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幸せの青い……何?

(* ̄∇ ̄)ノ K樣の蜘蛛意吐魔獣童話に感化され、カラァとジプソフィと幸せの青い何か。


 カラァとジプソフィは魔女のおねえさんに教えてもらいました。


アシェ

「青い生き物を見つけると幸せになれるのよ」


カラァ&ジプソフィ

「「青い生き物ー???」」


 カラァとジプソフィが魔女のお姉さんにたずねます。黒い三角帽子を被り短い杖を片手に、下半身黒蛇の全裸の魔女のお姉さんが優しく応えます。


アシェ

「そうよ。青い鳥、青い猫、青い蛇。青い生き物を見つけると幸せになれるの」


カラァ&ジプソフィ

「「へー」」


アシェ

「カラァ、ジプ、幸せの青い生き物を見つけて連れてきてくれないかしら?」


カラァ&ジプソフィ

「「うん、わかったー」」


 カラァとジプソフィはコクンと頷きます。

 二人は魔女のおねえさんの頼みをきいて、幸せの青い生き物を探しに旅立ちました。


カラァ

「ねえジプ、青い生き物って何処にいるのかな?」


ジプソフィ

「ンー、わかんない。いろんなところで探してみよ」


 こうして二人は旅をします。

 雲の国、空の国、地下の国、夢の国といろいろなところを見てまわりました。ですが青い生き物はなかなか見つかりません。


ジプソフィ

「見つからないね、カラァ」


カラァ

「ン、どこにもいないね、ジプ」


 二人がそろそろ諦めようか、と考えていると突然に森の中から悲鳴が聞こえてきました。

 二人は顔を見合わせると悲鳴の聞こえる方へと走って行きました。


「いやあああああ! おやめくださいゲルダ様あああ! ビリビリいやなのおおおおお!!」


「うふふふふふ、前回のフロストヴァンパイア実験は途中で邪魔が入ったからねえ。ヴァンパイアがその身に属性を新たに宿したらどうなるだろうねえ? 進化する? それともアンデッドの肉体は急激な変化に耐えられない? 成功すれば前代未聞、前人未到のエレクトリックヴァンパイアが誕生するよ、うふふふふふ」


「メチャクチャしないでえええ! 我輩、壊れちゃううう!!」


 森の奥、そこでは狂気のマッドサイエンティストが泣き叫ぶヴァンパイアになにかしていました。


カラァ

「ジプ、あれが青い生き物、かな?」


ジプソフィ

「カラァ、きっとそうよ。だってとっても青ざめているもの」


 カラァとジプソフィは見つけた青ざめた吸血鬼に近づきます。吸血鬼は寝台の上に縛られて身動きできず、唯一動かせる頭を左右にブンブンと振っています。


アルカンドラス

「あああああ! そこのお嬢様がた! たすけえてえてええええ!」


ゲルダ=ハオス

「おや? カラァとジプソフィ、こんな森の奥までどうしたのかな?」


 白衣のマッドサイエンティストはカラァとジプソフィに気づくとニコリと微笑みます。研究欲の高まった狂気に満ちた笑顔が、仮面を取り替えるように優しい顔になりました。


ゲルダ=ハオス

「ここからはちょっと子供が見るものじゃないかな?」


アルカンドラス

「子供に見せられないようなこと吾輩にしちゃらめえええええ!」


カラァ

「ねえねえ、ハオスー」


ジプソフィ

「そこの青ざめた生き物、ちょーだい」


ゲルダ=ハオス

「いきなりだね。こんなアンデッド、連れて帰ったらパパとママに怒られるよ」


アルカンドラス

「散々な目にあわせておいてこんなアンデッド呼ばわり! 捨てられた犬猫のような扱い!」


カラァ

「魔女のおねえさんに頼まれたの」


ジプソフィ

「青い生き物を連れて帰らないといけないの」


カラァ&ジプソフィ

「「おねがい、ハオスぅう」」


ゲルダ=ハオス

「う、うぅん。二人におねがいされると困るね」


 もう一押し、とカラァとジプソフィはマッドサイエンティストのお姉さんに詰め寄ります。


カラァ

「それに、弱いものいじめはよくないんだよ」


ジプソフィ

「ほら、涙でぐしゃぐしゃになってる。かわいそう」


アルカンドラス

「お嬢様がた! なんとお優しい!」


 マッドサイエンティストのお姉さんはちょっと悩んで。


ゲルダ=ハオス

「あー、仕方無いね。カラァ、ジプ、この男は希少な実験体だから、壊さないようにね」


アルカンドラス

「え? それゲルダ様が言うセリフ? 何度、吾輩を壊しかけたと?」


 こうしてカラァとジプソフィは青ざめた吸血鬼を受け取り連れ帰ることになりました。寝台の拘束から解かれると、吸血鬼は深々とカラァとジプソフィに頭を下げました。


アルカンドラス

「助かりましたぞお嬢様がた、このアルカンドラス、ご恩は決して忘れませぬ」


カラァ

「青い生き物、ってこれでいいのかな?」


ジプソフィ

「でも、他に青い生き物は見つからなかったし」


 カラァとジプソフィは青ざめた吸血鬼の手を引いて帰ります。助け出されたアルカンドラスはウキウキルンルンです。女の子二人と手を繋ぎ、スキップしながら吸血鬼は喋ります。


アルカンドラス

「あぁ、自由って素晴らしい。生きてるって最高。カラァ様、ジプソフィ様、この吸血王アルカンドラス、心より感謝いたします。心根優しいお嬢さまがたにいったいどのようなお礼を致せばよいでしょうか?」


カラァ

「えっとね、青い生き物を見つけると幸せになれるの」


ジプソフィ

「魔女のおねえさんに教えてもらったの」


 カラァとジプソフィはコテンと首を傾げてアルカンドラスを見つめます。


カラァ&ジプソフィ

「「しあわせにしてくれる?」」


アルカンドラス

「お、おおう。カラァ様とジプソフィ様の無邪気なおねだり。破壊力すさまじいですな。これならハオス様も抗えぬと。して、青い生き物? 幸せ?」


カラァ&ジプソフィ

「「かくかくしかじかー」」


アルカンドラス

「なるほど。幸せの青い生き物、ですか。しかし、幸せとは曖昧で具体的にはどういったことですかな?」


カラァ&ジプソフィ

「「ぐたいてき?」」


 カラァとジプソフィは悩みます。改めて幸せとは何か? という哲学的な難問に挑み、頭の中がこんがらがっていきます。

 うにゅにゅ? と悩む二人にアルカンドラスは、


アルカンドラス

「いやまあ、幸せというものは人それぞれというものでもありますな。わかりました。それではこの天才アルカンドラス、お嬢さまがたの幸せを見出だし手に入れることを、全力でお手伝いさせていただきます」


カラァ&ジプソフィ

「「ほんと?」」


アルカンドラス

「ええ、全身全霊を持って。なにせカラァ様とジプソフィ様はとても大切なお方。今のうちに恩を売っていい関係を築いておけば、また我輩がヒドイ目にあっても『アルカンドラス、いじめちゃダメー』の一言で命拾いできますからな。未来の安全保証のためならば、粉骨砕身の思いで関わらせていただきます」


カラァ&ジプソフィ

「「ありがとう、アルカンドラス」」


アルカンドラス

「いえいえ、礼を言うの我輩の方ですぞ」


 言って吸血鬼は膝をつき、恭しく誓います。


アルカンドラス

「このアルカンドラス、我が名にかけて必ずやお嬢さまがたを幸せにしてみますぞ」


「そうかい」


 アルカンドラスの背後から冷たい声がします。吸血鬼の恩返し、のいい話になりかけたところで吸血鬼は後ろから後頭部を鷲掴みにされました。


カラァ&ジプソフィ

「「あ、クインだ」」


クイン

「おい、アンデッド。今のはなんだ? 幸せにする? プロポーズか? カラァとジプ、どっちにだ? お嬢さまがたって、まさか両方か? 誰に断って調子に乗っている? どちらにしろお前のようなロリコン不死者に大事なカラァとジプを嫁にやるわきゃ無いだろうが」


アルカンドラス

「あ、あの、クイン様? 何か誤解があるようですが?」


 アルカンドラスは硬直しています。背後に立つクインの下半身はグリフォン。その鷲の前足がアルカンドラスの後頭部をがっしと掴んでぶら下げてます。文字通りの鷲掴み。ぶらーん。


クイン

「言動が子供の教育に悪そうだから子供たちには近づくな、と言っておいたよな? 忘れたのか吸血王?」


アルカンドラス

「これは不可抗力ですぞ! それに我輩はロリコンではありませんぞ! 我輩の好みは気の強い美女で、くっ殺せ!のセリフの似合うプライドの高い女をこうメチャクチャに、」


クイン

「そういうのがダメだって言ってるだろうが」


 鷲の前足の爪がギリギリと吸血鬼の頭を締め付けていきます。


アルカンドラス

「あいたたたたたた! クイン様お赦しををを!」


 吸血鬼の顔がまた青ざめていきます。カラァとジプソフィは、クインにおねがいします。


カラァ&ジプソフィ

「「クインー、いじめちゃダメー」」


クイン

「いや、これはいじめてるんじゃなくてお仕置きで、」


カラァ&ジプソフィ

「「ダメなのー」」


クイン

「わかったわかった。いじめない。ただ、コイツとはちょっと話があるから、カラァとジプは先に帰りな。そろそろ目を覚まさないと朝ごはん無くなっちゃうぞ」


カラァ&ジプソフィ

「「え?」」


◇◇◇◇◇


カラァ&ジプソフィ

「「という夢を見たのー」」


 カラァとジプソフィは朝ごはんを食べながら、パパとママに昨夜の不思議な夢の話をします。パバとママは二人の冒険を感心しながら聞いています。


カダール

「夢の中で冒険してきたのか」


ゼラ

「ンー? 青い生き物? 吸血鬼?」


カダール

「吸血鬼を連れて帰ってもらっても、どうしていいか困るところだが、」


カラァ

「パパとママにも見せたかった」


ジプソフィ

「そしたら皆で幸せになれたのにー」


 残念そうなカラァとジプソフィにママは笑顔で言いました。


ゼラ

「ウン、じゃあママと一緒に青い生き物、探しにいこ」


カダール

「ゼラ、青い生き物に心当たりがあるのか?」


ゼラ

「ウン、ブルーベア」


カダール

「あぁ、あれは青いか。ブルーベアは強い魔獣だが、そろそろフォーティスが挑むのもいい頃合いかもしれん」


 同じテーブルで朝ご飯を食べていたフォーティスお兄ちゃんはパンを飲み込むと、


フォーティス

「ブルーベア? 倒せるかなあ?」


カダール

「フォーティスの仕留めた青いクマの新鮮なお肉、カラァとジプソフィは食べたくないか?」


カラァ&ジプソフィ

「「くまのお肉ー♪」」


フォーティス

「うん、僕がんばる!」


 こうして次のお休みは家族でピクニックになりました。


 カラァとジプソフィは気付きました。幸せとは遠い国や夢の中にあるものでは無く、身近な優しい人たちと一緒の時にあるということを。


 おしまい




アルカンドラス

「なるほど、カラァ様とジプソフィ様と仲良くなっておけば、我輩がヒドイ目に会うときには止めてくれると。さすが我輩、夢の中でも天才ではないか」


クイン

「そうか。じゃ、オマエだけ正夢にしとくか」


アルカンドラス

「え?」


クイン

「ハオスねえ様ー、アルカンドラス、ここにいたぞー」


 おしまらない





(* ̄∇ ̄)ノ K樣のまじゅう童話はコチラ


https://ncode.syosetu.com/n7018hr/

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