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ハイアディの地下湖 その5

(* ̄∇ ̄)ノ いろいろ調べられたハイアディの地下湖


「では、月に一度はこの地底湖で水質検査をさせてもらいますね。そのときはハイアディに手伝っていただくことになりますが」

「ここにルブセィラを運んでくればいいの?」

「ええ。加えてハイアディが水に異常を感じたら教えて下さい。水質以外にも水量が異常に増えたり減ったりしたときなど」

「はい」


 人の住む街の水源なんだから何かあったら困るんだろうな。

 ルブセィラとルミリアは地下湖のあちこちを見て、それから二人で私の身体を調べる。


「爪の先、髪の毛の先など、サンプルとして少し分けて下さい」

「い、痛くしないでね」


 ルブセィラが小瓶とピンセットを持って眼鏡をキラーンとさせるのに引いてしまう。うぅ、研究したいってのは解るけど、それで迫られるとちょっと怖い。


「私がやりましょう」


 と、レーンが言ってくれたのでレーンに任せることに。助かった。

 髪の毛の先と指の爪の先をちょっぴり切って、ガラスの小瓶に入れるレーン。小さな匙で触手の粘液もそっととって小瓶に入れる。ルブセィラが小瓶のラベルに書き込んでカバンにしまうのを、ルミリアが見てる。


「ハイアディの地下湖がこんなふうになっているとはね。ハイアディに連れてきて貰わないとここには出入りできないのね?」

「うーん、ここに来るだけなら、上の壺から飛び込めば通路が滑り台みたいになるから」


 私は触手の先で天井の穴を示す。


「あそこからひゅーんと落ちて、たぶんその辺りに落ちるハズで、そこは深く作ってあるから水がクッションになると思うの。だから大ケガにはならない、んじゃないかな?」

「驚いて溺れなければ大丈夫なのね。でもここから地上に人の力で出るのは無理かしら?」

「それは私が運ばないと無理、なんじゃないかな?」


 こうしてルブセィラとルミリアが私の寝床を調べるのは、特に何事も無く終わった。ルブセィラが私の服の入った小さなタンスの中まで見てた。

 この場所はルミリアがハイアディの地下湖って呼ぶので、これがこの場所の名称になりそう。


「二人の秘密の地下湖、の方がいいかしら?」

「あの、詩的な表現の無い呼び方にして下さい」

「そうね、スキュラの大工さんのおうち、という感じでは無いものね」


 私が一人ずつ抱えて石旬を登り、天井の穴から通路を抜けてレーンの家の地下室へと運ぶ。運ぶときはルミリアもルブセィラもなんだか楽しそうでお喋りしながら。

 巨大壺のある地下室に出たところで、ルブセィラとルミリアは長靴から靴に履き替える。

 ルミリアがレーンと私を見る。


「ハイアディがどういうところで暮らしているか、見てみて少し解ったわ。ハイアディが領主館で寝泊まりするには、今のところ大浴場しかないわね。ハイアディが浸かれる浴槽付きの部屋を作るのは難しそうだし」


 うーん、それは人には難しいのかも。


「今後、ハイアディのような深都の住人が来るかもしれない、となると専用の建物が必要になるのかしら? そのときはハイアディの力を貸してもらえるかしら?」

「でも、人に深都の技術とか、魔法とか、見せたり使わせたりしてもいいのかな?」

「そこは、アシェとクインとも相談しましょう。予定では深都から外交官役が来るそうだし、その部屋も必要になると領主館では足りなくなるかしら?」


 カバンの中身を確認するルブセィラがルミリアに言う。


「アシェとクインは領主館に住むのに慣れたようですが。深都から抜け出したという者が一斉に押し掛けたりすると、領主館に隠すのは難しくなりますね」

「そうね。ね、ハイアディ、深都の住人はみんなクインやハイアディのように下半身が大きいのかしら?」

「ええと、姉妹達はみんなバラバラで、大きかったり小さかったり長かったりするから」

「会ってみたいわ。でもそうなると大きくなると領主館に入れないかもしれないわね」

「あのお館の一階は天井も高くて広いから、だいたい入れそうだけど」


 うん、あのお館の一階って、あの蜘蛛の子のサイズで作られてて、なんだか深都の建物と大きさは似てるし。


「一階のホールなら、入れるかな。あ、あの扉のサイズだとアイジスねえ様は通れないかも。でも、アイジスねえ様は陸上では移動するのに人化の魔法を使うし」

「あの扉を通れないのもいるのね。それにハイアディのように水が無いと困るのもいるようだし。私達の為では無く、深都の住人の為、となればハイアディのタコの大工さんの力を使っても良し、とならないかしら?」


 その辺りは深都の十二姉に聞いてみないと。え? タコの大工さん? なんだか可愛い? ルミリアは真面目な顔になって扇子をパチンと閉じる。


「レーン、あなたにはハイアディのことを任せても大丈夫かしら?」

「はい、今のところ私が一番ハイアディのことを理解しています。ルミリア様の信に応えられるよう、全力を尽くします」

「レーン一人で気負わなくても良いのよ。私達もできる限りのことはするから。それと近い内にフクロウの隊員がここに来るから、よろしくね」

「解りました」

「ハイアディもその隊員とは仲良くしてあげて欲しいわ」

「あ、はい」


 うーん、ウィラーイン諜報部隊フクロウの隊員って、あのクチバの部下さんでしょ? クチバって悪い人じゃ無いとは思うけど、ちょっと苦手。気配は読めないし、私の触手掴んで、タコが食べたくなったとか言うし。クチバみたいな人だったらどうしよう?

 私が考えてるとルミリアが私に近づいて、指を伸ばしてくる。そのまま私の頬を、ぷに、と突っつく。えっと、何?


「ふふ、その大きな壺から顔と手だけ出して悩んでる姿は可愛いわね。なんだかイタズラしたくなっちゃうわ」

「そうですね、ハイアディを見てるとちょっかいかけたくなりますね。なぜでしょう?」


 そ、そうなの? 深都の姉妹とはそういうスキンシップはよくあるけど。なぜかルミリアとルブセィラが私の髪に触れたりする。

 ルブセィラが私の髪に触りながら、間近で、じっと私の顔を見る。な、なに?


「ゼラさんも美人ですが、ハイアディもアシェもクインも美人ですよね。タイプは違いますが。深都の住人とは美人揃いなのですか?」

「え? えぇと、そうなの?」

「ハイアディは人のことには詳しくないのでしたね。私から見て皆さん美人です」


 ルミリアが私の髪を指ですきながら、


「そうね。ゼラがカダールに好かれようと進化して、おっぱいが大きくなった、という仮説通りだとすると、深都の住人も想い人の好みの姿になろうとして美人になったのかしら」

「それは、うーん」


 私達は心の在り方が姿や魔法に出るみたいだから。進化前の姿とかの影響もあるけど。姉妹の中には、その、相手がロリコンだったんじゃないの? というのもいたりするのだけど。


「深都のことはあんまり話すなって、クインとアシェに言われてるから……」

「ハイアディは睫毛が長くて、ちょっと垂れ目で色気があるわね」

「えぇと、なんて答えていいか、わからない……」


 間近でにこやかに見るルミリアとルブセィラを見てると、なんだか、私が初めて深都に行ってお姉さま達に迎えられたことを、思い出した。領主館に行ったときは緊張してて、その上、いきなり触手を揉まれて驚いてそれどころじゃなかったけれど。

 初めて深都に辿り着いて、アイジスねえ様に抱き締められて大泣きした。今の私はあの頃より、ずいぶんと落ち着いたみたい。

 人に迎え入れられておなじように感じるなんて、不思議。


設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様


m(_ _)m ありがとうございます。

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