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1話 プロローグ

初めての投稿です。

拙い所ばかりだとは思いますが、よろしくお願いします。



丑三つ時に近づき、深夜と言って差し支えない時間帯。


月明かり以外にはなんの灯りのない真っ暗な夜道に、俺はいた。



俺は水野真也(みずのしんや)、しがない大学生だ。




俺の事を説明するならそう...モブ、という言葉がかっちりと当てはまるだろう。


他に与える印象から見ても、人間不信なわけでなく、かと言って非常に人懐っこいわけでなく。

コミュ障ではないが、ずば抜けて会話能力が高いわけではない。

彼女はいたことが無いが、女友達がいないわけじゃ無い。

友人は広く浅く、顔の人相だけが人よりちょっと悪いかな?

いじめられる事も、いじめる事も無く、 特定のグループから弾かれる事さえ無かった。

しかし今日に至って連絡を取り合う程の親友と言えば、思い当たるのは2人か3人程度のもの。



まぁ、そんな程度の人間だ。



学業平均、運動神経平均以下、特別な思考を持っているわけでもない。


人生は無難に歩んできたつもりで、しかし失敗が無かった完璧な物だと言うとそれは違う。


全て真ん中、またはそれより少し下の結果で生きてきたまさに『どこにでもいる』人間だ。


普通はそうだよな、という例を挙げれば殆どの場合俺は「そうだよな」と同意を返すことが出来、または「そうだったんだよなぁ」と経験談として話すことが出来る。


普通じゃなかった思い出も、若さゆえのと言ってしまえば誰にでもある1つや2つに過ぎない。



ゲームなどに出ようものなら、まず個人の立ち絵は用意されないような量産型ということになるだろう。



だが、俺はそれが悪いとは思っていない。



現代であれば皆そうだろう。

だから『普通』なのだ。

大多数の在り方がそうであるから『普通』たり得るのだ。


しかし大多数である筈の『普通』でいる、という事も楽ばかりでは無い。



何故なら『普通』でいる限り、『異常』である事は、普通と言われる人生の道筋から外れる事は許されないからだ。



普通なら、学業の過程で問題を起こしたりしないだろう。

当たり前だ、普通に過ごしていれば問題など起きるはずが無いのだから。


普通なら、集団の中でまずい立ち位置になったりはしないだろう。

当たり前だ、何処かで変な所があるから弾かれる対象になるのであって、本当に普通ならそんなことは起こり得る筈がない。


普通なら、勉学で落ちこぼれることになったりしないだろう。

当たり前だ、苦手はあれど普通に勉強すれば点が取れないテストなど少数極まりない。


普通なら、浪人や留年などはしないだろう。

当たり前だ、よほどかける理想が高い場合でなければある筈が無いし、あってはならない。


普通なら、社会に出れば働くだろう。

無職が普通であるか?

最早言葉も必要あるまい。



人生の道筋に、その行動の全てにおいて、何もかもに『普通』が『普通なら』がある。

世間様の決めたまさに一般論と言われる普遍の道筋。


その全てを貫き通す事の、何と難しいことか。



だが、俺はそれを常に実行してきた。

『普通』を上手くこなしていると、誇りさえ抱いて歩いてきた。

このままいけば、『普通』の人生を『普通』に終えるだろうという確信を胸に。


それで良いと思える満足感と共に。


唯一他と違うと言える所は、人生において反抗期を迎えなかった事だろう。


家族も『普通』はこうあるべき、と言われる家族間の愛情を持った人達だったからだ。

それが普通と言われるには得難いものであると、早くに気づいた俺には尖るところが見つからなかった。


しかし、そんな人生にも細々とした失敗が無かったわけではない。


先ほども述べたように、完璧というには程遠いものだ。



故に思い出し、恥じる。

この日のように誰もいない町外れの夜道を歩く時は、特に。




「さっみぃ...」




季節は冬。

さらに服装はスーツ。

上に着るもの無し。


寒くて当然である。


スーツで真冬の夜道を歩く理由としては、これが成人式の帰りであり、袴を借りる金が無かったからだ。




「はぁ...」




ため息をつく。

端的に言って、俺は疲れていた。


騒ぐのも酒も嫌いなわけではない。

しかし面倒なものは面倒なのである。

これまで下手に八方美人をしていた手前、誘われれば出ないわけにもいかないということがさらに怠い。



こういう心理的に半強制な集まりはなぜか行きたくなくなる。誘われなければそれはそれで落ち込むだろうに、何故だろうか。

自らの矛盾した思考に、水野真也はどうでも良いと考えを打ち切った。




しかし何故か、そんな疲れた状態で遠回りをして帰ろうと考えたのは他でもない真也自身である。


その理由としては、帰り道の傍ら、向こうの埋立地で何かが光ったような気がしたからだ。




(不自然よなぁ、あんなとこで)




普段から深夜の散歩を日課としている真也には、近場はどこでも散歩道。

あそこは人がいるような場所ではない筈だった。


なんせ道路も通っていないのだ。


さらには光り方が花火のそれとは違う。

広範囲に光ったかと思えば、一筋に収束して真っ直ぐ天に。

そして直ぐに消えたのである。




(シュパン!って感じやったもんな

結構な光量やったのに、なんかだーれも気づいてないし...そこらのリア充達が季節外れの花火ってわけでも無いやろ)




そう、この光の一番のネックは俺にしか見えていないという点だった。

きっと目の端で捉えていただろうと思える人達も、何ら気にした様子なし。

元々目はいい方では無いが、流石にこれが幻視だとすると眼科を受診せねばなるまい。


その確認と興味が遠回りの主な理由だった。


幸い次の日は休日。

正体不明の光の捜索に割く時間は十分にある。



そう考えて歩くこと数十分。

適度なウォーキングで体も温まってきた頃合いだ。


そろそろあの光があったところに着く筈だが...




「んー?」




何もない。


いや、元々何もない埋立地ではあるものの、あの光源らしき物は全く確認できない。


フェンスで広範囲が囲われているおかげで車も来ず、適度な草花の荒れ果て具合で人も来ない。


いつも通りの散歩道、俺がお気に入りとする所以。

深夜特有の、その静寂があった。




「こりゃ眼科か?」




独りごちる。

基本的に病院は好きではないが、人体に異常があるならしかたあるまい。



キョロキョロと辺りを見回すも、それらしい機材は見当たらない。


草花が生い茂っているとはいえ、散歩道にできるほどだ。

あまり背は高くなく、見渡しは良い。



なのに見つからないのであれば、やはり気のせいか幻視だったのだろう。




(まじかぁ...病院かぁ....)




夜空を見上げ、自身のテンションが下がるのを感じる。



少し都心から離れたこの場所は、見える星の量も些か多い。


だが、散歩道にするほど幾たびも往復を繰り返せば、早速もう見知った当たり前の光景でしかない。


落ち切った気分を向上させる効力は、最早無いに等しかった。




踵を返し、来た道を戻ろうとする。


その時だった。




「うぇ!?」




バシュン!という音と共に風が背後から吹き荒れ、強い光が辺り一帯を照らす。


何事かと振り返れば、これでもかと言わんばかりに眩い光が。




(目がぁぁぁあああああ!!!)




すぐさま腕で目をかばう。

でなければ風と光で目がやられてしまう。

それほどの光だった。



さらにドゥ!!と風の強さが増し、一層光源からの光が溢れ、視界が白一色に染まった刹那の後。


急激にそのどちらもなりを潜めた。





(終わった....?

いや待て...まじかよ前になんかおるぞ)





視界を塞いでいても感じ取れる威圧感、または存在感とも言えるそれを真也は全身で感じていた。


何か圧倒的な、絶対的な何かがいる。

それも目の前に。



見たくないという思いとは裏腹に、腕は降りてゆき、瞼は開く。


やがて視界にそれを収めた瞬間、俺は悟った。

神々しく輝くこいつには、俺が過ごしてきたこの地の理は通じないのだと。


こいつが少しでも動けば、俺は死ぬのだと。




『勇者よ、我が世界へ』




薄れゆく意識の中で、俺は「脳外科行き確定...」という思考を残し、その場に崩れ落ちた。


短い...んですかね?

プロローグなのでご容赦下さい。

出来れば次からも読んでいただけると有難いです。

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