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魔法闘女マジカルゼラ!! ハロウィンデート

(* ̄∇ ̄)ノ またもやK様にバルーンアートを作っていただきました。なのでマジカルゼラ。


「ハッロウィーン♪」


挿絵(By みてみん)


 鼻歌しながらマジカルゼラはクルクルと回る。新調したハロウィンドレスの裾がヒラヒラと踊る。

 それを見て九官鳥のクインは呆れて、


「また、新しい服なのか。それもイベントでしか着れないような派手なドレスって……」

「だってカダールが可愛いって、可愛いって、うふ」

「クリスマスだ初詣だ花火大会だ、とその度に服が増えてないか?」


 浮かれるマジカルゼラは九官鳥のクインを無視して、鏡を見ながらハロウィンドレスに合うネックレスや耳冠をつけては外しして選んでいる。


「大丈夫だ、問題無い」


 言いながら部屋に入ってきたのはカダール。こちらは樹脂製の鎧をつけた、ゲームに出てきそうなファンタジーな姿。こちらもコスプレしている。


「ゼラの衣装の為に新しくクローゼットを買ったからな」

「カダール、お前がゼラを甘やかし過ぎてんじゃないか?」

「だが、ゼラの喜ぶところを見ると幸せじゃないか?」

「……あー、そういうのハイアディに見つからないようにしろよ」


 うんざりするクインの前でゼラとカダールは、どう?似合う? あぁ、まるでお姫様みたいだ、とアマアマラブラブなピンク色の空気を醸し出す。

 それを見て九官鳥のクインは胸焼けしたような声を出す。


「……コスプレデートか。これでまた、夜にはコスプレむにゃむにゃするのか……」


 えー、魔法闘女マジカルゼラは全年齢版の健全な子供向け作品であり、お子様も安心して読めるもので、


「まだ、諦めてなかったのか?」


 か、カダールとゼラのハロウィンあまあまデートは、CMのあと直ぐ。


◇◇◇◇◇


「喰らえッ! カーマインショットッ!」

「ハッ! オーガの体力を甘く見るな! 百頭竜の紋章でリジェネレートしつつ、冷たき闇の爪に小さき毒の王を付与! 行くぞ! ベノムダークネスクロウッ!!」

「やるなっ! だが状態異常を力に変える不屈の闘志を発動! 攻撃力増加! そして赤槍に貫き通す矢の紋章を付与! これで老獪なる使い手とのコンボ発動!!」

「な、なにい!?」

「嘆きの涙を流すがいい! クリムゾンパニッシュ!!」

「ぐあぁーーーー!!」


 大人気トレーディングカードゲーム『怪獣格闘』

 君のデッキが選手のスタイルを変える。新たな戦術がリングを加熱し咆哮を呼ぶ。第3弾発売を記念して、ついに全国大会が開催決定。


「君のデッキが伝説を創る!」


◇◇◇◇◇

「マジカルゼラだぴょん」

 (場面転換のアイキャッチ)

「出番が欲しいぴょん」

◇◇◇◇◇


 ハロウィン。もとはヨーロッパのお祭りだが、いつの間にかクリスマスやバレンタインデーのように日本でも祝われるものになった。

 先祖の霊が現世に帰り、また悪霊を追い払うお祭りでもあり、人が悪霊や悪魔の衣装を着るというもの。

 それがどういうわけか日本では、コスプレして外に出るというものに。


 ゼラとカダールもハロウィンデートを楽しもうと、二人はファンタジー映画に出てきそうな姫と騎士のコスプレをしている。そして屋台のチョコバナナを片手に仮装した人たちを見ながら街を歩く。

 手を繋ぎ歩くゼラは楽しげに、


「なんだか街がまるごと変身したみたい」

「あぁ、皆がいつもと違う服を着てるだけで、まるで異世界になったようだ。あれは、ドラキュラかな? 悪魔かな?」

「ムー、今日くらいは悪魔さんも骸骨さんも現れないといいな」


 こういったセリフを口にしたときは、既にフラグが立っている。カダールとゼラの歩く先には、やたらと派手な怪物の姿の集団がいる。


「あれって……、カダール、他の道を行こ」

「いや、待ってくれゼラ。知り合いがいる」


 カダールの視線の先。赤い槍を持つ一人のイケメンが女性数人に囲まれている。ファンだろうか、サインをしたり握手をしたりとイケメンは丁寧に相手をしている。

 その男がカダールに気づいたようで、周囲の女性たちに一言二言話をしてからカダールの方に歩いてくる。片手を上げて、


「カダール、久しぶりだな」

「エクアドか」


 カダールの親友、エクアドだった。肩にトレードマークの赤い槍を担ぎ、胸元が大きく開いたリングコスチューム。その上にローブを羽織っている。


「ということは、あの怪物集団は怪獣格闘の選手たちか」

「あぁ、ハロウィンの日はあの姿で外を歩いても目立たないからな」


 いや、オーガとかコボルトとか派手なローブを来た骸骨とか、メッチャ目立ってるのだが。


「大丈夫だ。ハロウィンの仮装だから」


 どう見ても仮装には見えないのが何人もいるのだが。そして怪獣格闘ファンに囲まれて賑やかに語らっている。


「ハロウィンの日は怪獣格闘の選手がファンサービスする野外ゲリライベントでもあるとか。それで俺もハイリュウさんに引っ張り出されて」

「なるほど。それでエクアドもリングコスチュームなのか」

「怪獣格闘の人間参加枠の、デビューしたばかりの新人なんだけどな」

「人気はあるだろう。テレビCM見たぞ、カードゲームの奴」

「あれか。怪獣格闘に参加してからはモデル以外の仕事も増えてきてな。次はドラマからオファーが来てる」

「エクアドがドラマに?」

「推理ドラマで、事件に巻き込まれて殺されるプロレスラーという役らしいんだが」

「こうして有名になっていくのは嬉しいが、なにやらエクアドが遠い人になっていくようだ」

「なにがあっても、俺とカダールの友情は変わらんさ」


 怪獣格闘の選手となってからは忙しく、なかなか会えなかった親友の二人は会話に花を咲かせる。

 すると派手なローブを着た骸骨がこちらに近づいて来た。


「む! マジカルゼラ、ここで会ったが百年目。いよいよ怪獣格闘のリングでワシと決着をつける気になったか」

「もー、ゼラはそんなのしないって言ってるのに」

「ぬぐう、ワシから王者のベルトを奪っておいて」

「そんなのいつでも返すって言ってるのに」

「あれは強者の証。闘って勝った者にしか身につける資格は無いんじゃ。だから、いらないからって人にあげたりとか、中古品の店に売ったりとか絶対にするなよ」

「しつこいなー、ストーカーの骸骨さんは」

「だからストーカーでは無いと何度も……、まあいい。ここで会えたのだから話しておきたいことがある」

「なーに?」


 ハイリュウのローブの影から、今度はマジカルゼラシャドウが現れる。


「あの、オリジナル……」

「シャドウ、元気だった? ちゃんとご飯食べてる?」

「あ、うん、おじ様のマンションでおじ様がいつも作ってくれて……」


 もじもじするマジカルゼラシャドウは拳を握り、覚悟を決めた顔で、


「あの! オリジナル! シャドウを許して!」

「え?」

「シャドウは怪獣格闘に出たいの! おじ様の役に立ちたいの!」

「えーと?」

「シャドウ、その言い方じゃマジカルゼラにわからんじゃろうが」


 ハイリュウはマジカルゼラシャドウの紫の髪の頭をポンポンと撫でながら、


「あー、マジカルゼラ。説明するとだな、シャドウが怪獣格闘に出たいということなんじゃ」


 ハイリュウはマジカルゼラに分かりやすく説明する。魔神装具から産まれたマジカルゼラのコピー、マジカルゼラシャドウ。今では自我が芽生え、ハイリュウのマンションで暮らしている。

 打倒マジカルゼラの特訓を繰り返すハイリュウ。そのハイリュウとのスパーリングを繰り返しているうちにシャドウは怪獣格闘のルールを憶えた。そしてシャドウはマジカルゼラのコピーとして誕生し、実力は折り紙付き。今では選手として出場したがっていると。


「今の怪獣格闘では女性選手の層が薄い。ワシがマジカルゼラを怪獣格闘に誘うのはそれが理由でもある。そしたらシャドウが選手になりたいと言い出してな」


 聞いたマジカルゼラはコテンと首を傾げる。


「それ、ゼラが許すとか許さないとかいう話なの?」

「シャドウは髪の色以外はマジカルゼラにそっくりじゃろうが。シャドウが怪獣格闘に出るとマジカルゼラがついに怪獣格闘に参戦、と世間の者は見るかもしれん。それにシャドウがリングに上がれば人気は出るじゃろ。そしたらシャドウとマジカルゼラを間違えたファンが、マジカルゼラのとこに押し掛けるかもしれん」

「それはヤダー」

「なので、オリジナルの許可を得られるかどうか、聞いてからにしようとな」


 意外にもハイリュウは仕事の面ではキッチリしていた。


「やかましいわい。伊達に王者では無いんじゃ」


 ところ構わずマジカルゼラに勝負を挑んでやられてたのに。


「それは書いとる奴が曖昧設定で勢いで書いとるからじゃ」


 ぐむ。ハイリュウの辛辣な言葉は置いといて、皆が見守る中でシャドウはがっしとマジカルゼラの手を握る。


「お願いオリジナル、シャドウはおじ様の役に立ちたいの」

「う、うーん……」


 マジカルゼラは悩む。ただでさえストーカーの骸骨に変な悪魔に覆面スキュラと、カダールとの二人の時間を邪魔するのがいる。これ以上、変な人に押し掛けられたく無い。

 だけど、自分とそっくりな顔で愛する人の役に立ちたい、というシャドウのうるうるとした瞳を見ると、ダメとは言い出し難い。

 困るマジカルゼラを見てカダールが口を出す。


「シャドウに覆面をしてもらってはどうだろうか?」


 ハイリュウがカダールを見る。


「覆面か?」

「あぁ、謎の覆面格闘家となれば正体は秘密、とはできないか?」

「まあ、顔を隠してマスクドアルケニーとすれば、マジカルゼラとは無関係ということにはなるか?」

「それなら勘違いした奴がゼラのとこに来ることも少なくできるだろう」

「じゃが、ワシがマジカルゼラに敗北し王者のベルトを奪われたことは、怪獣格闘好きの者には知られている事。そこで実力のあるシャドウが現れたなら、マスクをしてもマジカルゼラだと思われるのではないか?」

「ベルトをこっそり返しておくとかしてもか?」

「今、返されても困るんじゃ。次の怪獣格闘トレーディングカードのブースターパックは『失われた王者のベルト』編と決まっているんじゃ」

「そういう事情もあるのか」


 聞いていたエクアドが口を挟む。


「それなら、一度だけでいいからマジカルゼラにラウンドガールをしてもらってはどうだろうか? シャドウとマジカルゼラが同時に同じところにいるのを見れば、同一人物では無いと解るだろう」


 またなにかめんどうそうになってるー、とマジカルゼラが眉を下げる。その手をぐっと強く握るシャドウ。


「お願い、オリジナル……」

「ンー、もー、わかった。いいよシャドウ」

「ありがとう!」

「好きな人のためっていうの分かるから。でも相手がストーカーの骸骨さんっていうのは趣味が悪くない?」

「悪く無い! おじ様は優しくてステキだもん! 料理も上手だし、カッコいいもん! 困ったときは助けてくれるもん!」

「カダールの方がステキでカッコいいもん!」


 こうしてシャドウの怪獣格闘デビュー戦が決定した。


挿絵(By みてみん)

「試合会場はこちらでーす」


 この試合は新たな女性怪獣格闘者の誕生に加えて、マジカルゼラがラウンドガールを務めたことで話題になった。そして怪獣格闘のファンの間には、


『いよいよ骸王龍ハイリュウが、マジカルゼラからベルトを奪い返す為のリベンジマッチが近づいてきた』


 と、噂になってしまった。ハイリュウはこっそりほくそ笑む。



 ちなみにカダールとゼラはハロウィンのコスプレデートの夜は、姫と騎士プレイでめっちゃむにゃむにゃした。



バルーンアート、K John・Smith様


m(_ _)m ありがとうございます。

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