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ごめんの気持ちと学校生活



翌朝はいつもより目覚めの良いスタートとなった。


毎週の月曜日の憂鬱さが嘘のようなほど、今日は自分の中でスッキリしていた。


「学校行く準備しないと」


自分の部屋から出ると、香ばしいトーストの匂いが僕の食欲をそそっているようだった。


「おはよう、お兄ちゃん!今日はトーストだけど大丈夫だったかな?」


「うん、いつもありがと雪。僕もトーストの気分

だったからちょうど良かったよ」


「良かった!冷めないうちに食べよ!」


家にほとんど帰らない両親に代わってこうして雪が

いつもご飯を作ってくれている。


私が好きでやってることだからと雪は言ってくれるけど、任せっきりは申し訳ないと思い、洗濯と掃除は

僕の役割だったりする。


「「いただきます!」」


いつからかは忘れたけど、気づけば2人が揃ってから一緒に食べるというのが我が家の習慣になっていた。


そんなことを考えると雪はいつも平気そうな顔をしているけど、案外寂しい思いをさせているのではと、

ふと思った。


僕たちの朝は目を覚ますことに必死なこともあって、黙々と朝食タイムは過ぎていく。


そろそろお互いの食事も終盤に差し掛かっていたその時、


「なんだか、思ったより元気そうでホッとしたよ」


ポツリとそんな言葉を漏らす雪。


「昨日は本当心配したんだからね!あんな表情の

お兄ちゃん初めて見たし......」


「心配かけてごめん。だけどもう大丈夫だから」


「ほんと?」


安心させるように優しく言ったつもりだったけどそれでも雪の不安は消えてなさそうだった。


「本当に大丈夫だよ。昨日、雪が話を聞いてくれた

おかげだよ!」


僕の笑顔を見て、ようやく雪は安堵の表情を浮かべた。


「そっか!それならいいの。いつでもまた話聞くからね!」



食器を片付け、よしいこっか!と笑顔で続ける雪が

少し眩しく見えたのは気のせいだろうか?


「早くしないと遅刻しちゃうからね」


「あー!置いていくのはなしだからねー!」


僕たちは今日も2人で留守になる家に行ってきますと声をかけ、高校へと向かった。


……


「よっ!加奈、何しけた顔してんだよ」


「加奈ー、昨日昴とデートしたんだろ?うまくいったのか?」


「おーい、加奈?話聞いてる?おーいってば!」


「え?あ、流星に響、おはよう......」


「俺たちの話聞いてたー?」


「え?ごめん、聞いてなかったかも」


「だー!なんだよー昴がいなかったから俺の話は聞いてくれないってか、そうかそういうことなのか、そういうことじゃないと言ってくれー!」


僕が教室に入ると、響がいつもよりボリューム高めで騒いでいた。


あっ......可愛さんに昨日のこと、謝ってなかった......


急いでKINEのアプリを起動すると、可愛さんから

3件、メッセージが届いていた。


昨日、七瀬さんとKINEのやり取りをしたあと、

そのままアプリを閉じて寝てしまった。


「みんな、おはよ」


恐る恐るその輪に声をかけると、いつものアイドル可愛加奈ではなく、死んだ目をした可愛加奈が席に

座っていた。


やばい、相当怒ってる......


「おい、昴!昴からも言ってやってくれよ!加奈のやつ全然人の話聞いてくれねーんだよ」


ごめん、響。それ絶対僕のせいだ。


「あ、可愛さん、昨日は」


「おい、響。2人だけにしてやろうぜ」


「なんだよ、流星。俺は話を聞いてもらってないんだー!」


流星が気を利かせてくれたようで僕と可愛さんの2人だけにしてくれた。


まあ、ここ教室なんだけどね......


「可愛さん、昨日は急に帰ってごめん」


「ほんと......びっくりしたんだから......その後連絡も取れないし」


「ごめん、そのまま昨日は寝ちゃってたんだ」


「なんであの時急に帰ったの?やっぱりわたしが無理やり誘ったから?」


「ちょっと、天海さん、あの別の販売員さんにさ、色々からかわれてそれが嫌になったんだ。可愛さんがせっかく誘ってくれたのに途中で帰っちゃって本当にごめんなさい!」


天海さんに色々言われたことは本当だし、嘘はついてない。その言い訳が少しだけ心苦しくはあるけど。


「じゃあ、私に怒ったとか、嫌いになったとかではないってこと?」


なんで嫌いとかそういうことが出てくるのだろうと疑問には思ったものの、そんなことは断じてないので、


「そんなことあるわけないよ!本当に昨日はごめんね」


「じゃあ、また誘ったら一緒に遊んでくれる?」


「も、もちろんだよ。昨日のお詫びで今度何か奢るからまたどっか行こ!可愛さんさえ良ければだけど」


「うん!約束だよ!忘れちゃダメだからね」


やっといつものアイドルスマイルに戻った可愛さん。色々不安にさせてたのだと思うと申し訳なさでいっぱいになる。


「なんだ?お前ら喧嘩でもしてたのか?」


そろそろいいだろうと察してか、流星が自分の席から戻ってくる。


「喧嘩っていうか......ね......?」


説明に困り、可愛さんに助けを求める僕。


「もう仲直りしたからいいの!」


「なあなあ、加奈。じゃあ俺の話を!」


「ねえ、真田くん。さっきの話だけど最近できた

カフェが......」


「結局俺の話は無視なのかぁ!!!」


チャイムをかき消すほどの響の叫びが学校内へと響きわたる。


「うるせえ、火神!ホームルーム始めれねえじゃねえか!」


いつのまにか現れた担任の熱血教師の大声もそれに加わる。


そのいつもと変わらない光景に僕たちはみんなで笑いあったのだった。

ここまでご覧いただきありがとうございます!

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