続けていい? 話を戻すとハイアディがレーンとイチャイチャするときは、気をつけてほしいの。でないとレーン様の肋骨が折れることもあり得るのだから」
「う、うん、気をつけます。そのことレーンには?」
「折を見て話すつもりだけど。ハイアディがゼラ様みたいに魔力枯渇になる方法を見つければいいのだけど」
「次に領主館でゼラに会ったときに相談してみる」
「あとはハイアディが人のふりをする知識ね。お料理、お掃除、お洗濯、街でお買い物と、メイドのお仕事を一通り私が教えることになるから」
「メイドの先生?」
「先生というよりは先輩、というのがいいのかしら?」
「えと、ちょっと、フィスノに聞いてみたいことがあるんだけど」
「なに? ハイアディ?」
「フィスノは誰にぱんつを穿かせてもらうの?」
「……え?」
「あの、私達って下着を着る習慣は無いの。アシェとクインは人の中に潜入するのに必要だから覚えたんだろうけれど。私もアシェもクインもゼラも、ぱんつは穿かないじゃない? スキュラ用とかラミア用のぱんつなんて無いから。恥ずかしいから腰巻きとかスカートで隠すけれど」
「え、ええ。アシェとゼラ様はたまに隠すの忘れてマッ裸でうろついたりするけれど」
アシェはマッ裸組だったっけ。でもこの前、領主館で見たときはエプロンを着てたけど。深都には服を着ない姉妹もいたから、それが私には当たり前だったり。私は裸を見られるのは恥ずかしいのだけど。
「それで、私は人のふりをする練習で、レーンにぱんつを穿かせてもらったのだけど、フィスノはこれから誰にぱんつを穿かせてもらうのかなって。やっぱりレーン?」
「あの、ね、ハイアディ」
「はい?」
「パンツはね、自分で穿くものなのよ」
「……え?」
「幼い子供のときは周りの大人が穿かせたりするけれど、大人はパンツは自分の手で、自分で穿くものなの」
「そ、そうだったの? え? じゃ、どうしてレーンは私に穿かせてたの?」
「レーン様が、これまで人に化けたハイアディにパンツを穿かせていたの?」
「う、うん、レーンは、それが自分の役目だって。でも、私、恥ずかしくなって直ぐに下半身がスキュラ体に戻って、上手くいかなくて。何枚もぱんつを破ることになってしまって」
「そお、レーン様が、ふうん? そういうこと?」
「そうなんだ、ぱんつって自分で穿くんだ。知らなかった……」
「二人の仲に干渉するのは最低限、と考えていたけれど、ハイアディに人の常識をちゃんと教える為には……」
フィスノを見ると人指し指と中指を眉間に当てて、何か考え込んでいる。どうしたの?
「……私はお二人の邪魔をするつもりは無いのだけれど、これは一度、レーン様をとっちめ、いえ、ちゃんと話をしないといけないかしら?」
「あの? フィスノ?」
「ハイアディ」
「なに?」
「私とメイド服を着る練習、してみる?」
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
m(_ _)m ありがとうございます
(* ̄∇ ̄)ノ ハイアディは人の常識をちょっと覚えた。




