家出人捜索隊の日常 その2
(* ̄∇ ̄)ノ 深都の捜索隊、何やってんの? パート2。
「では次は、こちらの大根をご覧あれ。これぞ東方刀術の技の冴え。我が妹の二刀の技前をごろうじろ。おっとそこのお子様、危ないので一歩、下がりおれ。では、いざ、いざいざいざ、ハッ!」
カッセルが白い大根をポイと高く投げあげる。とある街の広場にて、カッセルとユッキルが大道芸を披露する。
東方風の着物を来た可愛らしい女二人の旅芸人。珍しいもの見たさにそれなりの人が集まっている。
二刀をブラリ下げたユッキルがヒョイと軽く跳び、落下する大根に二刀を振るう。
「はあ!」
口笛に似た鋭い風切り音がする度に、白い大根はスパスパと斬れる。空中で幾度も二刀を振るったユッキルは、着地と同時に刀の背で持ち上げるように、斬った大根をヒョイと見てる客の方へと投げる。
「うわ、おっと」
見物していた革のチョッキの青年が慌てて大根をキャッチする。ユッキルの斬った白い大根は、測って作ったような綺麗な白い六角柱へと。
「「おおー、」」
青年が手の平に立てた白い六角柱を見て、見物客が声を上げる。そこには剣で刻まれた簡素な似顔絵がある。ニッコリと笑う女の子の似顔絵は二人の旅芸人に似ている。
「その大根は今宵の鍋にでも如何かな?」
微笑むカッセルに言われ、革のチョッキの青年は、こりゃすげえ、と、斬られた大根を左手に、右手で銅貨をカッセルとユッキルの前に置かれるカゴにチャリンと投げ入れる。
「さてさて、次は何をお見せしようか?」
カッセルは赤い布を一枚取り出し、ヒラヒラとはためかせながら見物客を伺うようにゆっくりと舞う。次の芸を期待する見物客から、銅貨がカゴに次々と投げ込まれる。
リス姉妹は旅芸人しつつ北方へ。楽しく旅芸人をしているうちに本来の目的、おっぱいいっぱい男を見定める、という目的を見失いつつ盾の国北方、メイモント王国までやってきた。
深都からローグシーの街までは遠く、進む方向を間違えたこともあるが、北回りに迂回することにより深都からの捜索の目を眩ませていた。
一通りの芸を終え、カゴな中の銅貨を見て今日の稼ぎを計るカッセルの前に、白い雪がヒラリと舞い降りる。
「雪か、うむ、そろそろ冬か」
「姉よ、冬ごもりとするか?」
「旅の芸で金はある。寒い思いをせずとも、人の宿で長逗留としようか。骨休めだ」
「ならば、大部屋貸し切りにして人が入らぬようにすれば、正体を現して寝られるか」
「旅芸人として、芸を修練する広さが必要、とでも言い訳するか」
そしてカッセルとユッキルは街の宿で冬を過ごすことになる。代金を受け取った宿屋の主人が首を傾げることになる。
「……前金でかなり貰ったけれど、夜は絶対に部屋に入るなとか、注文するのが木の実ばっかりとか。しかも子供の旅芸人の二人旅? 可愛いけど、なんでこんなに金持ってんだ? 剣の腕も立って魔獣狩りもしてたって言ってたけど、あの部屋のお客さん、謎だなあ」
雪の降り積もるある日、街の食事処にて。ハンターの装いの男達が酒を飲みながら語っている。
「俺は見たんだよ、吹雪の牙爪山で、だからほんとだって」
「雪山の中、薄着で歩く女なんて、いるわけ無いだろ」
外は雪が吹雪に、盾の国、北方のメイモント国では長い冬になる。
「いたんだって、真っ白な長い髪をなんか豪華な髪型にした女が」
「いたとすりゃあ、アンデッドか雪の魔女か」
「その女がイヴルベアを一撃で血祭りにしたんだよ」
「ハンターもてこずるイヴルベアを、どうやって一撃でやるってんだよ」
「わかんねえよ。その派手な白髪の巻き毛女が片手を上げて、らふる、とか言ったらイヴルベアがザクザクの血塗れになって」
「聞いたことも無い魔術だな。風系か? 呪文は?」
「呪文も唱えた様子は無いし、印を切ったりとかもして無かった」
「だったらそれは魔術じゃ無いな」
「だな、お伽噺の魔法使い、雪の魔女だろ」
「お前、寒すぎて変な幻覚見たんだろ? そのイヴルベアの死体は?」
「そんな怖えもんに近づけるかよ。見つからないようにこっそり逃げるので精一杯だっての」
「わかった、わかった。んじゃ、そのイヴルベアの死体探しに牙爪山行くか?」
「やだよ、この寒いのに」
「せめて雪が少なくなってからにしよーぜ」
「くっそ、誰も信じちゃくれねえ……」
他の男達が笑う中、話していた男は自棄になって酒を煽る。
そしらぬ顔で男達の話を聞いていた、近くのテーブルに座る双子の旅芸人、カッセルとユッキルはクルミ入りのパンをもくもくと食べる。暖かなシチューを、はふはふと口に入れる。
「白い派手な髪型の女か、スファルスフィアか?」
「豪華な巻き毛で、らふる、ならばスファルスフィアの白翼千破だろう」
「人に化けても、人の風習を知らずにハンターに目撃されるとは迂闊な」
「しかし、ここまで追ってきていたか」
「人の町で長期逗留するには、正体がバレるリスクが高まる。その盲点をついて町で冬ごもりすることにしたわけだが」
「冬山にこもれば、スファルスフィアに見つかっていたかもしれん」
「雪が溶ければローグシーに向かうか」
暖かな食事処でクルミ入りのパンをまくまくと食べる双子の旅芸人。
その頃、雪が真横に飛ぶような吹雪の牙爪山では、雪の中でも白く真珠のように輝く白い巻き毛の派手な女が、薄着で雪山の中をうろついていた。
「あー、寒いわ。寒いですわ。いったい何処に行ったのかしらあの双子は。それに何ですかこの山は? なんで熊が冬眠もしないで、ドルルルルとか言って私に向かってくるんですの? 人に化けてるとはいえ、私相手に勝ち目なんて無いでしょうに。そんなこともわからないんですの? なんだか片目が潰れて狂化してたみたいですけど? あぁもう、これだけ探して見つからないんですから、もういいですわよね? 帰って炬燵でぬくまって、一杯呑んで寝ても? 私、がんばりましたわよ。うん、やることやりましたわ。だいたい個人の捜索とか私は苦手なんですからね。人に化けたら派手過ぎて、人の住むところに潜入するのは無理だって、十二姉にも言われてますし。それにこの辺りの地図も書き直しはできましたわ。うん、この地図を見ながら炬燵で一杯。今日の捜索の仕事はもう終わりですわ。もー今日は帰って一杯呑んで寝ますっ」
この冬、吹雪の爪牙山に雪の魔女が現れた、という噂が北方メイモントで少し流れることになる。雪山でハンターを惑わし凍死させるという、お伽噺の雪の魔女。
◇◇◇◇◇
ローグシーの街、領主館の一室で深都からの大使アイジストゥラは頭を抱えていた。目の前に立つクチバが気の毒そうに見ている。
アイジスは机の上の紙を見る。ウィラーイン諜報部隊フクロウの報告書だ。
「これも、それも、おそらくは……」
「やはり、深都の住人でしたか。田舎の買い物に宝石や金塊、今は無き国の古い金貨などを出したり、魔法の使用を目撃されたり、不気味な魔獣の影を見た、と噂になったりと、あちこちで囁かれています」
「一旦、捜索隊は全員撤収させよう」
「深都の住人がどうしてこうも噂に登ることに?」
「家出組捜索隊は、空を飛べる者に任せたのだが、その中に人の風習を知らない者もいる。捜索の人手を増やす為に、普段、深都の外に出さない者も捜索隊に入れたのだが……」
「深都の住人は、誰もがアシェやクインのように人の中に潜入できるのかと思ってましたが」
「深都の事情はあまり話せないが、アシェとクインは十二姉も重宝している。その、人の常識というものに理解があるのは、少数なんだ。捜索の際、人里に近づかぬように言ったのだが」
「なるほど。ですがこのままでは、我々ではごまかしきれません」
「捜索隊を撤収し、人員を制限して再教育する。その、迷惑をかけてすまない」
「宝石に金塊、古代金貨、古風な装身具など、こちらで可能な限り回収してますが」
「経費がかかるようなら、深都から出すことも考えるが」
「アイジスはローグシーの街と深都で、金のやり取りや貿易などはしたく無いのでしょう? こちらでなんとかしますよ」
「迷惑をかけてすまない」
「いいえ、これはこれで、アイジスに貸しができるというもの」
「何か、要求があるのか?」
「そーですね。アシェによる対魔法訓練、クインによる対魔獣戦闘訓練、ハイアディによる特殊建築物健造への協力要請、ルミリア様の研究への助言、などなど。お願いしたいことはいくつもあります。アイジスは何処まで、深都の住人が我々に関わることを許して下さいますか?」
「……一考し十二姉と相談する」
「アイジスを困らせるつもりはありませんから。フクロウで協力できることがあれば、なんなりと」
微笑むフクロウのクチバの前で、アイジスは両肘をテーブルにつき、両手で頭を抱え俯く。
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
m(_ _)m ありがとうございます
( ̄▽ ̄;) アイジスをいじめるつもりは無いのですが……、




