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新しい絵筆はもふもふ?

(* ̄∇ ̄)ノ 子供たちのお絵描きからララティが?


 三人の子供たち、カラァ、ジプソフィ、フォーティスが中庭でお絵描きをしている。芸術家赤髭が先生をする絵画の授業。

 青く晴れた日差しの下、メイドが差す日傘の下で草の上に座った子供たちは絵を描くことに集中している。


 モデルになっているのはゼラとフェディエア。中庭のあずまやの中で、二人はルミリアからお茶の淹れ方、貴族の茶会の作法を改めて教わっている。

 ゼラとフェディエアはルミリアが新しくデザインしたドレスを纏い、このドレスを着て動いたときに不都合が無いかをチェックしている。

 スピルードル王国の貴族にとってお茶を自ら淹れるのは、客人を歓迎する、または家臣を労うなどの意味がある。優雅に気品溢れる動作でお茶を淹れるのは貴族にとって必須の行い。かつてはカダールとエクアドも子供の頃にお茶の淹れ方を仕込まれている。


 三人の子供たちは優雅なお茶会をする三人の貴婦人を絵に描いている。たまに先生の赤髭に絵の具の色の作り方、どの色とどの色を混ぜると目的の色になるかを訊ねたりしつつ。


 赤髭と並んで子供たちを見ていたララティは、赤髭の手にするものを覗き込む。


ララティ

「赤髭先生、なんでこの絵はウサギとカエルがレスリングしてるぴょん?」


赤髭

「鳥獣戯画、というらしい。最近手に入れた東方の絵画だ。ふむ、もしかしたら東方のウサギとカエルのウェア系獣人、それを想像して描いたものなのかもしれん」


ララティ

「そーいうのを想像して描いてるぴょ? 獣人というにはちょっと違うよーな」


赤髭

「うむ、万物に意思が宿るというのが東方の哲学という。その意思を想像することでありとあらゆる森羅万象を慮る。意思ある故に我あり、ならば世界にも意思があり、意思ある故に世界あり。ならば世界の意思とは? それを想像し、感じ、形に描き起こしたとき、人のように考えて動く獣や草木を絵に現す。目で見たものを描くでは無い、心で見たものを描く。哲学的な芸術の技法とは人の内面をこそ万人に感じさせることで、人と世界の奥の深さを覗き込むような感動を人に与え、広がる認識と知覚がこの世界の優しさ厳しさと懐の深さを改めて染み入るように感じることが真に心の豊かさへと」


ララティ

「んーまあ、おもしろいもの見ておもしろいと楽しめるのが健全かもぴょ。これは赤髭には参考になるぴょん」


赤髭

「むう、確かにこういった細かい部分を大胆にディフォルメする絵描き方は、子供の落書きのようにも見えて絵描きの描く絵では無い、と言う者が多いか。輪郭の線をここまで強調するのは写実的とは真反対だ」


ララティ

「それで赤髭はルブセィラの絵本に参加できなかったぴょん。絵が可愛くないからって」


赤髭

「ぬぐうううう、あのときは悲しい思いをした」


ララティ

「熱だして寝込むってどんだけショック受けてたぴょん」


赤髭

「あれ以来、絵本向けの可愛い絵にも挑戦してはいるが、いまいち何かがものたりないのだ」


ララティ

「細かく描き込まないと絵描きとして納得できなくなったぴょ? 子供たちは楽しくお絵描きしてるぴょん。ほら」


赤髭

「!そうだ! それなのだ! 絵を描く原点、そこに再び立ち返らねばならないのだ!」


 絵画創作談義に熱くなる赤髭。ララティは絵を描く子供たちに目を向ける。集中してママと母さんのドレス姿を綺麗に描こうとしている。

 ララティは絵を描く子供達に近づきそっと声をかける。


「おまいら、お絵描き好きぴょん?」


「「すきー」」


「ふんむ、」


 ララティはひとつ頷き、何事か閃いた。


◇◇◇◇◇


ララティ

「というわけでみんなに集まってもらったぴょ」


カッセル

「なにが、というわけなのか」


ユッキル

「さっぱりわからないが?」


ロッティ

「なんじゃ? 絵のモデルか? ワシに任せるのじゃ!」


ララティ

「絵のモデルはあの子たち次第ぴょん。んで、あの子たちが持ってる羽ペンのことは知ってるぴょ?」


ロッティ

「あー、クインが抜け落ちた羽で作ってみたヤツじゃな?」


カッセル

「子供たちが大事にしてるのを見て、クインが影でニマニマしていたな」


ユッキル

「それを見たアシェが自身の蛇体を見ながら、何か真剣に考えていたが」


ララティ

「あちたちは自前の毛並みに自負のあるもふもふ組ぴょ。誰が子供達の一番お気にのクッションか枕かと言い合ったりするぴょん」


カッセル&ユッキル

「「もふもふと言えばこの尻尾だ」」


ロッティ

「ワシのシマシマふっくら尻尾も負けておらんのじゃ」


ララティ

「子供たちがお昼寝するのにお気に入りは、クインの背中とかあちのお腹の毛皮ぴょん」


カッセル

「いや、ララティのお腹は毛並みというより、ぷにっとしてるとこでは?」


ララティ

「もう太って無いぴょん!」


ロッティ

「ぷにっと、と言うならカッセルとユッキルも危ないのじゃ?」


ユッキル

「……ここはお菓子が美味しいし、聖獣警護隊にもセッシャにお菓子を食べさせようとするのが多いから、油断すると危うい」


カッセル

「だが武術指南役となり身体を動かす機会も増えた」


カッセル&ユッキル

「「そしてアプラースのブラッシングで一層ふわふわになったこの尻尾は、子供たちの枕として人気がある」」


ララティ

「そんな自慢の毛を有効活用しつつ、誰が一番子供達に人気があるか。ここはひとつあちたちの毛で絵筆を作り、子供たちに使い比べてもらうぴょん」


カッセル&ユッキル&ロッティ

「「絵筆?」」


 こうして深都の住人の中で、己の毛並みに自負のあるもふもふ組はその体毛で絵筆を作ることになった。

 聖獣警護隊の研究班が協力し、何よりルブセィラ女史とルミリア夫人が乗り気になった。深都の住人の体毛を素材として魔術補助具が作れないか、と暴走しそうにもなる。エクアドとアプラース別館長がなんとか研究マニアの二人を止めて、三本の絵筆が完成した。


◇◇◇◇◇


カラァ

「こしょこしょ」


フォーティス

「ううん……」


ジプソフィ

「こしょこしょ」


フォーティス

「ふうん、くすぐったいぃ……」


ララティ

「……お昼寝してるフォウを、カラァとジプが絵筆でくすぐっているぴょん」


ロッティ

「なんじゃ? なんだかいかがわしくも見えてしまうのはどういうわけじゃ?」


カラァ&ジプソフィ

「「こっしょこっしょ♪」」


フォーティス

「は、あん、ふぅん。んー、あ……」


カッセル

「これ、大丈夫なのか?」


ユッキル

「いけない遊びを教えたと、アイジスねえ様からおしおきされないか?」


ララティ

「やー、今回、あちたちは無実だぴょん」


ロッティ

「うむう、子供とは遊びを開発する天才なのじゃ」


 カラァとジプソフィはフォーティスを起こさないように、それでいて寝ているフォーティスのくすぐったがる様を楽しみながら、こしょこしょと絵筆でくすぐるのを止めない。

 三本の絵筆は子供たちのお気に入りとなり、その後はちゃんと絵を描くことにも使われた。


◇◇◇◇◇


 一方、深都では、


「なるほど、体毛を絵筆に」

「だけど絵筆ばっかり作ってもそんなに必要無いでしょ?」

「でも、自分の身体の一部があの子たちの身近で大事にされるなんて」

「うぬう、あいつらばっかりあの子たちと遊びおって」

「ならばこの我が美麗なる体毛にて、この世に二つと無きぬいぐるみをば」

「フェルトぐるみは今の人間領域でもあるよな? 短い体毛でもフェルトにすれば」

「身近というならマフラー、セーター、が良いであろうか?」

「日常的に使うなら、タオルとか手拭いはいくつあっても困らないよね、よーし」

「……いいわね、もふもふ組は」

「まったくだ、アタシみたいな爬虫類はどーすりゃいーんだよ?」

「カラァとジプソフィがお年頃になったら、革製のお洒落なバッグとか、使ってくれるかしら?」

「おい、貴様まさか、己の皮を剥ぐつもりか?」

「あとで治癒魔法で治せばいいのよ」

「じゃ、じゃあ、フォーティスくんに革の手袋とか靴とかプレゼントしたら、つ、使ってくれるかな?」

「手袋! 靴! フォウくんの指で揉まれて、フォウくんに踏まれるの? はぁん、たまんない!」

「……く、これはもう、剥ぐしか……」


 加熱するプレゼント競争、十二姉から贈り物の為に過度な自傷行為をすることは禁止された。しかし、深都の住人が自分の身体の一部で贈り物を作る行為は完全には止められなかった。


 ララティの思い付きがのちに子供のオモチャと日用品を増やし、深都に小さな混乱を巻き起こしたが、今日も領主館は平和であった。



カラァ&ジプソフィ

「「こっしょこっしょ♪」」


ゼラ

「あふ、は、アン、ううん……? ンー? カダール?」


カラァ&ジプソフィ

「「おきちゃった、ママー」」




設定考案

K John・Smith様

加瀬優妃様


m(_ _)m ありがとうございます。


(* ̄∇ ̄)ノ 子供たちはすっかり深都の住人のアイドルに。


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