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貴族の娘、レウナの手紙(宛先不明、匿名者が北部山中にて拾得)
大昔のお話です。
鮮明には思い出せませんが、確かにそこに見えた記憶があるのです。
海から頭を持ち上げて、海岸に向かって大きく口を開けていました。
私はいま、あの港町に帰れずにいます。
大陸の南、私の海。
お祖父ちゃんが私の8歳の誕生日に贈ってくれた、
静かな浜辺。
物悲しいことです。あなたも同じでしょうか。
私たちが分断されて、大分経ちます。
お元気にお過ごしでしょうか。お怪我はありませんか。
もしこれが届いたのであれば、どうかお返事を下さい。
もう、10年も待っているのですから。