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ハイアディの地下湖 その2

(* ̄∇ ̄)ノ レーンの家を調べてみよう、その2。


 レーンの家の地下室、その真ん中にある巨大壺。ルミリアとルブセィラが台の上に乗って壺の中を覗き込む。


「暗くて見えませんね」

「今、明かりを入れます」


 魔法の明かりを灯して、光る玉を動かして壺の中へと落っことすように。この巨大壺は底が抜けてて、この壺を固定して底の穴を出入り口にして、地下室の更に地下へと続いている。


 私は乾燥に弱いから、水が出てくるところへとけっこう深く掘っちゃった。魔法で水を出すこともできるけれど、できれば自然の水の方がいいから。それに魔法で水を出すと自分の魔力が減っていくし、水を魔法で自給自足してるとジワジワと魔力枯渇になっちゃう。それでローグシーに着いたときに干からびかけたんだし。


 地下の水が出るとこまで土系の魔法で掘っている間は、レーンが井戸の水を汲んで持ってきてくれたのよね。私の為に井戸まで何度も往復してくれて、レーン優しい。


『水を浴びて潤うハイアディは、綺麗ですね』


 なんて、私が水浴びしてるとこじっと見てたりして、きゃう。思い出すと、はうう。


「ハイアディ? 急にモジモジして、どうかしましたか?」

「な、なんでも、なんでもないです」


 ルブセィラが眼鏡に指を当てて私を見て言う。えっと、この二人を私の寝床に案内しないといけないのよね。私がレーンの家に住んでもいいか、調べる為に。


「そ、それじゃ、一人ずつ案内するね、誰から?」

「では、私から」


 ルブセィラが肩から提げるバッグが落ちないようにして前に出る。ルブセィラもルミリアもスカートからズボンに変えて、足は長靴に履き替えている。

 私は手を伸ばしてルブセィラをそっと抱き上げる。


 ……えっと、スキュラの私が抱き上げて、私が作った地下の空洞に案内するのよね? これって人から見るとどうなるの? 

 えーと、スキュラの私が触手を巻きつけて、私の寝床に人を運ぶっていうのは、人から見ると、謎の怪物の巣穴に引き摺り込まれるようなもの、なんじゃないの? それなのにこの眼鏡の研究者はなんでワクワクしているの?


「どうしました? ハイアディ?」

「えっと、ゼラとアシェとクインで慣れてるとは聞いてるけど、ずいぶんと落ち着いてるなあって」

「いいえ、落ち着いてはいませんよ。ハイアディを身近に感じて、ハイアディが作った秘密の住みかに案内される。スキュラとはどのようなところで暮らしているのか? 未知の土系の魔法でローグシーの地下にどのような空間をつくったのか? これからそこに行くなど、胸の高鳴りが止まりません」

「あ、そ、そうなんだ」

「ハイアディ、もし良ければ後程、ハイアディの触手の粘液をサンプルにいただいてもよろしいでしょうか?」

「あ、はい、えっと落ちないように首に手を回してもらってもいい?」


 私が言うとルブセィラは、はい、と応えて私にギュッと抱きついてくる。なんだか、深都の姉妹と同じような距離感。領主館の人達って、やっぱりヘン。

 ルブセィラを抱っこするようにして、触手でも抑えて落とさないように。このままルブセィラを抱えて地下へと。レーンとルミリアが見送る前で巨大壺の中にするするっと。


「斜めに掘っているんですね」

「うん、これなら誰かがうっかり落っこちても、滑り台みたいになってるから大ケガしないかなって」

「なるほど、人のことを考えてくれているのですか。ハイアディは優しいですね」


 優しい? のかな? そんなふうに言われるとは思わなかった。もしもレーンが落っこちてもケガしないようにって、しただけなんだけど。

 斜めに掘った筒みたいな通路の壁に触手をついて、するすると下へと降りる。壁は固めてあるから、表面がツルッとした岩みたいにしてある。水の無い鍾乳洞みたいな感じ? ルブセィラがよく見えるように明かりの魔法を移動させながら。


「けっこう深いですね」

「地下水脈に繋げようとしたら、深くなっちゃって」

「掘った土は何処へ?」

「えっとね、最初はさっきの地下室に圧縮して積んで、下に抜けてからはそこから流したの。もちろん人の街に影響が無いようにして、地下水も汚さないように気をつけて」

「人に気を使っていただいてありがたいです。下にこれだけ掘っても地上に影響は無いんですか?」

「レーンの家は基礎のところを強化して、この通路の周りの土も硬化させたから。ついでに、万一地震が起きて液状化しそうなところも変質させたし、陥没しそうなとこは下から支えたし、前より丈夫になってるハズなんだけど」

「なるほど。ルミリア様からハイアディは深都の大工さんと聞いています。土系と水系の魔法を使いこなす地下の専門家なのですね」

「設計とかはお姉様がして、私はそのお手伝いなんだけど、あ……」


 深都のこと、あんまり人に話しちゃいけないんだっけ。ルブセィラは地下の通路の壁に手を伸ばして、触ったりしながら言う。


「ハイアディが専門的な知識と魔法技術を持ち、人の街に影響が出ないようにと考えてくれているのなら、私も安心です。ローグシーの街に地下から水が吹き出したり、いきなり道路が陥没したり、という危険が無いかが不安なところでしたから」


「……私の言うこと、信用してるの?」

「信用とか、信じるって、どういうことなんでしょうね?」

「え?」

「ハイアディがレーンと共に暮らしたい。その為に調査に来た私とルミリア様を信用させる。または、口先だけでなんとでも言い私とルミリア様を騙す、ということも有り得ますね。ですが、それが?」

「それが? て、ええ?」

「ハイアディが本気になれば、私もルミリア様も瞬殺なのでしょうね。これはハイアディだけでなくクインもアシェもそうでしょう。ですが私の知る深都の住人は、その力で脅すでも無く、私達に相対します。私には深都の都合は推測することしかできませんが」


 ルブセィラは眼鏡の位置を指で直して、私の腕の中で、間近に私を見る。


「カダール様は力の調節が上手くできないゼラさんの腕の中に身を委ねて、そのまま握りつぶされても構わない、なんていう人です。それが相手を信じるということなら、私はまだまだその域にはありません。レーンと共に在りたい、というハイアディが私とルミリア様に不都合なことはしないだろう、という打算がありますから」

「あ、そうなの」

「ですが、カダール様とゼラさんの関係を羨ましくも思う私は、こうしてハイアディに身を委ねることも楽しんでいます」

「……ヘンな人」

「ふふ、ゼラさんは、むぎゅー、としてくれるのですが、クインとアシェはしてくれないのですよね。それがまさかここでハイアディに抱っこされるとは。嬉しいですね」


 くふふ、と微笑むルブセィラ。その笑顔は本当に楽しそうで。なんだか、アシェとクインがこのルブセィラのことを一目置くように言ってたのが、分かった気がする。


「打算、ということであれば、ハイアディが私の魔獣研究を手伝ってくれるのならば、私はハイアディとレーンの仲を応援しますよ」

「お、応援って、私とレーンは、その、そういうのじゃ無くて」

「おや? そうなのですか?」

「レーンは私の恩人で、その、えーと」

「レーンの方はハイアディを側に置こうとしているようですが。ハラード様にもルミリア様にも、いろいろと説明、というか説得のようになってたようですが」

「あう、レーンは、その、どうしてそこまで?」

「さて? それを知る為には観察が必要でしょうか? ハイアディはそれを知りたいですか?」

「えっと、その、あの、……クインとアシェに怒られないようなことなら、協力できると、思うの……」

「私自身、色恋には疎いものですが、ゼラさんとカダール様のお手伝いを少しはできたかと思います。ハイアディへの協力は惜しみませんよ」


 地下の住み処へと続く通路の中で、ヘンな魔獣の研究者と、コッソリ秘密の協定を結んでしまった。

 あう、アイジスねえ様、ゴメンナサイ。


設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様


m(_ _)m ありがとうございます


( ̄▽ ̄;) ルブセィラがずいぶんと株を上げている? 


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