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第壱話 限りなく遠い世界へ〜説明は死亡フラグ〜

 朝、それは一日の始まりを意味する。


 目を覚まし、カーテンを開ける。


 新聞を玄関に取りに行き、片手間にパンを焼く。


 朝食を食べ終え、太陽を目に収めようと窓を開け空を見る。


 空の模様は見事な茜色に染まり、太陽は今にも地平線の向こうへと沈みそうだった。すぐ近くには学校帰りなのか、また明日ねー、と手を振りながら別れをを告げる小学生の集団が見える。


 俺はこの感動を誰かに伝えるべく口を開く。



「なんてきれいな日の出なんだ…」


「もう夕方じゃこのアホンダラーッ!」



 この美しい景色を全身で感受していると、窓の外から声が聞こえた。

 窓の外、つまりは部屋の外、向かいの道路から突然罵声を浴びせてきたのは、近所のツルペタ少女だった。ツルペタとは小学校からの付き合いになる。俗にいう幼馴染とかいう存在だ。 今では同じ学校のクラスメイトで正直言って面倒な学級委員長にクラスアップしている。そんな彼女を一言で表す言葉が―――ツルペタだ。



「ツルペタゆーな」


「俺はそんな事は言ってないぜ。考えはしたが」



 うがー、と空に向かって叫び声を上げるツルペタ。彼女は時々奇行に走る事がある。そんな時は生暖かい目で見守るのが最近のクラスのルールだ。

 しかし、もう夕方か。どうやら寝過ぎたようだ。



「今日学校に来てないから心配して様子を見に来てやったら…、あんたは何をやっているんだーっ!」


「ん? 寝坊だが」



 開き直るなーっ、と再び空に向かって叫ぶツルペタ。確かに今日は金曜日。だがしかし、過ぎたものはしょうがないと思い、開き直ることにした。

 所で彼女はご近所の視線が辛くは無いんだろうか?見てて非常に面白いのだが、いつご近所の視線がこっちに向くか解らないので、仕方なしにツルペタに家に上がる様に声をかけた。



「おい、ツルペタ。俺を心配して来てくれたんだろ? このまま帰らせるのは俺のポリシーに反する。茶の一杯でも用意しよう」



 もちろん出涸らしだが、と心の中で付け足す事は忘れない。

 するとツルペタは。



「え、あ、うん。じゃぁ、お邪魔…します」



 と、俺が家に上がって行けと言った事実が意外だったのか。呆けた声で返事をした。しかし、アパートの階段に向かって一歩を踏み出し、歩き始めたその時、ツルペタの叫び声がご近所に響き渡った。



「って、さりげなくツルペタって言うなぁぁぁあああっ!!!」



 もちろんご近所の目が俺に向かったのは言うまでもない。








――――――――――――――








「じゃ、私は帰るけど…後で先生に電話でも入れときなさいよ? 先生も一応心配してたみたいだから」



 まぁ、先生のことだから忘れているかもしれないけど。と小声で付け足すツルペタ。我がクラスの先生はなんというか…物忘れが激しいのだ。自分の授業を10回に7回は忘れるし、この間はテストの監督をやる際に、肝心のテスト用紙を忘れたこともあった。

 それでも先生の評判は悪くない。むしろ生徒に相談されたりと評判のいい方だ。友人のZ君曰く、先生はお母さんみたいだ。と、豪語していた。ちなみにZ君は生粋のマザコンである。彼のお母さんが心配である。



「分かった。後で連絡でもしておこう」



 なんて返事をしながら俺も外へ出かける準備をする。



「あれ? もしかして送ってくれるの?」


「別に送らなくてもツルペタなら大丈夫だろ」


「なっ!?」



 ツルペタだからな。と付け足すと、ツルペタは顔を真っ赤にした。そんなツルペタをスルーし、ジャケットを羽織る。

 今の季節は秋、半袖で外に出るには少し肌寒い季節だ。かといって長袖を着るほど寒い訳でもない。一番中途半端で俺が最も嫌いな季節だ。

 何か叫んでるツルペタをあしらいながら家を出る。太陽が隠れ、微かに明るい町中をツルペタを伴って歩く。



「でもこんな時間にどこ行くの?」



 今は落ち着いて、静かに横を歩いていたツルペタが当たり前な質問をしてくる。それに対し俺は、別に隠す必要もないので行き先を告げた。



「駅前のラーメン屋だ。流石に腹が減ったんだよ」



 するとツルペタは意外にも、あーあそこの炒飯おいしいよねー。と話に乗ってきた。って、ラーメン屋でラーメンを評価せず炒飯を評価するだとっ!? …こいつの評価を改める必要があるな。もちろん下方修正だ。

 そのまま炒飯について熱く語っていたツルペタをスルーしていたら駅へ行く分かれ道へと着いてしまった。ちなみに左の道に行けばツルペタの家に着く。

 このまま話を続けるとツルペタが着いて来そうな勢いだったため、ツルペタと強制的に別れる事にした。ラーメン屋で炒飯しか頼まん奴と一緒に食べる気はないっ。



「ツルペタ、駅はこっちだからお前とはここでお別れだな」


「あ、じゃぁ私も「じゃあなーツルペタ! また月曜日に、だぜっ」行くよ」



 俺はツルペタの言葉を聞く前に一方的な別れの言葉を告げ、ひたすら走った。人、これを戦略的撤退という。

 ツルペタと別れて最初の曲がり角を曲がったところで、後ろから獣のような叫び声が聞こえた。具体的な内容は割合するがツルペタがご近所に痛い子に認定されたのは間違いない。ちなみに俺は初めて会ったときからこいつは痛い子だと確信していた。



「……あいつのことだ。きっと駅前のラーメン屋に先回りしているはずだ…」



 過去に何度か同じような事をした時、ツルペタはいつも俺の目的地で俺を待っていた。そのため、今回は駅前のラーメン屋を諦め、俺は近所のファミレスに向かうことにした。別にあそこでも餃子は食えるしな。まったく、ラーメン屋で食べるなら餃子と決まっているだろう。

 そんな事を考えながら、俺は日が完全に落ちる前にファミレスへと向かった。







――――――――――――――







「うーん、ここの餃子もなかなか」



 ファミレスで先ほど食べた餃子の評価をしながら俺は日が落ち切り、街灯が照らす真夜中の道路を家へと向かって歩いていた。



「だがしかし、やはり駅前のラーメン屋の餃子の味には負けるな」



 あそこの餃子は天下一品だ。と呟きながら信号が青になるのを待つ。ここの信号は長いことで有名で、朝の通勤する人々には魔の赤信号と恐れられている。是非ともこのネーミングを考えた奴の顔を見てみたい。いくらなんでもセンスがなさすぎだろう。と一言言ってやりたい。

 それでもここが恐れられている理由はよく解る。まず、近くのガードレールが何かぶつかったかの様に拉げている。さらに近くの電柱には、たくさんの花束が供えてある。極めつけは道路に残った黒いしみ。微かに、本当に微かにだが、まだ赤黒いところも残っている。

 

 簡単にいえば、ここは近所でも有名な交通事故多発現場なのである。

 

 通行する車の数がほかの道路に比べて多い事と、ここを歩いて通勤する人が多いためである。いくら注意を呼び掛けてもここで起こる事故が減ることは無かった。まるで何かに吸い寄せられるかの様に交通事故は年毎に数を増やしている。

 一度、世界的にも有名な外国の心霊能力者がTVの企画でここに訪れたことがあったのだが、その時の心霊能力者は何を見たのか。生放送中に意識を失ってしまった。もちろん、放送は中止。代わりの番組が放送された。その一週間後、国に帰国した心霊能力者は交通事故に遭って死亡した。目撃者によると自分から車に飛び出したそうだ。

 それ以来、ここは夜になると人はおろか車すら通らなくなった。事故も減り、警察としたら万々歳だろう。

 ……まぁ、延々と語った訳だが、俺はそういう話は気にしない性質だ。だから今もこうして噂の現場で堂々と信号を待っている訳だが。



「……本当に人はおろか車さえ通らないんだな」



 周りは不気味なほど静かで、それが俺を怖がらせるんじゃなく、逆に冷静にしてくれた。



「……ふぅ」



 完全に日が落ちるといくらコートを着ていても肌寒いものである。そんな事を考えていた矢先だった。



―――――――ブロロロロロロロッ!



 車の走行音があたりに響く。しかしそれは通常の走行音ではなかった。何事かと音のする方へと目をやり、暗闇の向こうからやってきた物の速さに度肝を抜かれた。



「なっ!?」



 声を出す暇もないとはこんな状況の事を指すのだろうか。俺に向かって(・・・・・・)迫りくるトラックを視界に確認したと思ったら、もうすでに回避が間に合わない距離まで迫っていた。


 いったい何キロ出してやがるんだっ!? と、悪態を吐く暇もなく。俺は目の前のトラックのライトをただじっと凝視していた。


 そして、トラックのライトにしては妙に明るい視界の中、俺は自分の最後を覚悟した。しかし、最後の意地で疑問に思った事を口に出す。





「いったいいつ死亡フラグが立った?」





 それが俺の地球での最後のセリフだった。








  後書き


ども、Kazumaです。カズマでもOKです。

本格的なものを投稿するのは初めてです。どうかあたたかく見守ってください。

本作品は長期連載を目指しています。頑張りますので読者の皆様、誤字などがあったらどんどん言ってください。読みづらいなどの要望があれば今後、努力いたします。

ではでは、これからよろしくお願いします。

PS

後書きってこんな感じでいいんですかね?



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