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神様の悪戯

本日も開いていただきありがとうございます!

……


家に着いた時にはもう空には月が見えていた。


七瀬さんには旦那さんがいる、すなわち結婚しているという事実を受け止めきれず家まで逃げるようにして帰ってきた僕。


きっと七瀬さんも、一緒に来ていた可愛さんも驚いてしまったに違いない。それでも僕はもうあの場にいることはできなかった。


今は少し冷静さを取り戻してきてはいるものの、初恋と失恋を自分の意思とは別に短い期間で経験してしまっては、僕は心を保てるはずがなかった。


「ねえ、お兄ちゃんどうかした?」


泣き腫らした目といつもと様子の違う僕に違和感を感じたのだろう。雪が心配そうにリビングから覗いてる。


「ただいま、大丈夫、何でもないから」


「嘘!お兄ちゃんのその様子みたら大丈夫じゃないことくらいわかるよ!この家には私しか居ないんだから頼れる時くらい頼ってよ」


いつもならあっさりと終わる兄弟の会話も今回ばかりは雪は引いてくれないらしい。


「好きになった人が人妻だったんだ」


簡単に説明するとそうなのだけど、流石にそれを言う勇気を僕は持ち合わせてなかった。


「初めて好きになった人がね、色々と理由があって、好きになっちゃいけない人だったんだ」


「ほんと情けない話だよ。初めての想いだったし、そこに気づいた時にはもう遅くてさ、気づいたら涙が止まらなかったんだ」


雪は無言で僕の話を聞いてくれている。


黙って聞いてくれているけど、きっと失恋ごときで涙を流すなんて女々しい乙女かと心の内では思われているのだろうか?


「そっか......お兄ちゃん、恋愛感情で人を好きになるなんてわからないーとか言ってたけど、好きな人ができて良かったじゃん。今は辛いかもしれないけどいつかまた今の気持ちが役に立つ時が来ると思うよ?」


弱っている時に優しいことを言われると今度はその優しさが嬉しくて涙が溢れる。


家に帰るために止めた涙は、タイミングを見つけたとばかりに溢れ出てくる。


「いつから、そんなに泣き虫になったのよ」


呆れながらもそっと僕を抱き寄せてくれる雪、昔はあんなに小さかったのに、両親が家に戻らない中、ほんと立派に成長してくれたものだ。


「ありがとう、雪。人に話せて楽になったよ」


「人にじゃなくて雪にでしょ!このお礼は今度何か奢ってもらうからね♪」


「わかったよ。今度の土日にどっか連れて行ってあげるから」


そう言ってリビングから離れ、自分の部屋へと戻る。


僕は今日失恋をした。


好きになった相手は実は人妻で、気持ちを伝えることが許されない相手だった。


失恋といっても僕の七瀬さんへの気持ちはまだ枯れてはいなかった。


現実的に無理だと分かっていても好きの気持ちがその数時間で消えるほど、僕は器用な人間でもない。


けれどもあんな帰り方をしては僕はもうあそこに行くことはできない。


だからこの恋はこの終わり方で良かったのだろう。僕と七瀬さんは住む世界が違った。


ただ、それだけだ......


人に恋をしたことがない僕だけにいつ立ち直れるかは分からないけど、きっといつかはまた忘れて別の誰かと恋に落ちて、そしていつかは結婚する。


誰かに、


「お前の初恋っていつだよ?」


って聞かれた時に、


「いや、実は人妻を好きになっちゃったんだよ」


なんて笑える日が来てくれるはず。


カイン!


KINEが静まった部屋に鳴り響く。


「可愛さんかな?あっ、そうだ!今日のこと謝っとかないと」


そう思い、開いた画面には......


『真田くん、販売員の七瀬真凛です。今まで揶揄ったりしてごめんね、人の気持ち考えて動くの私苦手で、、私が悪いんだから気まずいとかそんなこと気にしなくていいからね!』


神様は乗り越えられる試練しか与えない。


誰から聞いたことがあるその言葉。


もしその言葉が本当だとしたら......


そして、僕が好きになった人が人妻だったというのが神様からの試練だったとしたら......


神様の悪戯としか思えない七瀬さんからのメッセージが送られてきたこのタイミングは、僕へのこの試練を終わらせる気はまだないよと神様から告げられているようにしか僕は思えないのであった......


ここまでご覧いただきありがとうございました!

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