人物まとめ、深都の住人編、触手のお姉さま
(* ̄∇ ̄)ノ 深都の住人、スキュラのハイアディ
■ハイアンディプス
通称ハイアディ
(命名NOMAR、イラスト加瀬優妃)
波打つ青い髪。髪は暗いところでは淡く光る。
たれ目が印象的。
下半身は24本の青黒い触手を生やすスキュラ。この触手は周囲の色に合わせて変化する。もとは保護色の名残であり、現在はハイアディの感情で色を変えることが多い。照れると赤くなる。
得意な魔法は水系、補助に土系。
ハイアディはこの魔法を活かし深都で地下工事のお手伝いなどしていた。身に付けた特技はDIY。
領主館別館やルミリアとルブセィラ女史の地下秘密研究室の建設など手伝う。また居候しているレーンの家はハイアディがかなり改造している。
深都からは現在の人類が持たない技術を使うことは禁止されているが、人ができそうな範囲は許可されている。
ハイアディはレーン家の地下から地下水脈まで繋がる大洞穴を作り、そこでハイアディとアイジスが食べるエビやクラゲの養殖も行っている。
好物はエビとカニ。生で殻ごとバリンボリン。
■粘液
ハイアディの触手は粘液に覆われ、この粘液を操作するのもハイアディが得意な魔法のひとつ。
治癒力を高める回復薬や解毒薬、痛み止め、栄養薬など粘液の成分を操作して作り出すことができる。
麻痺毒や睡眠薬など毒物を作ることも可能。しかしハイアディの性格から害になるものを作るのは苦手。
調整した粘液を入れたハイアディ特製シチューは人の不足しがちな栄養素を多く含み、色合いは石灰のようだが人を健康元気にする。
■穴蔵生活
落ち込みやすいハイアディは穴蔵で暮らすことが多かった。アイジスとモルアンがハイアディの気晴らし兼役目として深都の地下水道、下水処理などの施設建築の手伝いや補修などさせる。
深都内での仕事とは棄人化防止の為の精神治療の役割もある。
ハイアディは気分が沈むと穴蔵に引きこもる。
■習性
もともとがタコの魔獣のハイアディは狭いところが落ち着く。タコは岩の裂け目などに身を隠す習性がある。これを利用するのが蛸壺漁。
ハイアディが初めてローグシーに来たとき、レーンはその姿を隠して自宅の地下室まで運ぶのに、廃棄されていた大ツボにハイアディを隠した。
この大ツボは、レーンから贈られた初めてのプレゼントとなりハイアディの宝物になる。
この大ツボに身体を押し込み頭だけ出している状態がハイアディは落ち着く。
■裏話
深都のお姉さま会話回にて、『下半身タコ』と言ったのがハイアディ。その後、増えるワカメとか干からびるとカピカピになるとか、別荘で話しているうちにキャラを確立する。
語尾にぴょんをつけて登場したララティと共に、たった一言から誕生した深都のお姉さま。
ハイアディの設定はノマとカセユキさんとK様のトークから誕生している。
カセユキさん、イラストありがとうございます。
裏話としては、蜘蛛の意吐は第二章までは世界観などあやふやファンタジーで進行していた。
予想外に続きを望まれて第三章と続きを書こうにも、異類婚姻譚の王道ラストはやってしまった。
三章からは世界観をしっかりとさせ、カダールとゼラのいる世界を掘り下げて描く方向へと。魔獣深森と深都の住人をちゃんと設定したのは、実は第三章からになる。
深都の設定が現れたことで蜘蛛意吐世界の半人半獣が確立。あやふやだった進化する魔獣と闇の母神が世界観に大きく影響する。
改めて深都の住人の容姿は。
〇上半身は髪の長い乙女
〇下半身は頭の無い魔獣
〇寿命は無く老いることは無い
連載当時は、この蜘蛛意吐が受賞したら書籍化記念として、皆が考える深都のお姉さま企画とか、妄想していた。マップスの宇宙船とかキン肉マンの超人のような。
いやいや、叶わぬ妄想だった。
しかしその後、ハイアディとララティとアダー=ハオスという、カセユキさんとK様がデザインしたキャラクターの外伝が誕生。ノマ以外の人の想像から現れた深都のお姉さまに大満足。
■お姉さまたちの暴走
一度決定するとなぜかお姉さまたちがワチャワチャと喋り出す。本編に絡まずカダール視点でも無いお姉さま会話回は当初は出す予定は無かった。
断片的に出すことでちょっと変わった世界観を想像して楽しむ人がいるかも、とお姉さま会話回が誕生。
世界を裏から監視する集団としては、キャピキャピしてると好評だった。
■人の街で暮らす
ハイアディはララティにそそのかされ、深都を抜け出しローグシーの街壁で干からびてカピカピになってネコにかじられそうになっているところを、守備隊副隊長レーンに助けられる。
以降、レーンの家の居候に。
無自覚にいじめてオーラを放つハイアディ。
性根がちょっと捻れたドSのレーン。
運命の出会いが危険なカップルを誕生させた。
シチューを作る、パンツを履く、という行為が何故かプレイとなってしまう。
■マスクドハイアディ
マジカルゼラにて、レーンと出会わなかったハイアディという設定で登場したマスクドハイアディ。
カップルを見れば攻撃する嫉妬を拗らせた危険人物へと進化した。プロレスラーのような覆面を被りクリスマスやバレンタインにはカップルを襲撃する。まるで都市伝説の怪人のような扱い。またはしっとマスク。どうしてこうなった。
■人の街での暮らし
ハイアディは守備隊副隊長レーンの家で生活。フクロウの隊員フィスノがハイアディに人の習慣など教える。
対外的にはフィスノとハイアディはメイドの姉妹としてレーン家に住み込みで働いている、ということに。
(* ̄∇ ̄)ノ ハイアディの日常、領主館にて。カダール視点でお届けします。
◇◇◇◇◇
「ハイアンディプス、参りました」
領主館の中、丁寧に挨拶するメイド。人化の魔法を使いメイド姿になったハイアディだ。ローグシーの街の住人に多い茶色の髪の頭を下げている。ハイアディも人の礼儀など学び、今ではローグシーの街で一人で買い物に行くこともできるようになった。挨拶もちゃんと出来ている。
ハイアディとレーンは定期的に領主館に報告に来るようにしている。今日はその日。
「よく来てくれた。楽にしてくれ」
と言えば、顔を上げたハイアディのたれ目がキョトンと俺を見る。
「今日はルミリアとハラードは?」
俺が応えようとする前にお茶の用意をしているゼラが言う。
「父上と母上はね、お客様が来てて迎賓館の方に行ってるの。だから今日はゼラとカダールが父上と母上の代わり」
「そうなの。街の怪盗騒動の方かと思った」
そっちも頭の痛い問題だ。
なんでもカラァとジプソフィの作った銀の守り袋が闇のオークションにかけられたとか。それを狙って怪盗が現れ、謎の黒装束集団と怪傑蜘蛛仮面Aの三つ巴の争いが夜のローグシーの街で起きたという。
いや、カラァもジプソフィも蜘蛛の御子と呼ばれて慕われてはいるが、二人の作った守り袋を取り合って夜中に乱闘とか。怪盗ってなんだ。
街の守備隊副隊長のレーンは、いつもはハイアディと共にいる。だが、今はこの騒動の始末で忙しい。
なので今日の定期報告はハイアディとメイドのフィスノの二人だ。
フィスノはウィラーイン諜報部隊フクロウの隊員でハイアディの護衛兼監視が任務。今は別室で隊長のクチバと話している。
「ハイアディ、今日はレーンはいないがいつも通りにしてくれ。この後は姉妹と会うのだろう?」
「あ、はい」
「では、正体を出して楽にしてくれ」
俺が言うとハイアディはコクンと頷く。ハイアディがおもむろにスカートの中に手を入れるのを見て、慌てて椅子から立ち背中を向ける。背中からゼラの声が聞こえる。
「手伝おっか?」
「ううん、大丈夫。一人でパンツも靴下も脱いだり履いたりできるようになったから。あれ? なんか引っ掛って?」
「パンツを脱いでからガーダーベルトじゃない?」
「あ、順番まちがえちゃった。えと、あれ? あれ?」
「ハイアディ、スカート持ち上げて」
背後から聞こえる衣擦れの音。ゼラがハイアディの靴下とパンツを脱がせるのを手伝っているらしい。脱がなければハイアディがスキュラの正体を出したときに破れてしまう。なのでこれはいやらしくは無い。無いのだが、ゼラがハイアディを脱がすというのが。
「カダール、もういいよ」
ゼラに呼ばれて振り返る。そこには先ほどより背が高くなったハイアディがいる。人化の魔法を解きメイドのスカートの中から24本の青黒い触手を伸ばす。髪の色がもとにもどり、青くうねる髪は腰まで長く。
スキュラ、東方では雷馬とも呼ばれる半人半獣。海から遠いローグシーで生まれた俺は見たこと無いが、海の生き物タコに似ているらしい。
深都の住人はそれぞれで羞恥心が違う。クインは裸を見られると真っ赤になって怒ったりするが、アシェは逆に服を着るのは嫌い。むしろ見せつけている節がある。
ララティやロッティは服を着る派だが裸を視られてもあまり気にしない。ルティは酔うと脱ぐのに酔いが覚めると照れたりする。カッセルとユッキルは親しくなれば肌を見せ合うのも当然と言うし。
深都の住人の羞恥心の差とは難しい。その上、彼女たちは下半身が魔獣で、日常では人のようなパンツを履いていないらしい。報告ではハイアディはパンツと靴下と靴に慣れる練習をしているという。
ハイアディはアイジスと同じく裸を見られるのは恥ずかしい派、なのだが、肝心なところを見られなければいいのかいきなりパンツを脱ぎ出したりする。いや、楽にしてくれと言ったのは俺なのだが。
コホンとひとつ咳払いして椅子に座り直す。
「では改めて近況報告を」
ゼラの淹れるお茶を飲みながらハイアディの暮らしぶりを聞く。
定期報告といってもハイアディは現在、諜報部隊フクロウの監視下にある。今のところは深都の住人とはバレてはいないし、これといった問題は無い。緊急であればフクロウの隊員フィスノから連絡が来ることになっている。
ハイアディについては、
『ハイアディは落ち込みやすく、人間の男が苦手だ。人の街の人の家で暮らしていけるのだろうか?』
とアイジスが心配していた。アイジスはハイアディが深都に戻るか領主館別館に住むことを薦めたが、ハイアディ本人がレーンの家に住むことを望んだ。
守備隊副隊長のレーンもまた『ハイアディのことは私に任せて下さい』と、アシェとクインとアイジスに堂々と言った。なかなか肝の座った男だ。
ハイアディは深都の住人の中でも繊細と聞いているので、俺も気をつけている。
「それでね、レーンってば『ハイアディも料理が上手になりましたね』って言ってくれて」
「ハイアディ、頑張ってるんだー」
「うん、包丁使うのも触手の方が器用にできるんだけど、今は手で包丁使って芋とかニンジンの皮とか剥けるの」
「建物作るときもハイアディは触手でトンカチとノコギリ使ってたもんね」
「でも人化の魔法を維持しながら集中して作業するのって難しいの。足が触手に戻りそうで」
いつの間にかゼラとハイアディのお喋りになっていた。
「でもね、レーンは『普通に作るシチューも美味しいですが、一味物足りないですね』って言うの。だからまた、その、私の粘液をね」
頬に手を当て恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうに話すハイアディ。これがララティの言っていた『ハイアディは最近、惚気話ばっかりぴょん』というものか。
それをウンウンと頷きながら聞くゼラ。こういうところでやはり姉妹だと感じる。人の姉妹とは少し違うが仲がいい。ハイアディが人見知りする性格のようで、姉妹以外の人間と話すのは慣れるまで時間がかかる。俺とも緊張せずに話ができるようになるまで長かった。
話を聞いているとハイアディとレーンの暮らしは上手く行っているようだ。事情を知る一部の者の中では、レーンは勇者2号と呼ばれているとか。
「そ、それと、あの」
ハイアディが顔を赤くし、触手も赤くしたまま俺とゼラの顔を交互に見る。そして意を決した感じでゼラに訊ねる。
「ど、どうすれば魔力枯渇になれるの?」
ぐむ、口の中のお茶を噴きそうになり、慌てて堪える。けふ、魔力枯渇になりたい、ということは? つまりはなんだ、ハイアディとレーンの仲はかなり進展しているということか?
「ンー? ハイアディはレーンとむにゃむにゃしたいの?」
「しし、したいというか、その、レーンがしたいのかもって、その、だけどでもその」
真っ赤になってもじもじするハイアディ。ゼラはキョトンとして。
「ゼラはプリンセスオーガンジーを編めば魔力枯渇になるけれど、ハイアディは、」
「あぁ、ちょっと待ってくれ、ゼラ」
ゼラのやり方はハイアディに応用できるか? というよりもこれは他に繊細な問題がある。
「アイジスから聞いたのだが、ゼラのやり方を深都の住人が行うのは難しいらしい」
これまでゼラを見てきた俺だから解ることもある。
ゼラの使う魔法や深都の住人の魔法と人の魔術とは大きな違いがある。
印を切り呪文を唱え術式構築が必要になる人の魔術。
一方、深都の住人の魔法とは指の一振りで発動し、呪文も必要無い。まるで人が手や足を動かすのと同じように魔法を使う。超常の力を当たり前のように。
膨大な魔力を持つ深都の住人は無意識で身体強化の魔法を使っている。これが意識の制御を離れると加減ができなくなる。
これは人の言うところの火事場のバカ力に近いだろうか。もとの力が強大な分、手加減できなくなったときの力は凄まじい。
それはこの身で実感した。なんど骨が折れたことか。
「ゼラは魔力枯渇になることで無意識の身体強化の魔法が使えなくなる。この方法を見つけて俺とむ、むにゃむにゃできるようになった。だがアイジスが言うには深都の住人にとって、魔力枯渇になることは命の危険を伴うこともあるという。ハイアディがローグシーの街に初めて来たときのように」
「あ、あれは、水辺が見つからなくて、慣れない地上をずっと彷徨っていたからで」
「防衛本能や生存本能を捩じ伏せるほどの強い意志が無ければ、深都の住人が魔力枯渇になるのは難しいらしい。これを可能にしたのがゼラだけだから、深都の住人はゼラに注目しているのだろう?」
「それはそう、なんだけど」
ハイアディの目が潤む。む、泣くほど思い詰めているのか?
「でも、本当に好きならゼラみたいにできるんじゃないかって。だから、できないのは私がレーンを信じて無いからかもって」
「それは結論を急ぎ過ぎだ。俺とゼラはこうして今は共にいるが、ゼラと初めて会ってから結婚するまで17年近くの時がある。再会してからもいろいろとあった」
泣きそうになっているハイアディの手をゼラが握る。
「あのね、ゼラは魔力枯渇になる方法を見つけるまで、カダールに痛い思いさせて、辛くて悲しかったの。ハイアディもレーンにケガさせたくないでしょ?」
「うん……、でも突き飛ばして頭にタンコブさせちゃって」
タンコブぐらいならまだいいだろう。俺は少し考えて、
「本当に好きならできるはず、から、できないから本当は好きじゃない、に繋げるのは短絡過ぎるだろう。相手のことを考えたなら捨て身の自暴自棄になれ、というのはおかしくないか? 状況が許さず捨て身にならざるを得ない、というときなら仕方無いが」
「ムー、カダールはもう捨て身しちゃダメ」
「あー、ゼラ? だから状況が許さないとか、他に方法も無く時間も無いとか、そういうときの最後の手段だから。ハイアディはそうじゃないだろう? アイジスも問題を起こさなければとローグシーに住むことを許可したのだし。だから何か方法を探す時間はある。慌てることは無い」
「そう、なのかな?」
「具体的な方法や手段よりも、深都の住人の魔法とは気持ちの問題が大きいのだろう? ならばハイアディはレーンと積み重ねる時間が重要なのではないか? と、俺は思うのだが」
「時間の問題、なの? それで魔力枯渇になるのは怖くなくなるの?」
「魔力枯渇が怖いというのは俺には分からない感覚だが、ゼラはどうなんだ?」
「ンー?」
ゼラが唇に指をあて思い出しながら、
「ゼラが初めて魔力枯渇になったのは、ケガした人をいっぱい治したときで、」
メイモントのアンデッド戦か。ゾンビとスケルトンを蹴散らしたあと、ゼラの初めての出張治療のとき。
「カダールに褒めて欲しくて、気がついたら魔力枯渇になってたから。力が出ないなー、とは感じてたけど。怖いとか不安とかより前に、カダールがゼラを押し倒してくれて、」
押し倒し、い、いや、間違っては無いんだが。ゼラが思い出しニンマリしながら話す。
「むふん、あのとき初めてカダールと深く繋がって、」
「あ、む、ま、まあ、あのときはエクアドの部隊と父上の領兵団が俺とゼラを守っていたから、不安になることなど何も無かった訳で」
「ハイアディ、好きな人とむにゃむにゃするのはとっても気持ちいいよ」
ゼラがニッコリ笑顔で言う。こういうのがハイアディが聞きたい話かもしれないが。ハイアディを見れば両手で赤くなった顔を隠すようにしながらも、目は俺とゼラを交互に見ている。
「……ゼラは怖いもの知らず?」
「ン? そんなこと無いけど。ゼラが動けないときにカダールが大ケガしたりとか、考えると怖いもの」
ゼラが優しく微笑む。その顔は大人びて見えて、
「ゼラがおもいっきり抱きしめたら、またカダールの骨が折れちゃうって心配だったけど。ちゃんと魔力枯渇になると大丈夫って解ってからは、何度もしているうちにどのくらい魔力が減ったら大丈夫かも解ってきて、そうなると安心できるよ」
「そ、そうね、二人は何度もしてるのよね」
「ウン、もうゼラの身体にカダールがキスして無いところは無いもの」
「ひゅあ」
ハイアディが息を吸いながら変な声を出す。一応、訂正しておくか?
「それを言うならお互い様で、俺の身体もゼラがキスしてないところは無いだろう?」
俺はゼラが喜ぶことはなんでもしてやりたい。ゼラもそう思っているようで、その、まあ、愛し合うというのはそういうことだろう。夫婦であればそんなにおかしなことでも無い。
だが、ハイアディには刺激が強すぎたのか? 突然後ろにパタリコと倒れ、赤くなった触手がウネウネとハイアディの上半身を隠すように取り囲む。
「か、かか身体じゅう? そそんなところまで? キス? しちゃうのされちゃうの? そんなの、ダメ、私、破裂しちゃうううう」
いったい何を想像している? ハイアディは蠢く触手の群れの中に隠れるようにしてモジモジウネウネゴロゴロとする。落ち着くまで待つか。
「ゼラ、お茶のお代わりを頼む」
「しゅぴっ」
ハイアディは恥ずかしがりだが、どうやらムッツリスケベでもあるらしい。妖しく蠢く触手の塊を見ながらお茶のお代わりを飲み終わる頃、ようやく復活したハイアディが顔を上げる。
「はあ、はあ、はあ……、ゼラとカダールって、スゴイのね……」
何がどうスゴイというのか。レーンという男もかなりの男だと思うが。
ハイアディがもがいている間、考えていたゼラはハイアディに言う。
「えっとね。ゼラがプリンセスオゥガンジーを編むときは、何があってもカダールを守れる服になるようにって気持ちを込めて編むの。そうしたらいつの間にか魔力枯渇になるの。ハイアディもそういうの無い?」
「私の場合は、作れるのって傷薬とか? 栄養薬?」
「それにいっぱい魔力と気持ちを込めてみたら? ハイアディの好きな人がどんなケガをしても治せるような」
「うーん、レーンがケガしても大丈夫なように……」
ハイアディが真剣に考えながら呟く。
「手足を失っても復活させる部位欠損修復再生、出血が多くても回復する増血効果に、麻痺、毒、腐敗にも効き目があって、病気にならなくて、害を及ぼす菌は遠ざけて、でもいい菌は元気になって、不老不死になるような霊薬、を作れば魔力枯渇になれる?」
なんだかとんでもないものができそうだ。もしもできてしまったら新たな騒動の種になりそうな。
ハイアディは、ウンと頷き両手で握り拳を作りやる気に満ちた顔で、
「私、スゴイ霊薬作って魔力枯渇になれるようにがんばってみる!」
「ウン! がんばってハイアディ」
ゼラとハイアディ、姉妹仲良く手を取り合い楽しげに微笑む。アイジスは心配していたがハイアディは元気で大丈夫そうだ。
あとでレーンとフィスノには、ハイアディの作る霊薬に気をつけるように伝えねば。
ルブセィラ女史
「ふむ、ということはハイアディがむにゃむにゃできるようになれば、ゼラさんのように夜元気のような薬を作ったりするかもしれませんね」
カダール
「アイジスが言うには、ハイアディは害になるものを作るのは苦手ということだが」
ルブセィラ女史
「かつてのゼラさんのように、無自覚な想いが魔法に現れる場合もあるのでは? さっそくサンプルを採取して」
カダール
「また、自分の身体で試すのか?」