表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

6話 うわさ話

感想などあれば、書き込み下さい。

多分書く意欲になるかと思います。



会場の隅の隅

くぼんでいて背中を預けるのに丁度いい端っこで絶賛雲隠れ中。

気配を消そうと最大限努力している。


退場してよろしいですかとメイドさんに聞いたところ、お時間まではどうか...と言われてしまったので、ここで時間を潰しておこうという算段だ。


人の足音聞き流し...人の雑踏聞き流し...


壁に背を預け、腕を組み、下を向き、物言わぬ彫像と化す。


何も考えず、ただ息をするだけ。

周りの音さえ遮断して瞳を閉じる。


何故かは知らないが宝石電波男に絡まれた上、それで注目されてしまったからには下手に行動は起こせない。


いきなり絡まれて逃げた男なんて第一印象最悪だろう。



全体的な入りで失敗してしまったからには、後で個人的な場面で一人一人友人を増やしていくしかない。


ぼっちにならぬ為、今は雌伏の時。

これ以上問題を起こさぬよう耐えて待つべし。


俺は壁...俺は壁...俺は壁...俺は壁...俺は壁...俺は壁...俺は壁...俺は....




....



...はっ!?


暗い...ここは...ん?


........ああ、俺寝ちゃったか。


見渡せば、片付いてはいるがお食事部屋で間違いない。



まじかー、誰にも見つからないようにと願って彫像化してたけど、片付けの人も見つけてくれなかったのかぁ。


もしくはスルーされた...?

それはそれで傷つくな......


流石にここに居続けるのもダメよな。

部屋に戻るか...道覚えてねぇよ。


どうしよ。


俺方向音痴なんだぞ。



取り敢えず歩み出そうとしたその矢先、ガチャリ、とドアの開く音が暗いホールに響き渡る。




「!?」




突然響き渡った音に当然驚いた俺の体はピシリと硬直して動かなくなった。



どうしよ。


人入ってきちまったぞ。

これ...ばれたら怒られんじゃね?


いやいや、ぜってー怒られんじゃん。

やっべぇ、こりゃやべぇ。



行動を停止した外面とは裏腹に暴れまわる内面。

しかし彼の人物は此方には気付いていないらしく、続いて入ってきたもう一人に話しかけ始めた。




「おい聞いたかぁ...今日の会合での事」


「ああ、勇者様が全員集まったんだよな。

この場所がまさにそうだなんて、なんか感慨深けぇなぁ」




暗くてよく見えないが、鎧っぽいシルエットから察するに見回りの兵士さんのようだ。



ひそひそ声のつもりではあるのだろう。

低く話してはいるものの、だがこの大部屋はやけに声が響く。


辺りの静寂も手伝って、端から端の距離だというのにはっきりと声は聞き取れた。



「ちげぇよ

まぁそれもあるが、その会合での騒ぎの事だ」


「ん?何かあったのか?」




部屋に人がいるなんて考えもしていないんだろうなぁ。

御構い無しに喋るわ喋るわ、此方としてはありがたい事だけれども。


あの二人が去るまでじっとしてよう...



「おいおい知らねぇのかよ!

王様が毒盛られかけたって話だ!」


「えー!?

そんな事あったのかよ!

王様大丈夫なのか!?」



ふむふむ、目からビームに毒か...

なんだか効かなそうなんだが。


これしきの毒が...効くと思うてかぁ!!なんて言って自己治癒しそう。


筋肉がボコォ!って盛り上がったりなんかして。




「ああ、運ばれてる時に勇者様の一人が気づいたらしい」


「へぇ〜、そりゃぁ良かった

流石は勇者様だな」


「だろ?だがただそれだけって話じゃねーんだよなぁこれが」




おお、流石勇者様。

実力の片鱗みたいなのが感じ取れて、なんかかっこいいな。


噂話でこういうの聞くの、なんだかわくわくしちゃうんだよなー。

ぼっちになっちゃうからとか、勇者同士の云々ってのを差し引いても普通にそいつとはお喋りしてみたいな。

仲良くなれたら、ぶらんぶらんの腰巾着として側に置いてくれると尚更嬉しいが。



「毒に気づいた勇者様はなんと、下手人の眼の前で自分からその毒を呷ったんだと」


「ほんとか!?

正気かよ...王様に盛ろうってんだからそりゃやべぇ毒だったんじゃないのか?」



「それが顔色一つ変えなかったらしい

呆気にとられてた犯人はそのまま御用、んでもって皆が気付いた頃にはその勇者様はこの会場から消えていたって話だ」


「はぁー、すげぇもんだなぁ勇者様ってのは」



「全くだ

この話だけでちょっとした伝説になっちまうレベルだぜ」




へぇ、俺が寝てる間にそんな事が。

宝石装備の電波男に絡まれなけりゃ見れたのに...


まじで残念だなこれは。

見てたら速攻ゴマすりすりしに行ったのに。


腰巾着待ったなしだったのに。




「それで、だ

こっからが話の肝なんだがよぉ...」


「なんだ?

まだ話に続きがあるってのか?」




まだ喋るのか兵士さん。

いや、いいんだけども。

俺に気づかない限り幾らでも喋ってくれて良いんだけれども。


あんたらが怒られちゃわないか逆に心配になってくるわ。



「...この事件の後犯人は死んじまって首謀者が誰かは分かっていないって公にはなってるんだが...実は俺、見ちまったかもしんねぇんだよ」


「え...まじかよお前、何を見たってんだよ」



「実は俺な、今日会合前から入っててさ

腹減ったから厨房の知り合いに飯恵んでもらってよ

見つかるのもアレだから物置んトコで食ってたんだ

ほら、あそこ人こねぇだろ?」


「薄暗いし出るって噂だからな...

それからどうしたんだ?」



「ああ...早めに食って仕事に戻ろうとしたら、二人組の足音が近づいてきたんで、やべ!って思ってでっけぇ置物の陰に隠れたんだ

入ってきた二人はボソボソ喋りやがって何言ってるのかはさっぱりだったが、出てった時に後ろ姿をちょいと見てよ...メイドと怪しいフードを被った奴だったよ」


「...まさかおまえ...そいつが?」



「恐らくだ、確証は無ぇ

だが城にいるメイドの顔を全てチェックしている俺から見てもそのメイドは新顔だったし、会合が終わってから一度も見かけていねぇ

それに、もう一つ気がかりがある」


「まだあるのかよ!

正直知りたくないんだが」



「まぁ聞けよ兄弟

そのフード野郎の腰に一瞬短剣が見えたんだが、紋章もチラついてな...俺の見間違いじゃなけりゃ、ありゃグルーム家のもんだ」


「シュバルツ家の子飼いのか?

おいおい、あそこは王家と仲が悪い貴族の筆頭じゃねーか

そんなどんぴしゃな情報持ってくんなよ...」



「おうよ

俺も気付いてから怖くて怖くて仕方なくてよぉ〜

これが事実で目撃者がいる、なんてばれたらぜってー消されちまうもんなぁ」


「てめぇなんでそんな話しやがるんだよ!

俺にも飛び火すんだろが!」



「おいおい、俺ら兄弟だろぉ?

飛び火も分かちあおうぜ、首切られる時は一緒だ!!」


「断る!

お前それが狙いで喋りやがったなぁ!?」



「ハッハッハー!!

そんな大声あげていいのかぁ?

俺が聞いてたのと同じように、そこの陰でシュバルツ家の関係者が...」


「騙されるかボケェ!

お前はすぐそうやって人を巻き込む!

ほら、次行くぞ次!

今日は早めに切り上げる!」



「どうした?

怖かったか?」


「ああこえぇよ!

命の危険より恐ろしいもんなんてねぇよ!」



二人は騒がしく部屋を後にし、足音も遠ざかっていった。

もう戻りはしないだろう。



「ふぅ....」



カタリ...と座った木製の椅子から音が響き、静寂が辺りを覆う。



やっと行ったか...



それにしてもなんかすげぇこと知っちまったけど、どうしよ。


...まぁいっか。

俺にゃ関係ない事だし...いや、目からビーム死んだら俺にも関係あるか。


大有りだな、むしろなんで最初関係ないって思っちゃったんだよ俺の脳みそ。


完全に余波食らうじゃん。



機会を見て他の勇者様とかにほのめかしとこ。

どうにかしてくれんだろ、多分。



それよりも今は早くこっから出て、部屋に戻んないとな...


見回りが来る、なんていう時間に部外者同然の奴が城彷徨いてるなんて色々ヤバいだろうし。



バレずに出れればいいんだが...



もしかするとその勇者は会場で眠りこけていたのかもしれませんね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ