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ハイアディ、領主館へ行く、3

(* ̄∇ ̄)ノ ハイアディとレーン、領主館へとご挨拶に。


 馬車が止まる。領主館に着いたみたい。

 もう一度、人化の魔法で人に化けて、馬車から下りるときは人の振りをしないと。


「サンダルが弾けてしまいましたね」


 レーンが手にするサンダルは、私がスキュラ体を現したときに壊れてしまった。底の部分しか残っていない。はう。


「ハイアディが裸足で歩くのも良くないので、私が領主館の中まで抱っこして運びましょうか」

「え? 抱っこ?」


 レーンが私に手を伸ばす前にクチバが止める。


「待ちなさい。また妙なプレイでハイアンディプスが興奮するのは不味いので、レーンは迂闊にハイアンディプスに触らないように」


 みょ、妙なプレイなんてしないもん。

 ……レーンの抱っこ、はう……、


「靴を持って来て下さい」


 クチバが馬車の外に声をかける。用意してもらったちょっと大きめの靴を履いて、クチバに手を引かれて馬車を降りる。

 領主館の館は大きく、玄関の扉も大きい。何人かの人が見守る中で領主館の中に入る。

 館の中は広くて、造りは違うけれどなんだか深都の建物を思い出す。蜘蛛の子に合わせて作られた建物は、私やお姉さま達が使う深都の建物に大きさが似ている。

 本当に蜘蛛の子の為に作られたんだ。


「こちらです。ここでしばらく待って下さい」


 クチバに案内されて館の中の一室へ。この部屋、床に何も敷かれてなくて磨かれた石の床だ。テーブルと椅子が隅に寄せられてて広い。

 レーンを見ると服を見直してから、ピシッと姿勢を正している。私も真似して隣でピッて立つ。

 待っていると扉が開いて人が入って来た。金の短い髪に金の髭のおじさま。赤い髪に扇子で口元を隠すおばさま。

 続けて来るのは、赤い髪の、あれはおっぱいいっぱい男だ。深都の生中継で見たときよりマジメな顔してて、カッコいい? 続いて部屋の大きな扉を抜けて、蜘蛛の子が部屋に入ってきた。

 本当に人と一緒にいるんだ。平気で当たり前って顔で人と一緒に並んでいる蜘蛛の子に驚いてしまう。

 下半身が大蜘蛛、そういうのは深都で見慣れている。だけど赤毛の男の肩に手を置いて、くっつくみたいに一緒にいるのが当然、というのを目の当たりにすると、なんだか、変な感じ。


 隣のレーンを見ると右手を胸に当てて、深々とお辞儀をしている。私も慌ててレーンの真似をして、胸に手を当てて頭を下げる。


「ハイアンディプス、貴女はワシに臣下の礼をせずとも良い」


 そうなの? 金の髭のおじさまが言うので頭を上げる。


「貴女はこのウィラーイン領の領民では無いのだ。ワシに頭を下げることは無い。そしてローグシー街守備隊、副隊長レーンよ」

「は、」

「ハイアンディプスに関わることで話さねばならんことも多い。ここからは礼儀は不要、思うことを述べよ。戦時と同じく、さっさと決めねばならんしの」

「解りました、ハラード様。では、こちらに居られるという、ハイアディの同郷の者は? 同席しないのですか?」

「アシェとクインに会わせる前に、ワシらで話を通しておいた方が良かろうと、二人には待ってもらっておる。ハイアンディプスには後でアシェとクインが話があるので、残ってもらうことになる」


 顔を上げたレーンがキリッとして、金の髭のおじさまと話をする。お仕事モード? なんだかレーンがカッコいい、頼もしく見える。

 扇子を片手に持ったおばさまが扇子をパタンと閉じる。


「ハイアンディプス、初めまして」

「は、初めまして、こんにちわ」

「はい、こんにちわ。私がルミリア、よろしくね」


 ふふ、と笑う赤毛のおばさま。続けてそこの人達が順に自己紹介してくれる。金の髭のおじさまが、ハラード伯爵様。おっぱいいっぱい男の名前がカダール。おっぱいいっぱい男って口にしないように気をつけないと。蜘蛛の子が、ゼラ。なんだか赤紫の目をキラキラさせて私を見てる?

 金の髭のおじさま、ハラード伯爵様が私に近づく。


「さて、ハイアンディプスとは話をする前に先ず聞いておきたい」

「あ、はい、なんですか? ハラード様?」

「ふむ、レーンはワシの部下でありそう呼ぶが、それをハイアンディプスが真似をすることは無い。ハイアンディプスは深都の者であり、人の身分とは無縁であるからの。アシェとクインからは、ハイアンディプスがあまり人の事を知らぬ、と聞いてはいるのだが?」

「あ、えと、はい。アシェとクインと違って、外の仕事とかして無いから」


 アシェとクインは人に紛れていろいろ調べたりしてるから、人のことはよく知ってるんだろうけど。私はそういうのできそうに無いから、ずっと深都の中にいたし。

 ……おっぱいいっぱい男と蜘蛛の子を見るまで、人をちゃんと見ようという気持ちにならなかったし。スキュラなんて人に怖れられるだけだもの。

 扇子を持った赤毛のおばさま、ルミリアが頷いてる。


「それなら、ハイアンディプスは人にへりくだるような態度は取らない方が良いでしょうね。クチバに調べさせたのだけど、レーンにはハイアディ、と呼ばせているのね?」

「あ、はい」

「私達もハイアディと呼んでもいいかしら?」

「えっと」


 隣のレーンを窺うとコクリと頷いてる。うん。深都の皆って長い名前が多いから略して呼ぶのが当たり前なんだけど、そのことをいちいち断るんだ。人ってめんどくさい?


「ハイアディと、呼んでください」

「ウン、ハイアディ」


 言ってツツツと近づいて来るのは、蜘蛛の子ゼラ。


「ね、ハイアディ、正体見せて」

「え?」

「ゼラ、スキュラは見たこと無い。ハイアディ、見せて」


 ゼラがキラキラした目でさらっと言っちゃう。

 ふえ? いいの?


「街で正体を出されるのは困るが、この領主館の中では大丈夫だ」


 赤毛の男、カダールもそう言う。扇子のおばさまが続けて、


「クチバの話を聞いて、それでこの部屋の敷物を片付けたのよ」


 あ、触手の粘液がついても大丈夫なように? 私の触手を覆う粘液は私がいろいろと操作できるんだけど。レーンの家を汚さないように無味無臭で、私の身体から離れたら直ぐに乾燥させたりとか、できるんだけど。

 私がスキュラ体を出してもいいように、気を使ってるの?

 じゃあ、


「えと、こんな感じです」


 靴を脱いで下半身をスキュラ体に戻す。スカートの中から私のほんとの下半身、(あおぐろ)い触手が伸びる。ほんとに大丈夫なのかな?


「おおー」

「ふえ?」


 蜘蛛の子ゼラが私の触手をぐにっと鷲掴みにする。


「むにむにしてぬるぬるしてる。カダールー、これおもしろいよ?」

「どれどれ」


 ひえ? 赤毛の男まで私の触手をふにって、あ、優しく触ってくれてる。


「じゃ、私も」

「ワシも」

 

 えええ? なにこの人達? 人間って私の姿を見たら、バケモノって怯えるか、邪神様とか言い出すものじゃないの? あ、やう、むにむにしないで。レーンも初めて見たときには驚いてたのに、クチバはずっと隠れて監視してて、いつ初めて私の正体を見たかは知らないけど、でも、え? はう、触手が赤くなっちゃう。ひええ?


「おー、にゅるってするー。色が変わってきた?」

「これがスキュラ、タコに似てると聞くが俺は絵図でしか見たこと無かったから、こういう感じなのか」

「ふむ、ここは海から遠いからタコを見る機会も無いからの」

「私とハラードは南方に行ったときに見たことはあるけれど、タコは触手が八本じゃ無かったかしら?」

「ハイアディの触手はかなり弾力があるの。数も二十本以上か」


 ひゃああ、四人がかりでふにふにしないでえ。あ、くすぐったい、やだ。頑張ってワンピースのスカートを抑える。スカートを捲られて、ぱんつ穿いてないってバレたら、ちぢょだと思われちゃうぅ。はや、にゅるってしないでえ。なんなのこの人達? 助けてレーン。レーン?

 レーンを見たら、あら? なんだかレーンの顔が不機嫌そう?


「ハラード様、ルミリア様、その辺で。ハイアディが困惑しています」

「ふむ、そうか」


 はー、はー、四人がゆっくり離れてく。私はレーンの背中の後ろに逃げる。


「これで緊張は解れたかしら? さ、ハイアディ、遠慮無く話してちょうだい。どうしてローグシーの街に来たかを教えてくれないかしら?」


 赤毛のおばさま、ルミリアが、なんだか満足そうに言う。

 これがおっぱいいっぱい男の家族? やっぱり他の人間と違う。この人達、ヘン。


設定考案


K John・Smith様

加瀬優妃様


m(_ _)m ありがとうございます


(* ̄∇ ̄)ノ 辿り着いた!

( ̄▽ ̄;) そしていきなりセクハラ、というかウィラーイン家ではいつもの、という感じ。


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