投げ入れられた爆弾
今回も開いていただきありがとうございます!
第1章終了まで後4話。よろしくお願いします!
「ごめんね、また付き合ってもらっちゃって」
「いや、別にいいんだけど本当で僕なんかで良かったの?」
「この前一緒に行ったのが真田くんなんだから真田くんだからいいに決まってるよ!」
「そっか、僕も良かったよ」
「えっ?も、もしかして真田くん私の下着一緒に選びたかったの?」
「あ、いやそうじゃなくて......」
1人でここにくるのが気まずかったからナイスタイミングだったなんてことは口が裂けても言えない。
KINEの送り主は可愛さんで、この前一緒に下着を買いに行った物が気に入ったからもう一セット欲しいと思ったけど、一人で行くのは恥ずかしいからついてきてくれない?というものだった。
女の子であり、学校で1番人気でもある彼女が恥ずかしいと言っているところに僕が一人で行けるわけないのだから、この誘いは七瀬さんに会いたい僕にとっては好都合だった。
利用したみたいでごめん可愛さん。
いつのまにかこうして可愛さんと2人で歩くことに抵抗がなくなってきているなぁとしみじみ思う。最初はこんな可愛い子と一緒に歩くなんてとか思ってたけど
慣れというのは実に怖い。
流星は僕と可愛さんが一緒にいることも多く、お似合いだなんて言うけど全然釣り合ってもいないし、僕はともかく可愛さんは僕のことを全く意識にも相手にもしてないと思う。
かくいう僕も学校のアイドルではなく、ランジェリーショップの店員さんに恋してしまったわけで、
まあともかく何があるか分からないものだ。
だからこそ自然に隣を歩けるのかもしれないけど......
そうこう考えているうちに目的の場所へと着いた。
「ねえ真田くん?この前はおとなし目な色買ったんだけど真田くんは派手めな色の方が、えーと、す、好きなのかな?」
いくら好きじゃないと言っても可愛い女の子にそんなことを言われて照れない僕じゃない。
「あー、いや、うーん、可愛さんが着けたい色を買ったらいいんじゃないかな?」
だから、こんな無難な答えしか僕には出せない。
きっとデキる男なら、
「この青の刺繍ものなんてどうだろう?」
とか、
「この花柄なんて君にお似合いさ」
なんて小洒落たことを言えるのかもしれないけど残念ながら僕には無理だ。
「うーん、その答えは人生の先輩としては20点だなぁ〜」
後ろから待ちわびた声が聞こえる。
「いいですよ。僕にはどうせ人生経験が長くないので」
そう言いながら振り向くと七瀬さんと、もう1人、
きっと隣のブランドの販売さんだと思われる人が立っていた。
「あー!天海さん。いま絶対私たちのことおばさんだってバカにしましたよ〜」
「うわぁ、ひどい!でも高校生から見たら私たちっておばさんじゃないのかな?」
「えー、でも天海さんよりかは私の方が若いですからね〜♪」
腕組みしながらむくれる七瀬さん。
ごめんなさい、可愛いです。
「でも、旦那持ちの七瀬さんより私の方がきっと男ウケはいいと思いますよー?ねえ、少年」
「は、はい」
何か今一瞬にして僕の頭が真っ白になるようなそんな一言を言われた気がするけど......
「えー、真田くん。そんなことないよね〜?」
そんなこと気にも留めてない様子で、腕に軽いボディタッチをする七瀬さん。脳内で処理できず、無事に脳内ショート。
さっきのは聞き間違いなのかな?
何にしろ顔を真っ赤にしてしまう僕。
「どうですか天海さん〜この子、顔真っ赤じゃないですか〜♪お姉さんのこと好きなんだもんねー?」
「はい、大好きです!」
そんなことが言えたら楽なのだろうけど、口にすることなんてできず再び顔を真っ赤に俯くしかない。
「なんか私除け者になってる?」
本日の主役のはずの可愛さんが寂しげな口調でそうつぶやく。
「あっ、可愛ちゃん!来てくれたんだー♪
なになにー♡今日はどうしたのー?」
「あ、この前買ったやつ気に入ったので、もう一枚
買いに来ようかなぁって」
「そうなんだ〜♪気にいると思ったんだよね!
これとか着けてみたらどうかな〜?」
そのまま可愛さんと七瀬さんは試着室へと消えて
言った。
そうなると、僕はこの天海さんという、どちらかと
いうとインドアタイプでこれまた美人な人と2人きりになる。
天海さんはさっきの感じから、受け身な方で七瀬さんが会話を引っ張ってる印象なので、2人が帰ってくるまで会話のない無言な空間が続くと思っていた。
「ねえねえ、君。七瀬さんのことが好きなんだよね?」
それは、無言の空間が続くと思っていた僕にとって、とんでもない爆弾が投げ入れられた瞬間だった。
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