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怪傑蜘蛛仮面、参上!

( ̄▽ ̄;) まさかの再登場。


「くくくっ、こいつを盗み出すのは骨だったぜぇ」

「キズなどつけとらんだろうな?」


 夜、ひとつの屋敷の中で男が二人、不穏な会話。


「もったいつけずに早く見せろ」

「おっと、先に出すもの出しな」


 太った男がテーブルの上に袋を投げる。痩せた男が袋を取り中を覗く。袋の中は金貨が詰まる。覗いた痩せた男が眉を顰める。


「おいおい、あんた、これの価値が解ってんのかい?」

「なんだ? つり上げるつもりか? 貴様を盗人とつき出してもいい。身の程知らずはどうなるか」

「ち、だがそいつはあんたも同じだろうが。こうしてつるむなら、払いを良くしてくれりゃあ、次の仕事もやる気が出るってもんよ」

「まったく、だが貴様の腕は捨てがたい。先にモノを見せろ。キズを確かめて何もなければ、追加で金貨を払ってやる」

「俺は仕事には自信がある、ほらよ」


 男が背後から出したモノ、テーブルの横に立てて、モノにかかる布をバサリと取り払う。

 そこに立つのは聖獣の立像。二人の子を両手に抱き、精緻にしてまるで生きて動き出すような像。

 黒の聖獣を形にした、下半身は蜘蛛の母娘の至高の彫像。手にする娘に慈愛の微笑みを見せ、黒の聖獣にしがみつく小さな蜘蛛御子はあどけない笑みで母を見上げる。

 見つめているだけで、クスクスと笑う声が幻聴として聞こえてきそうな存在感。


 太った男が歓喜に声を震わせる。


「おお、これが、美の神の恩寵賜る芸術家、赤髭の最新作、黒の聖獣母子像……」

「どうだい? キズなんぞついちゃいねえだろ?」

「う、ううむ、解った。追加の金貨を出そう」


 太った男は震える声で言い、痩せた男は満足気に頷く。


「そこまでだ」


 そのとき、部屋の隅の影からヌルリと現れる第三の人物。闇が立ち上がったような黒尽くめの声が響く。太った男は驚いた声を出す。


「だ、誰だ? お前は?」

「盗んだ物を返すがいい、貴様らの悪事、全てこの目に」

「ぬぬ、怪しい奴め! 蜘蛛の仮面で顔を隠すとは!」

「フッ、蜘蛛の瞳からは逃れられぬ」

「だが、一人でこの屋敷に来るとは命知らずな、者共! 出会え! 出会えー!」

「愚かな……」


 闇から現れた男は、漆黒の衣装に身を包み、蜘蛛の仮面で顔を隠す。腰の細剣を抜き掲げると、ランプの光を浴びて剣が煌めく。

 部屋の中に太った男の護衛が躍り込む。蜘蛛の仮面の男は一瞥し、


「王国の、闇に蠢く悪党よ、伏して見上げよ、正義の剣輝を!」

「ええい! 訳の解らんことを! お前ら、こいつを殺せ!」

「怪傑蜘蛛仮面エース! 王国の悪は俺が裁く!」


◇◇◇◇◇


 ウィラーイン家の屋敷の中、伯爵のハラードと、スピルードル王国の二人の王子の一人、弟のアプラース王子が二人で話をしている。ハラード伯爵の執務室で、側にはアプラース王子の隠密ササメ。

 楽しそうに笑うハラードが言う。


「上手く行ったようではないですか、アプラース王子?」

「あ、あぁ、今回はササメにウィラーイン家の諜報部隊フクロウが手伝ってくれたから、しかし、これはいいのか?」

「何がですかの? 盗まれたものは取り返し、悪党は捕まり、上々ではないかと」

「ハラード伯爵の言う、正体を隠して善行を積み、やがては正体を知られたときに、名を上げる結果に、とか、上手くいくのか?」

「ワシが伯爵家というのを隠して、ハンターをやっていたのは、そんな感じで上手く行きましたが」


 二人の話を聞いていた隠密ササメが、くふふ、と笑う。


「アプラース王子もノリノリだったじゃ無い? いつもは『私』と言ってるのに、『俺』って、くふふ」

「いや、その、どういうわけかあの蜘蛛の仮面を被ると、気が大きくなるというか、負ける気がしなくなるというか、どういうことだ?」

「それは、自己暗示みたいなものかしら? いつもの自分と違う、立場も忘れて思うがままにしたい、そんなアプラース王子の心の中が出ちゃうのかしらね?」

「むむむ、私の精神の奥底にそんなものが?」


 戸惑うアプラース王子を見て、ハラード伯爵と隠密ササメはイタズラを企むような顔をする。


 ローグシーの街に新しい噂が流れる。闇に潜み、影に踊る、悪を退治する正義の怪人。蜘蛛の仮面で正体を隠し、裁かれぬ悪を見つけて断罪する。

 その名も、怪傑蜘蛛仮面エース。


「蜘蛛の糸から逃れられる悪はいない!」


 後に子供達に大人気となる、新たなる英雄がローグシーの街に誕生した。


(* ̄∇ ̄)ノ こうしてアプラース王子が正体を隠して怪傑蜘蛛仮面エースとして活躍することになりました。まる。

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