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真っ赤なお魚

(* ̄∇ ̄)ノ アルケニー監視部隊がハイラスマート領に支援活動に行く道中。カダール視点で。


 川に釣糸を垂らし釣竿を握るが、一匹も釣れない。バシャンと水飛沫を上げてゼラが川から出てくる。


「カダール、大物がとれた!」

「凄いなゼラ」


 ゼラが両手に抱えるように持つのは大きな赤い魚。この辺りでは最大の淡水魚だ。ビチビチと暴れる大魚を逃がさないようにしっかりと抱えたゼラが、川から上がってくる。

 俺は役に立たなかった釣竿を引き上げる。ゼラと二人、のんびりと釣りでもと考えていたが、ゼラが魚を捕まえるために川に飛び込んでしまった。これでは魚が釣れないのも当たり前だが、あんな大きな魚ではこの釣竿が折れてしまうか。


「むふん」


 自慢気に獲物の赤い大魚を持つゼラ。釣竿を置いてゼラの頭をぐしぐしと撫でると嬉しそうに目を細める。


 ハイラスマート領へと水不足解決へと向かう道中。ここしばらく雨が降らなかったこともあり、川の水は水量が減っているようだ。この川はまだ枯れてはおらず、そこに住む魚も元気なようだ。

 エクアドとルブセィラ女史が川の上流を調べに行っている。その間、俺とゼラは休んでいろ、と言われた。一応、今もアルケニー監視部隊が離れて俺とゼラを見張ってはいるが、ハイラスマート領に入る前に二人っきりの時間を作ってくれた、らしい。

 本格的に支援活動となれば忙しくなり、こんな風に過ごすこともできなくなるか。なにやら気を使われているような。


「カダール、おさかな、食べよっ」

「いや、人は生で魚は食べないんだ。肉と同じで」


 ウィラーイン領に魚を生で食べる風習は無い。魚も肉も焼くか煮るかして加熱して食べるもの、というのが一般的だ。

 フクロウのクチバの故郷の東方では、魚を生で食べるサシーミとかいう料理があるらしいが。

 俺はタオルを出して川から出てずぶ濡れのゼラの髪を拭く。

 この地域の名物でもある大きな赤い魚。名前はなんと言ったか? あとでルブセィラ女史に訊ねてみよう。


「ゼラは生で食べるんだよな?」

「ウン」

 

 火を起こし魚を半分に切る。頭のある方をゼラに渡し、さて尻尾の方はどうするか。


「ゼラ、先に食べてていいぞ」

「ンー、カダールと一緒に食べる。待ってる」


 ゼラを待たせるのは悪い気がするので、さっさと調理してしまおう。俺はこれでも騎士訓練校で鍛えられている。野営での野外調理もできる。大雑把だが作るのは早い。

 ゼラが俺の手元をじっと見ている。俺が調理をするのを見るのは珍しいだろうか?

 魚が大きいので鱗を落とすよりは縦半分に切って、骨と内臓を落として内側から切り身にする。串に刺して塩を振って地面に刺して焚き火で塩焼きにする。

 しかし大きいだけあってまだ身がある。こっちは鍋に入れて煮るとするか。


「ゼラ、この魚が焼けるまでもう少しかかりそうだ」

「ウン」

「だから、部隊の皆の為にもう一匹捕まえてきてくれないか?」

「わかった! とってくる!」


 ゼラは左手と左前脚をしゅぴっと上げて、川の方へと走る。しばらく川の水面を、じっと見てから、


「見つけたっ!」


 高くジャンプして川にザブンとダイブする。バシャバシャと水音を立てて、先程よりは一回り小さいがもう一匹、赤い巨大魚を抱き締めるように捕獲する。

 ゼラには釣竿は要らないようだ。

 ゼラは川からザブザブと上がる。キョロキョロと周りを見て少し離れた草むらの方へと進む。

 俺とゼラに気を使っていたのか、身を潜めて監視しているアルケニー監視部隊の隊員へと。


「ウン、おさかなー」


 受け取った女騎士はビチビチと暴れる赤い巨大魚を持って困った顔をする。


「そっちは部隊の方で調理してくれ」

「あ、はい、そうします。ゼラちゃんありがと」

「ウン」


 女騎士が赤い巨大魚を抱えて部隊の方に。残る隊員、男ハンターと女魔術師の二人が、魚を抱えてフラフラ歩く女騎士を笑って見送る。

 その二人を食事に誘う。


「こっちで一緒に食べないか?」

「いやー、二人のデートを邪魔するのも」

「デートなのか? これ?」

「違うんですか?」

「獲物の魚が大き過ぎるから、俺一人では食いきれん。そろそろ焼き上がるとこだが」

「えーと、じゃ、お邪魔します」


 野外なのに家に入ってくるようなことを言う。俺はまた新しいタオルを出してゼラの髪を拭く。日差しが強いので直ぐに乾くだろうか?


「ゼラは魚を捕まえるのも上手いんだな」

「ウン、あれは捕まえやすいよ?」

「そうなのか? 水量が減っているのと関係あるのか?」


 魚の焼き加減を見る。うむ良さそうだ。


「さあ、食べようか」


 アルケニー監視部隊の隊員二人とゼラと俺で焚き火を囲む。俺と隊員は塩焼きと煮込みで、ゼラは生で、同じ魚を美味しく食べた。

 少し熱いくらいの日差しの下、日を浴びて流れる川がキラキラと光る。

 頭付きの巨大魚を手にかぶりつくゼラが満面の笑みで。


「カダール、美味しいね」

「あぁ、美味いな、ゼラ」


 ゼラがもぎゅもぎゅと赤い巨大魚を食べる。ゼラが食事をするところは、初めて見たときには驚いたものだが。

 こうして落ち着いて見ると、ゼラの食べる様は野性味に溢れて生き生きとしていて、惹きつけられる。

 そして塩を振って焼いただけのシンプルな調理でも、やはり一緒に食べる相手こそが最高の調味料だ。

 串焼きにした魚の切り身を口に入れる。

 うむ、美味い。


挿絵(By みてみん)

設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様


バルーンアート

K John・Smith様


m(_ _)m ありがとうございます


◇◇◇◇◇


K様d( ̄  ̄;K

「要望あります」


ノマ(* ̄∇ ̄)ノ

「何でしょう?」


K様\(⌒-⌒;K

「鯉のお話をスピンアウトに。私ひとりが見るのはもったい無い。もったい無いと思うので、NOMARさまがよければ、そして、機会があればぜひスピンアウトで公開してください」


ノマ(; ̄▽ ̄)

「いいの? アレはバルーンアートお礼にK様に差し上げたものなのだけど?」


K様♪(´▽`;K

「加筆、改作大歓迎。くっくっく、原典はわが手に!! などと思いつつ。お話自体は、蜘蛛意吐ファンと共有したいデス」



(* ̄∇ ̄)ノ というやり取りがあり、ちょいと直してスピンアウト収録ー。


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