第一夜
「オラオラァ、どけどけーー! このまましゃ遅刻するんじゃあーーー!!」
原付でグングン飛ばす砂夜香。
というか原付で吹かして飛ばすなんてカッコ悪いこと。
砂夜香もカッコ悪いと思っていたらしい……。
まあ、原付じゃあ法定速度30キロだし。
「そこの原付! 止まりなさいっ! っていうか止まれ! 止まらんかヴォケ!!」
砂夜香に対して、口調が荒い警察官。
もちろんパトカーで追いかけている。
警察官とは言い難い、あるまじき口調で言い放つ。
「止まれと言われて止まる奴はいねぇ! ってか遅刻っつってんだろ!!」
砂夜香はパトカーでギリギリの狭い路地に入り、近道していく。
「通れんと思ってんのか。嘗めんな、クソJKが!!」
ほんと、ギリギリ1センチくらいの余裕しかないのに、猛スピードで追いかける。
ドルン、ドルン……ドルン…ドルン…………。
「え! ウソ! ポリ公撒きよったら、ガス欠になったやん」
猛スピードで追いかけてくるパトカーを気にしながらも、砂夜香は辺りをキョロキョロする。
さっきから屋根の上から手招きしている女の子がいる。
「あんたはっ。あん時の天使!」
『天使天使って、大声出さないで。早くこっちこっち』
その天使に誘われ、砂夜香はとりあえず、パトカーとか警察官から逃げ切れたようだ。
「ふいー。サンキュー。ってこないだ愚痴言いまくった天使さんがどうしたと?」
『だから天使天使って言わないで。天使にも名前はあります。ミラ=ィアーリスです。ミラで構いませんよ』