カラァとジプとルゥ
(* ̄∇ ̄)ノ スピンアウトも100回目。
( ̄▽ ̄;) 100回記念に何か、と考えて、黒蜘蛛の騎士カダール対刀術師ミルとか、大武闘大会とか。他には聖都の蒼い髪の姫登場とか、考えてはみたもののー。しっくりこない。
(* ̄∇ ̄)ノ なので、100回記念は、カダールとゼラの娘、カラァ視点のカラァとジプソフィの主役回です。
小さな妖精さん? なんで泣いてるの? どうしたの? おなか痛いの?
「むに?」
「お、カラァ、起きたか」
「ふわぁ」
あれ? クインがいる。
「クイン、妖精さんは?」
「妖精さん? カラァ、妖精さんの夢でも見たのか?」
「夢?」
くしくしと目をこする。あれ?
「んーむ」
夢だったの? 泣いてる妖精さんがいたような。クインが手を伸ばして、
「どんな夢を見たんだ? カラァ?」
えっとね、あれ? どんな夢だったかな? クインがカラァの髪を整えてくれる。クインはカラァとジプとフォウのお世話係。ちっちゃな頃から側にいる。
オヤツのあと、あったかくて眠くなって、クインの緑の翼の間に転がってお昼寝してたんだっけ。
ジプはどこ? ララティのお腹で寝てる? んー? フォウは? またアシェのとぐろの中?
あ、アシェが片手に真っ赤な石を握っている。その石にコソコソと小声でまた何か言っている。
「アシェ、その赤い宝石、見せてー」
「これはダメ」
アシェが手を振ると赤い宝石はいつの間にか消えている。アシェは裸にエプロンなのに、あの大人のこぶしくらいある宝石、どこに隠したんだろ?
あの赤い宝石に、たまにアシェとクインとアイジスは手に持って何かお話してる。カラァが触りたい見せてって言うと、いつもダメって言うの。あの宝石はこの館の秘密のひとつで、カラァたちにはまだはやいって。
「はわぁ」
ジプがおっきなアクビをする。ジプ、おはよ。フォウがアシェのとぐろの中から出てくる。フォウ、おはよ。
ピョンとクインの背中、緑の翼の間からジャンプして飛び下りる。8本の脚でしゅたっ!っと着地。
ジプとフォウの側に。カラァ達はいつも三人一緒。
「ねぇ、ジプ」
「ねぇ、カラァ」
「あの赤い宝石、ちゃんと見たい」
「あの赤い宝石、触ってみたい」
「「ねー?」」
カラァとジプで一緒に言ってみる。あ、アシェとクインが困った顔をしてる。
フォウがカラァとジプの手を、きゅ、て握る。
「不思議な宝石だよね。あんなに大きい宝石は無いし。ママのおねえさまたちが持ってるのは、どれも同じ大きさで形もおんなじみたいだし」
「「よねー? フォウも見たいよねー?」」
「だけど、僕たちが触るのがダメっていうのは、危険なことがあるかもしれないよね」
フォウの言うことに、ジプも一緒に、そっかー、と声を出す。うん、そういうこともあるのかもしれない。でも、あのきれいな宝石、ちゃんと見てみたい。
「危険ってどんな危険?」
「そこは館の秘密なのかな?」
「また、館の秘密なの?」
「うん、今度、ルブせんせーに聞いてみよう」
ジプとフォウと話していると、館から赤髭せんせーがやって来た。
「おぉ、お昼寝から起きたか子供たち。では、夕食までお絵描きの時間としようか」
「「わーい♪ お絵描き」」
赤髭せんせーはパパのおじさんで、カラァ達の芸術のせんせーなの。赤髭せんせーの持ってきた画用紙とクレヨン。みんなで受け取って。
「ふむ、あそこでまだ寝ているララティをみんなで描いてみようか。起こさないように静かにね」
「「はぁい」」
仰向けになって長い耳をだらんて伸ばすララティを、みんなでスケッチ。アイジスもクインもアシェも、ちゃんとお仕事してるのにララティはいつもこんな感じ。だけどカラァ達と一緒に遊んでくれるのは、ララティとルティとロッティ。たまに一緒にアイジスに怒られる。
ママのおねえさまたちの中で、一番のいもうとで、この三人はなんだかこどもみたいなの。
◇◇◇◇◇
「「触っていいの?」」
ジプと一緒に聞いてみる。アイジスは黒い髪をゆらして、あぁ、って頷く。ママのおねえさまの中で、一番背が高くてキリッとしてるアイジス。
テーブルの上には、あの赤い宝石。
カラァはパパの膝の上に座って、ジプはママに抱っこされて。一緒にテーブルの上の赤い宝石を見てる。
アイジスがこの赤い宝石から手を離すところ、初めて見たかも。
パパがアイジスに言う。
「ルゥ、ルボゥサスラァがカラァとジプソフィと話をしたいと?」
「少しでいい。我らが母が、双子姫の話を聞いてみたいと言っている」
「それで、どうしてアイジスは緊張しているんだ?」
パパの話を聞いて、アイジスが変な顔をする。なんで?
「我らが母の赤の世界は、心が直接繋がる精神世界。天地も無く感覚も狂う。自己を強く保たねば、人ならば発狂することもある異常なところだ。よほど豪胆な者か、または鈍い者か、でなければ我らが母を信じて心を委ねられる者で無ければ、精神に傷を負うこともある。……それが平気なカダールがちょっとおかしいんだが」
今度はパパが変な顔をする。アイジスの話を聞いたばぁばが、得意そうにいつも持ってる扇子をクルッて回す。
「それでこそ、私の息子というもの」
ルブせんせーが眼鏡の位置を指でなおしてる。
「なるほど、確かカダール様が初めて闇の母神の赤の世界に触れたときは、邪神官からゼラさんを取り戻すことで頭がいっぱいのとき、でしたね。赤の世界を気にするどころでは無かった、というのもあるかもしれません」
「ぷっ、」
アイジスが片手で口を隠してる。笑ってる?
「く、くく、あぁ、確かにゼラのことで頭がいっぱいだったな。くくく」
パパが口をへの字に曲げてる。パパはママのこと大好きだもんね。
じぃじが金のおひげを片手で撫でてる。
「ふぅむ。幼いカラァとジプソフィが闇の母神に触れて大丈夫か、アイジスはそれを心配しておるのか?」
「そういうことだ。私はまだ早いのではないか、とも思うのだが」
ジプを抱っこしてるママが言う。
「ンー、大丈夫、じゃない?」
うん、ママが大丈夫って言ったら大丈夫。それにパパとママが側にいたら、大丈夫じゃないことなんて、何も無いから。
アイジスがちょっと疲れた声で言う。
「なんでもかんでも、大丈夫だ、ということにしてしまうのに、私はどうかしてると思う時があるのだが……」
あの不思議な赤い宝石にカラァが触ってもいいみたい。
「ジプ」
「カラァ」
ジプに左手を伸ばす。ジプの伸ばす右手を、きゅ、と握る。カラァとジプはいつも一緒。遊ぶときも、怒られるときも、いつも一緒。
右手を赤い宝石に伸ばす。
ジプは左手を赤い宝石に伸ばす。
「あ! おい、説明がまだ、」
アイジスが何か言ってる。だけど難しい説明はカラァにはワカラナイし。
それにママが大丈夫って言ったから。
カラァの右手とジプの左手が、赤い大きな宝石にさわる。
闇の母神の瞳っていう宝石に。
あ、闇の母神って言うのもこの館の秘密で、館の外で口にしちゃいけない、秘密の言葉なの。
赤い宝石に触ると、赤い宝石から真っ赤な光が溢れてきて、あたりが真っ赤に染まっていって――
◇◇◇◇◇
あたり一面真っ赤なところ。
前も後ろも上も下も右も左も真っ赤。どこまでも広がる赤いところ。
地面が無くてふわふわと浮いているみたいに、いつまでも落っこち続けているみたいに。
カラァの体も無くて、手を繋いでいるジプの体も無い。だけど、繋いでる手の感じはあって。
「ヘンなところ」
「どこまでも赤いね、カラァ」
「果てが見えないね、ジプ」
「ねえ、カラァ? 目が無いのにジプはどこでこの赤色を見てるの?」
「ねえ、ジプ? 耳が無いのにこの声はどこで聞いているの?」
「「ふしぎー」」
真っ赤なお風呂に潜ったらこんな感じ? なんだかあったかくて、ヘンなところだけど、怖いとは感じなくて。
優しく包まれているみたいな。
〈ようこそ、蜘蛛の御子〉
「「だれー?」」
〈私の名は、ルボゥサスラァ。闇の母神〉
「どこにいるの?」
「真っ赤で何も見えないよ?」
〈私に姿形は無い。この赤い世界が私そのものでもある〉
えっと、闇の母神、ということは?
「ママのおねえさまのママ?」
「ママのママ?」
「「じゃあ、ばぁばだ!」」
「ルミリアばぁばがパパのママでー」
「ママのママが、るぼ? るぼうさあすらあ?」
〈ルゥ、と呼ぶといい〉
「「ルゥばぁば!」」
「ママもママのおねえさまも、いろんな姿をしてるけど」
「ママのママはその姿が無いんだ」
「「それってスゴイ!」」
「なんだかステキ、ね、カラァ」
「なんだかカッコいいね、ジプ」
「あ、ちゃんと挨拶しないと、カラァ」
「あ、そうだね。伯爵家の娘はちゃんと挨拶できないとね、ジプ」
「初めまして、ジプソフィ=ウィラーインです」
「初めまして、カラァ=ウィラーインです」
〈あぁ……、初めまして。私は、母神の瞳を通して、ずっと二人を見守ってきた〉
「そうなの? ルゥばぁば」
「もっと早く会いたかった」
〈流石はあのカダールとゼラの娘、この赤の世界で何も揺らぐところは無いとは〉
「揺らぐ? なんだかフワフワ揺れてるよ?」
「どこまでも落ちてくような、どこまでも登っていくような、ヘンな感じー」
この真っ赤なところがルゥばぁば。今はルゥばぁばの中にいるの? 姿が見えないのに声は頭の中で聞こえるみたいで、へんな感じ。
あの赤い宝石の中にカラァもジプも入っちゃったの?
〈カラァ、ジプソフィ、二人に聞いてみたいことがある〉
「「なにー?」」
〈……何処から聞くべきか、二人はゼラのことを、どう思う?〉
「ママのこと?」
「ママはね、優しいの」
「いつもカラァとジプとフォウのこと、ぎゅってしてくれるの」
「ママの作るチーズは美味しいの」
「ママの魔法はスゴイの。明るくしたり、凍らせたり、どんなケガも治したりできるの」
「手から雷を出したり、ドカンってしたりできるの」
「力持ちで、ジプとカラァを抱っこして屋根までジャンプできるの」
「パパも片手で持ち上げられるの」
「ママはパパのこと大好きなの」
「ママが大丈夫って言ったら、大丈夫なのよ」
カラァとジプが話す度に、赤い世界にママの姿が浮かぶ、黒くて長い髪。褐色の肌。カラァとジプとおんなじ色の赤紫色の瞳。腰から下は大きな黒い蜘蛛で、脚は七本。
手から糸を出して布を織ったり、パパを抱っこして走ったり、一緒にお菓子を作ったり。
いろんなママがあちこちに浮かぶ。カラァとジプのママ。
〈二人はカダールのことを、どう思う?〉
「パパのこと?」
「パパはね、カッコいいの」
「いつもカラァとジプのこと守ってくれるの」
「脚を滑らせて落っこちたときも、パパが受け止めてくれるの」
「パパはね、ママのこと大好きなの」
「パパがママの心を守ってるんだって」
「それでね、パパはママのおっぱいが大好きなの」
「あ、でもね、これは館の秘密なの」
「館には秘密がいっぱいあって、街の人たちには秘密にしなきゃいけないことが、いっぱいなの」
「それを守るのも伯爵家の務めなのよ」
〈……あの男は、自分の娘にまで……〉
赤い世界のあちこちにパパの姿が浮かぶ。カラァと同じ赤い髪のカッコいいパパ。ママとカラァとジプを見るときの、とっても優しい笑顔。
「パパとママがいつも守ってくれるの」
「パパとママが側にいたら、なんにも怖いことは無いのよ」
「ママのおっぱいは大きくて、触ってるとなんだか優しい気持ちになれるの」
「フォウもママのおっぱい好きなの」
「カラァもママみたいにおっぱい大きくなるかなあ?」
「ジプのおっぱいが大きくなったら、フォウにいっぱい触らせてあげるの」
「あ、フォウはね、カラァとジプのおにいちゃん」
「フォウはね、お菓子がいつつしかないときは、僕はひとつでいいっていうの」
「僕はおにいちゃんだからって。フォウは優しいの」
「だからふたつのお菓子を三等分して分けたの」
「ジプとカラァは算数が得意だから」
「人語の読み書きと歴史と武術はフォウが得意なの」
フォウのことを話すと今度はフォウの顔があちこち浮かぶ。カラァとジプのおにいちゃん。かけっこにジャンプでカラァとジプに負けると、ちょっと悔しそうにして。だけどカラァとジプの言うことはなんでも聞いてくれる優しいおにいちゃん。
そうしてカラァとジプはいろんな人たちの話をルゥばぁばに話した。その度に赤い世界にはたくさんの人たちの顔が浮かんでいく。
ルミリアばぁば、ハラードじぃじ、フォウ、エクアド父さん、フェディ母さん。
ルブせんせー、赤髭せんせー、アイシーせんせー。
ママのおねえさま。アイジス、アシェ、クイン、カッセル、ユッキル、ララティ、ルティ、ロッティ、ハイアディ、ファルフィ、パラポ、アダー。
別館の館長のアプ王子とササメ。
館のひとたち。クチバ、アステ、サレン、グラフト、ニース、リム、エモクス料理長。
聖獣警護隊のみんな。ママとカラァとジプを大切にしてくれる教会の人たち。カラァとジプを見ると笑顔で挨拶してくれる街の人たち。
いろんな人たちがいっぱい、いっぱい。
赤い世界がカラァとジプの好きな人たちでいっぱいになる。
〈カラァとジプソフィは、幸せ、なのか?〉
「幸せ?」
「幸せって、うーん、難しい?」
「カラァとジプは、拐われそうになったこともあるよ」
「うん、蜘蛛の御子は重要人物だからって」
「それで、あんまり館の敷地の外に出られないの」
「ママとジプとカラァ以外の、ママのおねえさま達がいるのも、館の秘密なの」
〈それについては、迷惑をかけてすまない〉
「でも、皆が悪い人をやっつけてくれて」
「怪傑蜘蛛仮面も来てくれたのよ」
「カラァもジプも有名人だから」
「ウィラーイン家はいろんなところに注目されてるの」
「だから、みんなでピクニックに行くのもタイヘンなのよ」
「ララティは人化の魔法がへたっぴだから」
「あのときは、ママとカラァとジプが大型馬車に隠れて」
「ママのおねえさまは前の日の夜のうちにコッソリ館を出て」
「クインとルティが夜中に飛んで運んだの」
「人に見られないように魔獣深森の近くでピクニックしたの」
「そこならアシェもクインも正体出しても見つからないだろうって」
「ララティとロッティがはしゃいでた」
「ママが捕まえたヨロイイノシシをみんなで食べたの」
「またピクニックいきたい」
「うん、みんな楽しそう」
ピクニックに行ったときのみんなの顔が浮かんでいく。カラァとジプが走ってみんなが追いかけたりとか。外でおもいっきり走って、木から木にジャンプして。でも、ママには簡単に追いつかれるの。
赤い世界に浮かぶみんなの顔は幸せそう。
「ジプが幸せそうにしてたら、カラァは幸せ」
「カラァが幸せそうにしてたら、ジプは幸せ」
「みんなが楽しそうにしてると、幸せよね」
「うん、独りだと幸せかどうかって、よくワカンナイ」
幸せだと思うことも、何が幸せ? って考え出すとよくワカンナイ。美味しいものを食べると嬉しい。みんなではしゃぐと楽しい。
でもひとりで食べるとツマンナイ。ひとりだけだと、はしゃげない。同じことをひとりでしても、きっと幸せじゃない。違うことをしてても、みんながいると幸せ。だからこれが幸せっていうのはムズカシイ。だけど、
「「みんながいるから幸せよ」」
〈そうか……〉
「ルゥばぁばは幸せ?」
「ここは寂しくない?」
〈……あぁ、ずいぶんと癒された。カラァとジプソフィのことを、少し心配していたが、不要の不安だったのか〉
「「しんぱい?」」
〈なにかと人から注目され、不自由に暮らしているのではないかと。娘達が迷惑をかけているのではないかと〉
「むすめたちって、ママのおねえさま?」
「迷惑? してないとおもう」
ララティ、ルティ、ロッティと一緒に遊んで、たまにアイジスに怒られることはあるけど。
パラポが来て、カラァとジプをギュッてしたら泣き出したりして、ビックリしたことはあるけど。
「おねえさまたち、優しいよ」
「あ、でもアシェとクインはいつも手を出すの」
「もう着替えも独りでできるもん」
「櫛で髪をとかしたりもできるもん」
「エクアド父さんとフェディ母さんは、甘やかし過ぎてるって言うこともあるけど」
「アシェとクインは心配性なの」
「ルブせんせーが、きょういぞん? とか言ってた」
「でも、ハイアディは、おねえさんなのに、レーンにパンツをはかせてもらってるんだって」
「でも、それはぷれいだから、真似しちゃダメだって」
「これも館の秘密なのよ」
「ママもね、たまにパパにお着替えしてもらってるの」
「そのときママは嬉しそうなの」
赤い世界にパパとママが浮かぶ。口をくっつけてチュッて音を立てる。
〈あの男は、いや、これが今を生きる者、か。先の見えぬ不安など、構わずに在りて進む者よ。その心根のままに……〉
「ルゥばぁば、心配なの?」
「大丈夫、心配になることなんて、なにもないよ」
「「だってママが大丈夫って言ったから」」
赤い世界はあたたかくて、ゆらゆらして、なんだか大きな生き物の、ゆっくりとした呼吸と心音が伝わってくるみたい。
〈……まどろみの先に、またその姿を見せて欲しい。カラァ、ジプソフィ。私の、娘の娘……〉
なんだか眠そうなルゥばぁば。
安心できた? ホッとした?
ゆっくりと赤い世界が、そこに映る皆が遠ざかっていく。
ルゥばぁば、またね。
◇◇◇◇◇
気がついたらもとの場所。パパの膝の上。ジプはママに抱っこされたまま。
「無事か?」
驚いた顔のアイジスが慌ててカラァとジプの頭に触る。アイジスの目が色が変わって金色に光る。きれい。
「どうやら、無事のようだ。カラァ、ジプソフィ、行動する前に人の話はちゃんと聞けと」
「でも、アイジス。ルゥばぁばが待ってたから」
「る、ルゥばぁば? いや、なぜ我らが母が待っていたと?」
「あれ? なんでだろ?」
ジプと目を会わせる。あれ? なんだか、そう、夢の中で見た泣いてる妖精さんのことを思い出して。
ジプを抱っこしてるママが言う。
「ウン、大丈夫だったでしょ?」
うん、ママが大丈夫って言ったら大丈夫なの。ジプがママにぎゅ、って抱きつく。カラァもパパにぎゅー。
「それで、闇の母神の世界とはどのような? カラァ、ジプソフィ。闇の母神とはどんなお話を?」
ルブせんせーが眼鏡をキラッてさせて、メモを片手に身を乗り出してくるけど。
いっぱい喋ってなんだか疲れちゃったから。
ルゥばぁばとどんなお話をしたかはまた今度。
「次はフォウも一緒に、ね、ジプ」
「カラァ、パパとママも一緒がいい」
蜘蛛の御子とか、双子姫とか、聖獣の娘とか、伯爵家の令嬢とか、カラァとジプはしなきゃいけないこといっぱいなの。
だけど一番ちゃんとしなきゃいけないことは、パパとママの娘なの。
(* ̄∇ ̄)ノ 本編終わってから一年経つのに、まさかオマケを100回もするとは。
m(_ _)m 蜘蛛意吐を応援して見てくださる方に、改めてお礼を。ありがとうございます。
(* ̄∇ ̄)ノ スピンアウトから発生した外伝もよかったらよろしゅう。