タラテクト・ゼラ その2
(* ̄∇ ̄)ノ ゼラの幼き日の一幕、その続き。
タラテクトのゼラは変化した自分の身体のあちこちを見る。
〈ぷー、なんかすごい脱皮した。前よりちょっと大きくなってる。牙が前よりスゴクなった? なんだか身体が熱い? えーと、ポイズン?タラテクト? になったの?〉
ゼラはカダールを想う意思から進化する魔獣の力を目覚めさせ、タラテクトからポイズンタラテクトへと進化した。黒い身体は少し大きくなりその牙に毒を持つ蜘蛛へと進化した。
〈ウン、これなら前より強い魔獣やっつけられる? 強い魔獣やっつけて食べる。進化する。人間なる! ウン、強い魔獣やっつけにいく!〉
脱皮した脱け殻を残し、ゼラは意気揚々と森へと進む。
しばらくしてから、
〈ぷー、死ぬかと思ったー。なんとか、逃げ切れた〉
高い木の枝の上に逃げたゼラは、身体を震わせて安堵の息を吐く。
〈あの狼、速くて強い。まだ勝てない。むー、どうやったら勝てるのかな?〉
ポイズンタラテクトに進化しても、その毒はまだそれほど強くは無かった。ゼラは狼の背に飛びつき牙を立てたものの、毒をわずかに注入したところで振り払われた。いきなり噛まれて怒った狼から逆襲され、必死に逃げ惑うことになった。
木の多い森の中、いざとなれば高い木に登って逃げられることが、蜘蛛の魔獣ゼラの利点であった。
〈どれだけ進化すると人間になれるかな? カダールー〉
高い木に登ると遠くに人の住む街が見える。魔獣深森に近くハンターが多く住む街、カダールの住むローグシーの街が。
〈カダールに会いたい、ン、ちょっとだけ〉
夜になるのを待って、ゼラはローグシーの街へと侵入する。
「わんわん! うわん!」
「どうした? ジェン?」
〈ぴー!? ちっちゃい狼に見つかった? 隠れなきゃ!〉
夜の街の中、玄関の扉を開けてランプを持った男が出てくる。庭の番犬が飼い主を守るように近づいて、辺りの匂いを嗅ぐ。
〈あのちっちゃい狼、人となかよし? 人にゼラが来たこと教えたの?〉
玄関の扉を開けてもう一人、今度は女が現れる。
「あんた、どうしたの? 何か来たの?」
「わからん、ジェンがこんなに吠えるとは。お前は家に入ってろ。俺は小屋を見てくる」
「あんた、気をつけてね」
〈むー、人と魔獣は一緒にいられない。街の中じゃ、人に見つからないようにするだけじゃダメで、街の中のけものにも見つかっちゃダメ。もっと上手に隠れないと〉
暗闇の中、屋根の上からこっそり見るゼラ。ランプと剣を持ち辺りを警戒する男、その男の側から離れない番犬を見つからないように観察する。
ゼラはこうして気配隠蔽、魔力隠蔽といった能力を高め、人にも犬にも見つからないように街に潜入する技を身につけていく。
魔獣が街に侵入することを警戒する人の街。だが、一人の少年会いたさに街に侵入し、街の住人に何の被害も出さない一匹の蜘蛛は、まるで想定外の存在であった。
〈人を襲わない、家畜を襲わない、ウン、ゼラ、カダールの言ったことちゃんと守る〉
盗まれる物も無く怪我をする者もいない。更には発見することも難しい。ゼラは進化して身体が大きくなるまでは、こうして度々ローグシーの街に侵入していた。
街壁をよじ登り、見張りの守備兵から身を隠すことも憶え、足音も臭いも消す。やがては犬や猫にも警戒されずに街へと潜入できるようになる。
〈前よりちょっと力が強くなったから、これを開けるのもちょっと楽になった〉
ゼラは扉に飛びつき、ドアノブにしがみつくようにしてドアを開ける。
以前のように煙突から領主館の中へと侵入したゼラ。カダールの部屋のドアを音を立てないように開け、コッソリと中へ入る。
〈カダール……〉
ベッドに眠る赤毛の少年。ゼラは動きを止めてカダールの寝顔を見つめる。
〈ゼラ、人間なるから、そのときは……〉
暗闇の中、赤紫の蜘蛛の瞳が小さく光る。
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
バルーンアート
K John・Smith様
m(_ _)m ありがとうございます
(* ̄∇ ̄)ノ 旧領主館に侵入したゼラ、しゅぴっ!




