ハイアディ、領主館へ行く、4
(* ̄∇ ̄)ノ ハイアディとレーン、ウィラーイン一家と話し合います。
テーブルと椅子が部屋の隅から運ばれる。メイドさんと執事さんが部屋の真ん中にテーブルを置く。
「レーン、ハイアディ、楽にしてくれ」
「はい」
レーンが椅子に座る。テーブルを挟んで正面にハラード、右にルミリア、左におっぱいいっぱい、じゃなくてカダール。その後ろに蜘蛛の子ゼラ。
ゼラはカダールの後ろからカダールの両肩に手を置いて、胸をカダールの頭に乗せるみたいにしてる。
私も真似してレーンの後ろに。レーンの肩に手を置いて楽にする。うん、なんだかレーンを盾にしてるみたい? この位置ちょっと安心する。
テーブルの上には紙が何枚か。
「レーンの報告とフクロウの調査でいくつか解っているが、ハイアディから直接聞きたい」
「はい」
この街の領主、ハラードに私がローグシーの街に来た経緯と理由と話してみる。目の前の三人が見てるのがレーンの報告書、かな?
私が道に迷ってたときのことは省いて、
「それで、水辺が見つからなくて、魔力も回復できなくなって、干からびかけたところをレーンに助けてもらいました」
「それ以来レーンが匿い、レーンの家の地下室に身を隠していたと。ふむ、レーンよ、街にスキュラが現れ騒ぎとなるところを未然に防いだ、その咄嗟の知恵と行動は実に素晴らしい」
「ありがとうございます、ハラード様」
「そして助けられたレーンに恩義を感じたハイアディは、レーンに何か恩返しをしたいと。これはフクロウのクチバの報告にあるが?」
「あ、はい、そうです」
う、うん、レーンに何かお礼をしないと、深都の住人が恩知らずって思われちゃダメよね。って、何処まで見られているの? ハラードの側に立つクチバっていう女、いったい何者なの?
ほんとはレーンと離れたくないのが本音なのだけど、これは言わない方がいい?
カダールが手元の紙から顔を上げて、私の顔を見る。
「ハイアディ、深都について少し聞きたい」
「えっと、深都のことは、人にはあまり話せないんだけど」
「それは知っている。だが、深都で俺とゼラはいったいどんな風に見られている? 俺とゼラを間近に見たいと、五人の脱走者が出たことは知っている。ハイアディもそうなのだろう?」
「うん、だって業の者が人の男とイチャイチャしながら暮らすだなんて」
「やはり、俺とゼラは珍しいのか?」
「珍しい、というか、なんていうのか。えっとね、業の者が人の男と人間から隠れてこっそり一緒になったことは、すごく少ないけどまるで無いわけでも無いの。だけどね、家族も受け入れて、街の人達も受け入れて、教会まで認めて、それで人の街中に堂々といるなんて、前代未問なの。深都の歴史にも例が無いの」
「それで実際に目にして見たいと思うわけか」
「カッセルとユッキルは、相手の男を見定める、って言ってたっけ」
「深都の住人にそれほど注目されるなら、今後も深都を抜け出してローグシーに来る者が、また出てくる可能性は?」
「うーん」
ちょっと考える。蜘蛛の子とおっぱいいっぱい男がイチャイチャしてるところを見て、キャアキャア騒いでいた私の姉妹達。食い入るように見ていたお姉様達。
「うん、他にもローグシーに来たがる深都の住人は、いっぱいいそう」
「……それなのにレーンと出会ってからはレーンに夢中になって、最初の目的は忘れてしまったと?」
はう、フクロウのクチバに呆れたように言われた。
「そ、それは、その、おっぱ、じゃ無くてカダール以外のローグシーの街の男の、レーンが、私を怖がらなくて、側に置いてくれるのが不思議で、もしかしてカダールだけじゃ無くて、ローグシーの住人がそうなのかも、とか、そこが気になって」
「俺だけが特別珍しいわけでは無いと知ってもらえるといいが。深都の方では抜け出した者を探すため捜索隊が組まれ、見つけ次第、連れ戻すということらしい」
うん、それはそうだよね。これまで見つからずに来たけど、これでレーンとの暮らしもおしまい、かな。
「それでハイアディはどうしたい?」
「どうしたい? って?」
カダールは手の紙をピラリと振って、
「レーンの報告書では、ハイアディは俺とゼラとローグシーの街に興味津々だとある。無理矢理連れ戻しても、また脱走してローグシーに来るかもしれないと危惧している。これは本当か?」
レーン、そんなこと書いて報告してたの? でも、レーンと会って、おっぱいいっぱい男だけじゃ無くて、レーンみたいな人もいるって、知ってしまった。もしかしたら、このローグシーの街はこんなことがあって当たり前の変な街なのかもしれない。
私、深都に連れ戻されてどうするの? 深都で以前のように大人しく暮らせるの? レーンと一緒にいるだけで、胸がドキドキして、じわあって熱くなる。こんな熱を知ってしまって、それでレーンと離されて、それから私は?
蜘蛛の子ゼラが、じっと私を見てる。
「ハイアディは、どうしたいの?」
「私? 私は、」
「ハイアディがしたいこと、言ってみて」
私がしたいこと。上から見下ろすと、真下から見上げるレーンと目が会う。ちょっと不安そうに私を見上げるレーン。二人っきりになると、いたずらっ子みたいで、ちょっと寂しがりかも、と思うレーン。レーンにそんな顔で見つめられると、胸の奥がキュンと鳴る。
「私……、私、もう少し、ローグシーの街にいたい」
言って正面を向く。……あれ? どうしてハラードもルミリアも、ほっこりしたような顔で私を見てるの? ゼラは何に頷いてカダールの肩を叩いているの?
「わかった」
カダールがひとつ頷いて言う。何がわかったの?
「連れ戻されても、また深都を抜け出しローグシーの街に来るかもしれない。そして他にも深都を抜け出して来る住人がいる。ここで問題になるのは、俺達人間には深都の住人の魔法が見破れ無いことだ。街に慣れていない者はその行動から怪しいと目をつけることはできるが、正体を見抜くことはできない。ハイアディであれば、人化の魔法で人に化けた深都の住人を、見抜くことはできるか?」
「それなら、だいたいできるけど?」
「ならばこちらから頼みたい。ハイアディが人に化けてローグシーの街を見回り、人に化けた深都の住人を見つけたらウィラーイン家に伝えて欲しい」
え? それって? カダールの言ったことにハラードが続けて言う。
「ふむ、ハイアディがこの役目を担ってくれたなら、深都の住人とローグシーの街で、余計ないざこざは減らせるというもの。ワシらとハイアディでそういう話がついた、と、アシェとクインには説明しよう」
「あとはハイアディの住むところね」
ルミリアがニコニコして言う。
「乾燥に弱いということだけど、領主館の部屋でハイアディに都合のいいところを用意するのが難しいわ。水槽付きの部屋を新築しないと無理のようね。それでレーンの家の地下に作ったという隠し部屋、そこを私とルブセィラで調べてもいいかしら? ローグシーの街で地盤沈下とか、地下水が吹き出たとか、あると困るもの」
「私、水系と土系の魔法が得意で、そんな街に被害が出るようなことしません」
「魔法が得意でも、土木や建築の知識が無いと上手くできないでしょう?」
「私は深都で建物の仕事してたから」
「あら、ハイアディは深都の大工さんだったの?」
「えっと、建物と地下の上水道、下水道とか」
お姉さまが設計して、私と同じ水中組とか地下組で作ったり点検したり掃除したりしてた。
深都もそこに住む住人がいるのだから、建築する役目も清掃の役目もいるのだけど。そこは人の住むところと同じなんじゃないの? 扱う技術とか道具とか魔法は違うんだろうけど。
私が言うとルミリアの笑みが深くなる。なんで?
「そう、ますます興味が湧いたわ。私とルブセィラで二人の秘密の地下室を調べて、何も問題無ければ、ハイアディはそこに住んでもらうわ」
え? いいの? この街にいてもいいの? レーンの家にいてもいいの?
ハラードが、うむって頷いて。
「ハイアディが街の見回りを手伝ってくれることが条件になるが、どうかの? やってくれまいか?」
「あ、はい、やります」
私、まだこの街にいてもいいみたい。何故かハラードとルミリアは楽しそうにニコニコと。ゼラはむぎゅってカダールを後ろから抱きしめてる。
クチバだけが、はぁ、とため息して苦笑してるのは、何で?
見下ろすとレーンがホッとした顔をしていた。レーンの頭を撫でたらレーンはちょっと恥ずかしそうにして、正面に向き直って姿勢をピッと戻した。
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
m(_ _)m ありがとうございます
(* ̄∇ ̄)ノ ウィラーイン一家が理由を作りつつ、ローグシーの街の混乱が起きないように。ハイアディは街の見回りという仕事をすることになりました。
( ̄▽ ̄;) 改めて、ハイアディのキャラデザと産みの親、カセユキさん。
ハイアディの大工設定などなど、K様。
変態シチュエーション演出、ノマ、です。
ぱんつを穿く練習は、変態に入るのかな?




