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スキュラねーさま お料理編 後編

ハイアディのお料理、彼が試食に挑戦


「ただいま戻りました」

「ひうっ!?」

「ハイアディ? 何故、台所に?」


 か、彼が帰ってきた? え? いつもよりちょっと早い? あ、違う。シチューの前で、彼がこれを口にするのを想像してたら、ずいぶんと時間が過ぎてたみたい。妄想の刺激が強すぎてトリップしてた? もう夕方なの?


「?なんだか、いい匂いがしますね」

「え、えっとね。その、シチューをね、作ってみたの」

「ハイアディがシチューを?」


 彼が首を傾げて私を見る。


「ハイアディは私の見てないところでいろいろしますよね。地下を改造したりとか」

「そ、それは、その、私、スキュラだから、乾燥に弱くて、私が入れるお風呂とか欲しいし……」

「別に家が壊れなければいいんですけれど。ただ、するなら私が見てるところでして欲しいんです」


 そ、それは、見られてるとなんだか、恥ずかしいし。だけど、お礼とかしたいし。


「ハイアディは料理が得意なんですか?」

「ううん? お料理は、初めて」

「……初めて、ですか」


 器を取って私が作ったシチューをよそう。うーん、彼が作ってくれたものに比べるとかなり色が違うんだけど。


「その、身体にはいいハズなんだけど、どうかな?」


 私の作ったシチューを見た彼の顔が、ピキ、とひきつる。あう、やっぱり、ダメ?


「す、凄い色ですね。白に近い灰色……、石灰でも溶いたような、粘土のような」

「うぅ、」

「それなのに匂いは美味しそう? 味見してみても?」


 え、食べてくれるの? 私がウンウンと頷くと彼はシチューを一匙すくい、恐る恐る口に運んで、スプーンを、く、口に運んで、口に入れちゃった。

 私の下半身の触手の粘液入りシチューを、口に入れちゃったー! わ、私の粘液ががが、彼の口ににににー! ごっくん、ごっくんてー!? ひゃう。


「……こ、これは? いったい?」


 彼の目が驚きで見開く。スプーンでシチューをかき混ぜて、もう一口、更に一口。首を傾げながらも口にシチューを運ぶ。ひゃうう。


「……見た目からは想像もつかない深みのある味わい。今までこんな味のシチューを食べたことはありません。むむ、ジャガイモはジャガイモの味、ニンジンはニンジンの味。なのに、このとろみのある白灰色の石でも溶いたような見た目なのに、このシチューの味は……」

「あ、あの、美味しくない? 不味い?」

「……とても美味しいです。不思議な、だけど優しい味がします」


 お、美味しい? やった! 彼が美味しいって、私の粘液、美味しいって! 美味しいって! きゃう!


「美味しい上に、これはなんというか、やや甘口のシチューの熱が、腹から全身に、活力を染み渡らせるような。力が湧いてくるような」


 わわわわたしの粘液が、彼の身体の中に、染み渡る? それで、元気になっちゃうの? ひゃうううう!


「どうやってこの味を? うちの台所にある調味料でこんなシチューが作れるとは思えないのですが」

「え? えぇと、それは、」

「それにハイアディ、なんで顔を手で隠してモジモジしてるんですか?」


 そ、それは、だって、その、あなたが私の粘液入りのシチューを美味しいって、食べるから、


「ハイアディ? なんで首まで赤くなってるんですか?」


 や、やあ、今の私を見ないで、は、恥ずかしい……。


「ハイアディ、このシチューに何を入れました?」

「な、何って、その、いつも優しくしてくれて、ありがとうの気持ち、とか?」

「……ちょっと、ハイアディ。そこに座って正直に話しなさい」

「お、おこ、怒らない?」

「と、言うことは、怒られるようなものを入れて、私に食べさせたんですね」

「ど、毒じゃ無いよ?」

「いきなり毒を盛られる理由が解りません。そして私に毒を飲ませて、なんでハイアディが赤くなってモジモジするんですか? 正直に、詳しく、ちゃんと、説明しなさい」


 説明しました。恥ずかしくてしどろもどろになっちゃったけれど。彼は深く息をふー、と吐いて。


「ハイアディが触手の粘液をいろいろと変化させられる、というのは初めて聞きましたが」

「うん、神経毒とか作るの得意なんだけど、いろいろと成分を調整できるの。キズに塗って止血して回復速度を上げる軟膏みたいなのも作れます」

「それで、栄養薬のような粘液をシチューに入れた、と」

「えと、人の身体に必要そうなのと、不足しがちなもの、とか」

「身体に悪くはないんですね?」

「うん」

「惚れ薬や媚薬といった効果は無いんですね?」

「無い無い無いです、そんなの。効果は疲労回復と栄養補給、あとは、軟骨の回復とか骨が丈夫になる、くらい」

「ハイアディ、次から料理をするときは私と一緒にしましょう。私も凝ったものは作れませんが、簡単なものなら教えられます」

「……いいの?」

「悪気は無いのは解ってますから。だけど人の常識も少し知ってください。ハイアディも私の汗が入ったシチューとか、飲みたく無いでしょう?」

「え? 私は別に気にしないけれど」


 私の言葉に彼は一瞬固まって、次に腕を組み少し考えて、今、私の顔を見て、にやぁ、と変な笑い方した。え? 何?


「では、ハイアディ。一緒に夕食にしましょうか」

「ん? うん」

「私がそのシチューを食べるところを、正面からちゃんと見てて下さいね」

「え?」

「それが作ったものの責任というものです」


 彼は私の目の前でシチューをゆっくりと口に運んでいく。ひう、見てると顔から火が出そうになる。彼は何故かニヤニヤと笑いながらシチューを食べる。千切ったパンをシチューにひたして、見せつけるように口に運んで。はう、恥ずかしい。下半身の触手がうねうねしちゃう。うぅ、また彼がイジメっ子みたいになってるう。か、彼の口にわ、私の粘液……。


「とても美味しいですよ、ハイアディ」


 あぁ、そんな、お代わりまでするなんて……。



設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様

ありがとうございます

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