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第弐話 限りなく遠い世界で〜青い飲み物はリンゴ味〜

「…っ」



 激しい光に対し長い間目を瞑っていたような気がする。

 恐る恐る目を開けた時目の前に飛び込んできた景色には素敵な美少女とファンタジーな幼女がいた。

 ……おかしい。少なくても俺が最後に見た光景はこちらに猛スピードで向かってくるトラックだった気がしたんだが…いつトラックが美少女と幼女に変わったんだ?



「…そうか。これはあれだ。夢だ、夢なんだ。あのトラックも今の状況も夢なんだ。こんにちわ、素敵な夢。さようなら、非現実的な現実」



 などと、わけのわからない戯言をほざいてみる。自分でも何を言っているのかわからない。

 


「えっと、こんにちわ。…夢じゃないですよー?」



 夢が返事をした。正確には幼女が、だが。それに驚きつつ、夢だからいいかと納得して所で返事を返すことにした。



「こんにちわ、ファンタジーな幼女。これが夢じゃなかったら何が現実だというんだ?」



 幼女!? と叫んでいる幼女をまるで視界に入ってないかのように今度は素敵な美少女が話しかけてきた。



「…少なくてもこれは夢じゃない。……と思う」



 素敵な美少女はどうやら無口系キャラらしい。俺の好みに直球ストレートど真ん中サヨナラ逆転満塁ホームランだ。



「ますます夢に思えてきた所であなたの名前を教えてくれませんか? 俺は和也、篠原和也」


「…リリカ、アリスはリリって呼ぶ」



 これはナンパなんかじゃない。初対面の人にはまず自己紹介が大切だってポチが言ってた。ちなみにポチは実家で飼っているオウムの名前である。

 それにしてもリリカ、なんていい名前だ、惚れてしまいそうだ。



「リリカ、いい名前だな。俺の名前よりよっぽどいい」


「…そんなこと、ない。和也も…いい名前」



 これはやばい、どれだけやばいかって言うと母に黙って母が大切にしていた豚の貯金箱をハンマーで叩き割って中に入っていたお金を見た目普通の貯金箱に移し返した事がばれたとき並にやばい。なぜそんな事をしたのか解らないがあの時の俺は豚の貯金箱を目に収めた瞬間、破壊していた。…その後のお仕置きは思い出したくもない。もう少しで何かに目覚めるところだった。

 こんなほろ苦い若かりし頃の思い出はどうでもいいとして、もはや俺の視界はリリカでいっぱいいっぱいだった。こんなにも俺の理想にピッタリな人物がいるなんて。…神よ、この奇跡に感謝しよう。…感謝するだけだが。

 ともかくは、この素敵な出会いを神に感謝しつつ、いかにしてリリカを攻略しようかと策を考えていたところで。


 

「あの〜?」



 ファンタジーな幼女が話しかけてきた。



「なんだ、幼女」



 また幼女って!? なんて叫びながら顔を赤くするファンタジーな幼女。どの辺りが幼女かというと、全体的に幼女である。街頭アンケートしたならば100人中94人が幼女と答えるだろう。後の6人はただの変体である。



「なにか用か? 幼女よ」



 とにかく話しかけてきたのは幼女なので聞き出すために声をかける。が、何がショックなのか、地面に座り込み体操座りをしながら小声で「…幼女、私は幼女」と当たり前のことを繰り返し呟いている。

 しかし、何度見てもファンタジーな幼女である。言うまでもないが幼女は幼女だ。だが、その手には幼女の身長の倍はある杖を持ち、その身を包む服はどこぞの魔法少女のようなローブ姿であった。実にファンタジーな幼女である。



「…アリスは幼女じゃ、ない。…少なくても私と、同い年」


「リリカは何歳なんだ?」


「…16歳」



 さりげなく年齢を聞けたことに内心狂喜乱舞しつつ、改めて幼女を見る。名前はアリス、年齢は見た目に反して16歳だそうだ。とても16歳には見えない。



「な、なんですか?」



 全身を見られたことが恥ずかしいのか、体をローブで隠しながら顔を赤くしている。恐らく先ほどの6人がもしもこの幼女を見たならば、今頃あたりは血の海だっただろう。主に鼻血で。

 しかし、まぁ…



「幼女に年齢は関係ないな」


「ガーーーン!!」



 擬音を口にしながら泣き崩れる幼女。そんなことをするとやはり幼女だと認識を強くする。

 しかし、リリカを信じるならばこれは夢じゃないらしい。夢は人の願望が現れるらしい。リリカはともかく幼女が出てくる夢とか…人間として危ない。俺はクラスメイトのD君のようにロリコンではないのだ。俺のタイプはリリカのような凛々しい美少女であって、決してファンタジーな幼女ではない。

 …だが一応確認のためリリカに一度確認を取ってみる事にした。



「…夢じゃないのか?」



 俺の呟きにリリカは頷くことで同意をした。その凛々しい顔でそんな仕草は反則だと思います。









――――――――――――――――













 俺は今、ホテルのスウィートルームのような部屋でお洒落な椅子に座り、これまたお洒落なティーカップで、よく解らない真っ青な色をした飲み物を見つめている。

 お洒落な机の向かい側では、先ほど会った美少女と幼女。名をリリカと幼女―――アリスっていう名らしいが、こいつは幼女で十分だ―――が俺と向かい合う形で同じ飲み物を飲んでいる。

 俺はどうしても飲む気がせず、カップを置いて話を聞くことにした。



「…それで、俺はなにがなんだかよく解らないんだが。…そこの幼女は事態が分かっているみたいだけど」


 

 と言って俺は幼女に視線を向ける。幼女は飲み物にあまり手をつけず、俯いてばかりだ。



「じーーー」


「あぅー…」


「じーーー」


「うー…」


「「じーーー」」


「………あぅー」



 ちなみに2回目のじーーーはリリカである。3回目は一緒だ。

 なかなか言い出さない幼女に対し、リリカは優しく後押しをする。



「…ほら、アリス。事情を、説明しないと。和也も…困ってる」



 リリカに言われて覚悟を決めたのか。…何の覚悟か知らないが。俯いていた顔を上げ、「うげ」……カップに入った青い液体を飲み干し、真っ直ぐに、視線をこちらへと向けて来た。



「実は……、あなたがいるここ・・は、あなたがいた場所ではありません」


「見れば解る」



 即答で返事を返す。俺は少なくてもこんな飲み物なんか見たことない。むしろこんな色をした液体を飲み物と認めない。まるで絵具を溶かしたような、そこが見えないほど青々とした液体。それを平然と。それが当たり前のように、疑問すら思わず飲み干す幼女とリリカ。



 ―――――絶対に認めてたまるかっ



 即答されたことで流れを断ち切られ、少し困惑していた幼女だったが、気を取り直して話し出す。



「……ここは数ある世界のうちの一つ。『ディカルア』です」


「でぃかるあ?」


「発音が微妙に違いますよ。ディカルアは古代語で『理想』という意味を持ちます」


「古代語?」


「…? 古代語を知らないのですか?」


「古代語も何もディカルアっていう言葉も初めて聞いた。だいたい世界って…どういうことだ?」


「……?」

「……まさか!」



 正直に解らない事を言ったらリリカは何を言っているのか解らないといった顔。幼女は声を出して驚愕を露わにしていた。



「そんな…ありえない………。いやいや、そんなはずは………」



 その後、幼女は何かを呟きながら自分の世界へと入ってしまった。



「おーい、幼女〜?」



 席を立ち、何かを考える幼女の目の前まで行き、手を顔の前にかざしてみるが反応は無い。

 対処に困り俺はリリカを見るが。



「………」



 彼女も幼女の変化に対処できていないのか。俺の事を珍しい物を見るように見ていた。……って。



「そこでなぜ俺を見りゅぅ?」



 見られている。という緊張のあまり、見る。で噛んでしまった。それでも目の前の二人は気にしてないらしい。1人は気づいてすらないが。

 俺が一人で恥ずかしがっていると。リリカが話しかけてきた。



「和也は、どこから…来たの?」


「どこって…」



 日本だが? と答えようとした所で、突然幼女が立ち上がった。



「そうですっ!! あなたに聞くのが一番手っ取り早いです!」



 そう言うや否や、俺の前までまるで犬のように飛んでくると次々と言葉を吐き出す。



「さぁ! 教えてください。天界ですか? 魔界ですか? それとも獣界? 異界? まさか龍界ですかっ!?」



 という感じで。

 訳のわからない単語を出されても理解できる訳なく、そんな状態にイライラしてきた俺は、目の前の意味のわからない単語を聞いてくる幼女に対して、でこピンを繰り出した。反省はしていない。



「あうっ!」


「訳のわからない事を聞くなっ」



 痛かったのか。おでこを抑え、床にうずくまる幼女。それを心配そうにカップに入った飲み物を飲みながら見ているリリカ。



「とにかく説明しろ。ここの事や今言った世界のこと。どうして俺がここにいるのか。お前たちはなんなのか。全部まとめて10文字で説明しろ!」


「うぇ! 10文字なんて無理ですよぉ」



 若干涙目になりながらあたふたする幼女。そんな光景を見ながら何かを考えているリリカ。



「さぁ! さぁさぁさぁ!!」


「う、う、ふぇぇ」



 なんとなく雰囲気で、手を妖しく動かしながら幼女へと迫る俺、それを後ずさりながら泣くまでカウントダウンを始めた幼女。……俺は何をやっているんだろう?


 俺はどうやってこの空気を戻そうかと考え、幼女のカウントが残り数秒を切った所で。



「……ディカルアへようこそ?」



 見事に10文字でリリカが説明をしてくれた。…説明になってない気がするが。

 ともかく、リリカの発言で幼女は呆気にとられ、俺は。



「いや。まぁ、確かにその通りなんだろうけど?」



 と、変に納得してしまい、なんだかどうでもよくなってしまったので自分の席に戻り、置いてあったカップの中身を飲みほした。気づいた時にはもう遅く、液体はすでに口内へと侵入を果たしてしまった。液体が俺の舌を蹂躙するかと思ったら。



「あ、うまい」



 予想と見た目に反して、リンゴジュースのような味がし、意外とおいしかった。…しかしやはり見た目に抵抗を感じ、一口飲んでカップを机の上に戻した。





 

「…なんだか疲れた。なんでもいいからとにかく説明してくれ」





 

  後書き


どうも、Kazumaです。親しみを籠めてカズマでもOKです。

1、2話纏めての投稿です。ここまでがプロローグみたいなものです。

ここから主人公『篠原しのはら和也かずや』の物語が始まります。キャラ紹介などはある程度キャラが出揃ったら投稿しようかなって思ってます。

ではでは、


次回!

「続・限りなく遠い世界で〜『理想』の世界〜」

です。お楽しみに!

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