新おねー様、ウサギ娘
(* ̄∇ ̄)ノ おねー様会話回パート2。ぴょんから誕生、兎娘。
グリーンラビット、魔獣深森の浅部でわりと見かける兎。草の色と同じ緑の毛皮が保護色になる、成長すると人の子供くらいになる大兎。
草や果実を好む草食の魔獣だが、気性は荒々しい。鋭い前歯を武器にして、自分より大きな魔獣相手にも怯まない。
魔獣深森深部に住む、グリーンラビットの亜種はその跳躍力で高い木の枝に生る果実を前歯で切り落とす。その跳躍力で飛び掛かり鋭い前歯で首を狙うことから、首狩り兎とも呼ばれる。
その毛皮は防寒具として優れ、肉は独特なクセがあるが、果実を主食としたグリーンラビットの肉は香りが良いと評判は良い。骨を粉にして煎じたものは風邪の予防になると、魔獣素材として安定した人気がある。
しかし、跳躍力が高く逃げられやすい。戦闘力も高く討伐難度はやや高め。見かけの可愛らしさとは裏腹の強敵であるために油断は禁物である。
以上がグリーンラビットの説明だぴょん。そしてあちはそのグリーンラビットから進化した深都の住人。
深都の中でも武闘派から一目置かれる『斬撃の支配者』、そして深都のマスコット的妹ポジションを、カッセル、ユッキルの双子と争う、ルナバニーのラッカラックランティとは、あちのことだぴょん。
あちは深都の中では、人にそれほど思うことは少ないぴょん。まぁ、あちを可愛がってご飯くれたお兄さんと、いつかお話したいと想って、今の姿になったぴょんけど。
人には人の柵があり、魔獣には魔獣の柵があるぴょん。そこを越えるのは、世界の律を歪めるようなものだぴょん。
だけど、深都のねー様達の中には、それで人を恨んだり、心を病んだりするのがいるぴょんね。
あちは、楽天的なんて深都では言われるぴょん。でも、あちは困ったときには人のお兄さんに助けてもらったり、深都のねー様達に助けてもらったりしてるぴょん。
だから、何かあってもあちのこと助けてくれる誰かがいるって、そう思ってるぴょん。
そして助けて貰えるなら、あちは愛されるように務めるぴょん。ねー様達が笑ってくれるように。あちのことしょうがないわねって苦笑しながら、あちに優しくしてくれたり、心配して怒ってくれたり。
深都のねー様達を退屈させないように、明るく楽しく騒ぎを起こす、トラブルアトラクターがあちの役割ぴょん。この辺り、アシェのすることに似てるとこあるぴょんね。
でも、なに? あのおっぱいいっぱい男と蜘蛛の子は? 誰も越えられなかった壁をまるで空気みたいに無視するぴょん。その上、あの街の人間はなんだぴょん? 有り得ないぴょん。
これはなんとしても、あちが直に見てくる必要があるぴょん。
人化の魔法は苦手ぴょんが、ここは発想の転換ぴょん。
グリーンラビットの姿なら、怪しまれずにある程度は近づけるぴょん。
「……と、まぁ、グリーンラビットを捕まえる罠とはこんな感じです」
「流石レーン副隊長、お見事です」
ううう、穴に嵌まって動け無いぴょん。なんだぴょん? 深い穴に嵌まって、仰向けに空を見上げて、お尻が嵌まって動けないぴょん。人間ずるいぴょん。リココの実が、こんなとこにあるなんて、おかしいとは思ったぴょん。だから自慢のジャンプ力で、
「少し頭のいいグリーンラビットなら、人の匂いのするところに足をつけないようにします。罠を警戒して、跳躍力でエサだけ奪おうとね。その跳躍力を見越して罠を仕掛けるとグリーンラビット以外の魔獣はかからない。という寸法です」
「レーン副隊長のおかげで生け捕りがこんなに簡単に済むなんて」
なかなかやるぴょんね、人間も。うー、悔しいぴょん。でもリココの実、美味しいぴょん。
「ずいぶんと大きいグリーンラビットが捕まりましたね」
「暴れもせずに前足に挟んだリココの実を夢中になってかじって、よっぽど腹が減ってたんだな」
ふふん、そこであちが食べ終わるのを待ってるぴょん。これを食べ終わったら、あちにナメたことしたことを、後悔させてやるぴょん。あー、リココの実、甘いぴょん。大自然の優しい甘さが身に染みるぴょん。美味しいぴょん。
「このグリーンラビットが穴に落ちるとき、女の子の声で、なんでぴょーん? と、聞こえた気がしたのですが?」
「空耳じゃないですか? でもこれでルミリア様から依頼されたグリーンラビット五匹の生け捕りは終わりですね」
「最後まで気を抜かないで下さい。縛り上げるまで、前歯には気をつけて下さいね」
「でも、グリーンラビットの家畜化なんて、成功するんですかね?」
「博物学者ルミリア様は魔獣の生態を観察するついで、と言ってましたが」
ルミリア様? 聞いたことあるぴょん。確か、おっぱいいっぱい男の母だぴょん。
「なんとかキズをつけずに健康なグリーンラビットを捕獲できたのですから、期待したいですね。上手く行けばグリーンラビットの毛皮が安定して取れて、寒い地方、スピルードル王国北方で重宝されるかもしれません」
「世話をする奴が、手足を咬み千切られたりするんじゃ?」
「他にも逃げ出さないような高い柵とか、難題はいくつもありそうですが、きっとルミリア様には勝算があるのでしょう」
むむむ、ということはぴょん? 大人しく捕まっていれば、そのルミリア様のとこに行けるぴょん? ふっふっふ、これはラッキーぴょん。やはりあちは幸運が味方についてるぴょん。罠に嵌まったおかげで、簡単にローグシーに潜入できそうぴょん。
それなら大人しくしてやるぴょん。人間、お前たちの無礼はゆるしてやるぴょんから、早くルミリア様のとこにつれてくぴょん。あと、もうひとつリココの実をよこすぴょん。
「妙にデカクて、妙に大人しいのが気になりますねえ……」
あちが大人しいことを最大限に感謝するぴょん。あと、喉が乾いたから水も寄越せぴょん。
◇◇◇◇◇
むむむー? あちを入れてグリーンラビットが五匹、深い穴のようなとこに入れられたぴょん。見上げれば空が見えるぴょん。
眼鏡をかけた人間の女がなんか言ってるぴょん。
「グリーンラビットの檻というのも難しいので、広く深く穴を掘り、跳躍で逃げられないようにしてみました」
「穴の底が兎牧場となるわけね。こうして離れて見下ろすと、可愛いものね」
扇子をクルクル回す女と話してるぴょん。あれが確か、おっぱいいっぱい男の母だぴょん。
取り合えず草を食べるぴょん。なんだか変わったいい匂いのする葉っぱだぴょん?
「お茶に含まれる鎮静効果がグリーンラビットに効果があるかもしれませんので、餌に混ぜてみました」
「出涸らしのお茶っ葉を干して乾かして、臭いを嫌がるかと思ったらけっこう食べてるわね」
「果実水を作るのに使った果物の皮なども、食べてますね」
おいこら人間、あちで生ゴミ処分するつもりぴょん? ……でも、意外といけるぴょん? もぐ、
「ゼラさんのお陰で穴掘りが早くすみました。ありがとうございます」
「ン、ゼラに任せて」
あ、蜘蛛の子、隣にいるおっぱいいっぱい男が蜘蛛の子の頭を撫でてるぴょん。なにあの二人? イチャイチャラブラブオーラに包まれてるぴょん。直に見ると凄いぴょん。
「ンー?」
「どうしたゼラ?」
「あのおっきい兎がこっち見てたの」
「む? 一匹だけ一回り大きいのがいる?」
おっとっと、いけないいけない。あちはグリーンラビットだぴょん。ただのグリーンラビットで、怪しくないぴょん。ほら、文句も言わずに草をもりもり食べるぴょん。
「どうだ? ルミリア?」
「あなた、お帰りなさい」
あ、あれはおっぱいいっぱい男の父だぴょん。隣の男は誰だぴょん?
「伯爵婦人、依頼された魔獣深森で採取した果実を持って参りました」
「ありがとう、アプラース王子。ハラードのウィラーイン領兵団はどう?」
「ついていくのがやっとです。己の未熟を思い知りました」
「あらまあ、あなた、アプラース王子にあまり無茶をさせてはいけませんわ」
なんか夫婦でイチャイチャ始めたぴょん。親子でイチャイチャするバカップル親子だぴょん。
「なに、アプラース王子はなかなかできる男でな、予定より奥に入ってみたのだ。ルミリアもいろんな種類の果実が欲しいと言ったであろう」
「そうね、グリーンラビットの餌に何がいいか、食べさせてみて調べたいものね」
隣の眼鏡の女の眼鏡がキラリと光ったぴょん。あいつ、何だか怖いぴょん?
「ふふふ、危険度の高い魔獣の飼育実験。王立魔獣研究院でも未だ成功してませんから、慎重に行かねば」
人間が魔獣を飼い慣らそうだなんて、無茶なことを企むものだぴょん。グリーンラビットでも人間の姿を見れば襲いかかるし、お腹が空いたら見境無くなるぴょん。
「なるべく人はグリーンラビットに姿を見せないようにして、餌を多目に与えましょう。そのための半地下グリーンラビット牧場です」
むむむー?
「さっそくアプラース王子と新魔獣深森調査団の持ってきてくれた、魔獣深森の果実を与えてみましょうか」
あ! リココの実だぴょん! あれはあちのだぴょん! お前らどけぴょん!
「やはりあの大きな個体がボスでしょうか? 他のグリーンラビットを押し退けて、ふむ、リココの実に目の色を変えて飛び付く、と」
◇◇◇◇◇
……潜入はできたぴょん。でも、どうやって脱出するぴょん? グリーンラビットが逃げられないようにしてて、あちだけ逃げるのも怪しいぴょんね。もきゅもきゅ、このラーズベリーもなかなかいけるぴょん。いろんな果物美味しいぴょん。
「餌の与え過ぎでしょうか? 丸々としてきたような」
「毛づやは良くなってきたわね。ツヤツヤしてきて、餌が充分にあると意外と大人しいものね」
あちが大人しくさせてるぴょん。日向ぼっこしながらの食っちゃ寝生活だぴょん。
ゼラもカダールも娘達も、あちらを見てほっこりしてるぴょん。信じられないけど、ちゃんと家族してるぴょん。
「……あまり危険な実験はしてほしく無いのだが」
「あら、アイジス。でも獣の力を使うのは禁じられてはいないのでしょう?」
「魔獣を飼い慣らすこと自体が無茶で危険な行為だ」
「人が直接近づかない。もとの生活に近い環境を用意する。これで意外となんとかなりそうよ」
「いや、妙に大人しいというのが気にかかる。それに、なんだ? おかしな気配がひとつ混ざっている?」
げげげのげ! アイジスねー様? なんでここに来たぴょん? 館でのんびりしてればいいぴょん!
あちはグリーンラビットだぴょーん。ただのおっきな兎だぴょーん。
「……ララティ? お前、そこで何をしている?」
「ぴょ? お前ら果物食べてないで暴れるぴょん! あちが逃げる時間を稼ぐぴょん!」
「おいこら! 待て! 待たんか! ララティ!」
ぴょーんー。お腹が重いぴょーん。
設定考案
K John・Smith様
加瀬優妃様
イラスト、別荘の主カセユキ様
m(_ _)m ありがとうございます。